「火星の二人」を見る
竹生企画第三弾「火星の二人」
作・演出 倉持裕
出演 竹中直人/生瀬勝久/上白石萌音
池岡亮介/前野朋哉/高橋ひとみ
観劇日 2018年4月14日(土曜日)午後1時開演
劇場 シアタークリエ
上演時間 2時間
料金 9000円
ロビーではパンフレット等が販売されていた、と思う。
ネタバレありの感想は以下に。
舞台上のセットは、ちょっと変わった間取りの家だ。
変わったというか、リビングとキッチンと書斎とでフロアの高さが違っている。一軒家だ。
途中、その一軒家の外、庭のシーンも出てきて、家の中と外のセットが舞台上に現れる。
大学教授の男とその妻、息子、息子の彼女(でも別れかけているらしい)のところに、ライターらしき男が訪ねてきて、男が遭った事故についての話を聞こうとしている。
大学教授の男は、1年前に遊園地でジェットコースターから投げ出され、九死に一生を得たという体験をしているようだ。
それ以来、無気力な状態が続いており、家族は心配し、息子も一緒になってちょっと変わってしまったらしい。その変わってしまった息子を彼女は心配している。男の妻も、家族のことを心配している。
フリーライターに「語りたくない」と言い張る男や、その男を「話した方がいい」と説得する家族の言葉の端々からそういった状況が明らかにされた後、生瀬勝久演じるライターらしき人物が、実は、「同じ事故でもう一人いた九死に一生を得た男」であったことが明かされる。
導入として、状況説明として、なかなか上手い。
でも、その上手さのせいなのか、不穏な緊張感があるのかないのか分からない感じからなのか、なぜだか「この先どうなるんだろう」というのめり込む感じがこちらに生まれてこない。
クリエの舞台が若干遠い感じのせいなのか、「対岸の出来事」という感じが強くしてしまう。
訪ねてきた男は、「あの事故で二人が生き残った意味がある筈だ」と言い、大学教授の男は、「「何の宗教ですか」と言う。
生き残ったことにどこまでもポジティブな男と、無気力そのものの男との対比がもの凄い。
大学教授の男が遊園地に行ったのは、ゼミ合宿の帰りに崖っぷちで自殺しかねない感じで立っていた女子学生を元気づけようと思ったからであり、そして、その女子学生は死んでしまっている。
その女子学生の家族だという男から「反省文」と「お金」を要求され、それに唯々諾々と従っている。
訪ねてきた男は、何故か庭にテントを張り、大学教授の男の家に居着く勢いで、別れた筈の女の子も毎日のようにお風呂を借りに来ているし、この家族は開いているのかそうでないのか、さっぱり分からない。
多分、ひたすら閉じようとしている男に対し、妻と息子がひたすら開こうとしているんじゃないかという気がする。
そして、訪ねてきた男は大学教授の男の家族になぜだかすんなりと受け入れられ、大学教授の男はもちろんそれが面白くない。
訪ねてきた男が、実は、13年間、無実の罪で刑務所に入っていたことが語られ、彼の無実の罪が証明されなかったのはアリバイを証明できる筈の大学教授の男が見つからなかったからだということが明かされ、遊園地のジェットコースター待ちの列で大学教授の男が自分のアリバイを証明できる人物であったと気づいたことが明かされ、そのとき、訪ねてきた男は突然倒れてしまう。
ちなみに、タイトルの「火星」は、彼らが事故に遭ったジェットコースターがfly me to the marsという名前であり、男が女子学生に「どこまで行くんだろう」と話しかけたときに、彼女が「火星じゃないですか」と答えたことから付けられている。
これまた、上手い。
最後は、多分、大団円だ。
大学教授の男を揺すっていた男は改心し、息子の彼女とくっつきそうな勢いだ。
そろそろ火星大接近が迫っている。
訪ねてきた男は退院し、健康を取り戻したようだ。
息子は、大学教授が火星大接近に合わせて設定したゼミ合宿に一緒に行ってもいいとやっと言い出した。
妻は、友人のカフェの手伝いを楽しくこなしている。
そして、訪ねてきた男は、去ろうとする。
去ろうとした男に、大学教授の男は、「遊園地で偶然会ったというのは嘘で、本当は自分を訪ねて合宿を行っていた天文台に来たのではないか」と問い詰め、そして、彼に去って欲しくなさそうなそぶりを見せる。
そこで、幕だ。
この二人の男がこの後、どんな付き合いをしていくのか、しないのか、そこは明かされない。
どんでん返しが続いたのに、何故かそのスリルよりも、大学教授の男の醸し出すとことん無気力なパワーが舞台に溢れていることの方に負けてしまった気がする舞台だった。
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コメント
みずえ様、コメントありがとうございます。
こちらもご覧になったのですね。そして、竹生企画のファンでいらっしゃるのですね。
私は多分、竹生企画のお芝居は初めて拝見したような気がします。
そういえば、真犯人について、私は全く気にしてませんでした(笑)。
何故だろう???
今、考えたところでは、多分、私はずーっと竹中直人さんの側からお芝居を観ていたからのような気がします。生瀬さんはだからあくまでも「平和な生活を脅かす闖入者」で、生瀬さんの視点は全く持っていませんでした。
我ながら、変ですね。
そして、私もこのお芝居のラストは明るいラストだと感じました。
またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
投稿: 姫林檎 | 2018.04.23 23:07
私も観ました!
この竹生企画、大好きなんです。
今回は、前二回に出ていた田口さんは不在でしたね。
倉持さんの舞台は、いつもセットがかっこいいと思います。
高橋ひとみさんの、抜けた感じの演技が素敵でした。
竹中さんの役が、生瀬さんのアリバイを証明できる人だったなんて、初めは冗談かと思っちゃいました。
だってそのくらい、警察は調べてくれなかったの?
素人が十年以上経ってわかることくらい、何で?
と疑問は残りましたけどね……真犯人はラッキー過ぎる。
これから生瀬さんはどうやって生きていくんだろう?
と思いつつも、明るい未来が待っているような気がしたラストでした。
まずは彼も合宿所に行くのかな?
投稿: みずえ | 2018.04.23 11:40