「NARUTO-ナルト-」を見る
新作歌舞伎「NARUTO-ナルト-」
原案・原作 岸本斉史
劇作・脚本・演出 G2
出演 坂東巳之助/中村隼人 /市川笑也/市川笑三郎
中村梅丸/市瀬秀和/嘉島典俊/市川猿弥
市川猿之助 ほか
観劇日 2018年8月11日(土曜日)午後4時30分開演
劇場 新橋演舞場
上演時間 4時間10分(30分、25分の休憩あり)
料金 14500円
ネタバレありの感想は以下に。
コミックもアニメも「NARUTO -ナルト-」を全く見たことがなく、ストーリーもよく知らないまま見に行った。
お隣の席にいらした方達が両方とも完全に押さえている二人連れの女の子で、「**を全部スルーか!」等々と休憩時間に話しているのが聞こえてきた。なるほど、エピソードを一つ抜き出すのではなく、ストーリー全体を表すとG2がどこかで語っていたけれど、その分「つまんだ」感じになっているのだなと思った。
見ていて、こちらは「このエピソードはどうした」とか「**の時代はどうした」とか思うことはほぼない。知らないのだから当たり前だ。
逆に、「ここはどうしようもなくて、回想シーンで登場人物に語らせたのね」と思ったシーンがいくつかあった。演技で見せるには時間が足りないということだろう。コミック70巻以上を、4時間(休憩時間を抜けば3時間)で表そうというのだから当たり前である。
当然、ビジュアルもほとんど知らないまま見に行っていて、そちらはお隣の女の子達も満足げだったから、きっとかなり高い再現性を保っていたのだと思う。
音楽も、三味線と長唄もあり、和楽器(具体的に何なのかはよく判らなかった)で組んだバンド音楽ありだ。
映像もかなり多用していて、いかにもG2の演出らしい感じがした。
G2らしいといえば、最初の幕の引き方で、幕が引かれたばかりの箇所に照明を当てずをことさら暗く見せるところがそれっぽいなぁと思った。
それが必要かどうかは置いておいて、「どうして?」という動機の部分はやっぱりあまり突っ込まれていない。どちらかというと「そういうものだ」という感じで話が進んで行く。
その辺りの説得力は、主演の二人が作り込んだ「キャラ」はもとより、脇を固めているキャラクタを演じる俳優陣の手練れによって生み出されていたように思う。
ただ、やっぱり長大な物語を4時間に詰め込んでいるため、逆にそれぞれのエピソードが間延びして見えてしまっているようにも感じた。私が原作を知らない故だろうとも思いつつ、何だか勿体ないようにも思える。
市川猿之助と片岡愛之助が交互に演じた「ラスボス」についても、そこにたどり着くまでの物語をかなり端折っていることもあって、役者さんが生み出す迫力とは別に、物語的な厚みというかラスボス感がどうしても足りないように感じてしまう。
この辺りは、原作を知っていて、物語の背後にある経緯を知っているかどうかで感じ方や感想が変わってくるのではないかと思う。
最後のナルトとサスケの対決も、正直に言って、この流れになる理由が何だかよく分からなかった。
ナルトと四代目火影の二役を坂東巳之助が演じていて、このギャップがかなり大きかったのが何だか凄かった。
四代目を演じているときの二枚目感が半端ない感じがする。
やっぱり、演じ分けの肝は声だよなぁと毎度のことながら思う。
大蛇丸とクシナ(ナルトの母)の二役を演じた市川笑三郎も、やっぱりビジュアルは特に歌舞伎ならかなり作り込みが可能な訳で、肝は声だよと思う。
舞台での事故後、初めて舞台で拝見した市川猿之助が元気そうだったのが何だか嬉しい。茶目っ気のある感じでラスボスを楽しそうに演じていた。
マスクを外したときの舞台上の空気の変わりようが目に見えるようで驚いた。
キャラとしては、「カカシ」の肩に力が入っていない感じが好きだった。
ストーリー等々とは関係ない話で、今回の席は本当に「花道の横」の席だった。せりも近くて、目の前で決めぜりふや決めのポーズを見聞きできるのが楽しい。
花道を駆け抜けていくシーンでは、役者さん達が起こす風と足音の迫力も凄い。顔の横20cmくらいの距離を走り抜けていく。
ただ、気のせいか、ほこりっぽいような気もする。
それを補って余りある迫力だった。
新作歌舞伎として、歌舞伎と融合させようとした何かがまだ融合させられずにところどころで飛び出してしまっているような印象もある。
特に、シーンごとの殺陣の迫力に差がかなりあるように感じられる。
まだ(期待も込めて)化けそうな、化けて欲しい舞台だった。
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