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2018.10.21

「メタルマクベス disk 2」を見る

「メタルマクベス disk 2」
作 宮藤官九郎
演出 いのうえひでのり
音楽 岡崎司
振付&ステージング 川崎悦子
出演 尾上松也/大原櫻子/原嘉孝
    浅利陽介/高田聖子/河野まさと
    村木よし子/岡本健一/木場勝己 ほか
観劇日 2018年10月20日(土曜日)午後0時30分開演
劇場 IHIステージアラウンド東京
上演時間 4時間5分(20分の休憩あり)
料金 13500円
 
 ロビーではパンフレットほか、様々なグッズが販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 「メタルマクベス disk 2」の公式Webサイトはこちら。

 「髑髏城の七人」は、1作ずつ演出や脚本はもちろんのこと設定も変わっていた一方、「メタルマクベス」は脚本も設定も演出も変えずに上演するのだと思い込んでいたので、「やっぱり当て書きはされているんだな」とまず思った。
 主演が尾上松也だから歌舞伎っぽい振りというか演出はもちろん入っていたし、「王専属シンガー」を徳永ゆうきが演じていたので、もちろん駅の構内放送(というかアナウンス)のパフォーマンスが入る。
 「3人の魔女」もメンバーの脱退がニュースになっていた「BABY METAL」をもじっていて、これは狙っていた訳ではないんだろうなと思ったりした。

 幕が開いてすぐは、その「3人の魔女」の歌唱で、私の席(ほぼ最後列に近い)のせいなのか、音が割れているような、3人の歌声のバランスが取れていなくてハモっていないようにすら聞こえて、「大丈夫なのか?」というか「どうしちゃったんだ?」と思ったくらいだった。
 バイクに乗りながらの尾上松也の歌声もかすれて高音が出ていないように聞こえて、喉を潰しちゃったのかなぁと心配にもなった。
 それが、舞台が進むにつれて気にならなくなってきて、一安心した。私の気のせいだったのかも知れない。

 「髑髏城の七人」よりは脚本を変更していないので、ストーリーはもちろん同じだし、それぞれの役割というか設定も同じである。
 2218年の尾上松也演じるエクスプローラー達が生きている「マクベス」のストーリーを追う世界と、1980年代の尾上松也演じるマクベス松也が率いる「メタルマクベス」というバンドのストーリーが交錯し、進んで行く。

 メタルマクベスが出した最初で最後のCDである「メタルマクベス」というアルバムの曲に沿って、エクスプローラーの人生が展開する。
 メタルマクベスの歌は、戯曲のマクベスを追っていて、だから、エクスプローラーの人生は戯曲のマクベスの人生を追うことになる。
 ややこしいといえばややこしい設定である。

 メタルマクベスに限らず、「マクベス」を見るたびに、マクベス夫人が夫を強引極まりなくそそのかして王への反逆を行わせ、しばらくは王の亡霊に怯える夫を叱咤激励さえしていたにもかかわらず、夫よりも先に狂気にとらわれて自ら命を絶つのが解せなかった。
 それが、今回、「マクベス夫人は、マクベスに己を唆したことを詰られた瞬間に正気を手放したんだな」と何故かストンと腑に落ちた。
 我ながら鈍いと言えば鈍い。訳が分からない。

 逆に、1980年代にメタルマクベスのマネージャーを務めていたローズが睡眠薬の過剰摂取で入院してしまった経過は相変わらずよく判らなかった。というよりも、マクベスの世界でマクベス夫人が正気を手放したから、彼女と対照の位置にいるローズも大原櫻子が演じるのだし、ローズの設定も自ずと踏襲することになったんだろうなという感じがする。
 敢えて言うと、物語の世界の中での必然性はあまり感じられなかった。
 そもそも、1980年代の世界に割かれる時間が少ないのだから当たり前である。

 橋本さとしと尾上松也の歌声も歌い方も(もちろん年齢も)随分と違うなぁという印象である。
 マクベスが変わると、演出の違い以上に、舞台に違う印象を与えるのだなぁと、これまた当たり前といえば当たり前のことを思う。
 disk2の方が、マクベス夫妻は「自分たちは小さいのに大きなことをやり過ぎた」「自分たちの器はこの状況を支えられ耐えられるほどに大きくない」ということを認めるにやぶさかでない、という印象だ。
 歳を取っている方が、その辺りの柔軟性が失われ、意地とかプライドとかが邪魔をするということなんだろうと思う。

 ダンカン王を演じた木場勝己の歌が上手すぎる。何だかもう上手すぎだよ、と思ってしまったくらいだ。
 多分「ここは歌詞を判って!」という場面では歌詞がスクリーン上に表示されていて、でも、ダンカン王の歌唱の場面ではそれはいりません、ちゃんと歌詞が聞き取れます、と思った。
 何というか、その歌声も含めて「殺すべきではなかった王」という印象が強烈に伝わる。

 グレコ(マグダフ)を演じた浅利陽介の殺陣の切れがいいのにも(失礼ながら)驚いた。あまり「闘う」というイメージがなかったせいかも知れない。
 マクベスと1対1で闘い、そして倒すシーンの殺陣なども二人の動きが綺麗に合っていて、格好良かったと思う。もっと長く見ていたかったくらいだ。
 「帝王切開で生まれた」のは「女の股から生まれた」のではないという解釈は相変わらずよく判らなくて、グレコ(マグダフ)に「帝王切開で生まれたんだよ!」と言われて納得するくらいなら、3人の魔女に「女の股から生まれた男にマクベスは殺せない」と預言を受けた時点で気がつこうよ、と毎回思う。

 動くといえば、レスポールを演じた原嘉孝のダンスがまた見事で、こちらは「どうだー!」という感じでダンスシーンもかなり盛り上げていたので、堪能した。
 格好良かったし、客席からも「思わず」という感じで拍手が沸き起こっていた。
 シェイクスピアの戯曲では、ダンカン王の王子マルカムが、マクベス亡き後の新王に就くけれど、メタルマクベスでは王子のレスポールはマクベスを倒すために自らを犠牲にし、バンクォーの息子が王位に就かされそうになるところで終わる。
 これはやっぱりレスポールに見せ場を作るためかなぁなどと考えたりした。

 帰結するところは知っているのに、知っているからこそ楽しめるという舞台作りが凄いと思う。
 disk3で何が変わり、何が変わらないのか、それも楽しみである。

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