« 「奇跡の人」のチケットを予約する | トップページ | 「民衆の敵」を見る »

2018.12.02

「メタルマクベス disk 3」を見る

「メタルマクベス disk 3」
作 宮藤官九郎
演出 いのうえひでのり
音楽 岡崎司
振付&ステージング 川崎悦子
出演 浦井健治/長澤まさみ/高杉真宙
    柳下大/峯村リエ/粟根まこと
    右近健一/橋本じゅん/ラサール石井 ほか
観劇日 2018年12月1日(土曜日)午後0時30分開演
劇場 IHIステージアラウンド東京
上演時間 4時間(20分の休憩あり)
料金 13500円
 
 IHIステージアラウンド東京のこけら落とし公演「髑髏城の七人 花」に始まり、これまで上演されたすべてのお芝居を観ていることになる。
 この後、IHIステージアラウンド東京での公演予定を知りたいところだ。

 ネタバレありの感想は以下に。

 「メタルマクベス disk 3」の公式Webサイトはこちら。

 「髑髏城の七人」とは異なり、「メタルマクベス」はDISK1からDISK3まで、基本的に脚本は同一だそうだ。実際に見てみると、全く同じ台詞という訳ではなかったけれど、そこはやはり出演者によって演出が異なるということだと思う。
 なので、ストーリーは、「メタルマクベス disk 1」の感想に譲ることにする。

 何というか、DISK3を見ている間中、私の頭にあったのはひたすら「この安定感は何なの?」ということだった。
 そして、この抜群の安定感を出していたのは、何といってもマクベスとランダムスターを演じた浦井健治の歌唱力だと思う。声量と音程の安定感とプラスアルファがもの凄い。ここを委ねられるって、何て心地よいことなんだろうとずっと思っていた。

 長澤まさみは、三谷幸喜作・演出の舞台「紫式部ダイアリー」で拝見したことがあって、でも歌っているのを聴いたのは今回が初めてだった。
 上手い。
 そして、disk1やdisk2と比べて、ランダムスター夫人(本家本元の「マクベス」と同様に、このお芝居でもマクベス夫人の名前は語られない)が歌うシーンが増えていたのは気のせいだろうか。彼女の歌を押そうということなのねと思っていた。

 もちろん、disk1とdisk2という積み重ねのなせる業というところも大きいとは思うけれどdisk3の安定感の高さは、主演お二人の歌の力によるところも大きいように思う。
 多分、「ヘヴィメタル」という音楽にも合っていたのだと思う。
 パール王を演じた粟根まことや、バンクォーを演じた橋本じゅんら、この「メタルマクベス」の公演で同じ役を演じたことのある役者さんが出演していたことも、安定感に一役買っていると思う。
 短い期間に3回見ているので、見ていた私の側の「知っている」という安心感もあったかも知れない。

 disk3で、見ている側も3回目以上という人が多いからなのか、disk1とdisk2と比べると、説明っぽいところがだいぶ端折ってあったような気がする。
 例えば、三人の魔女たちが2回目の預言をするところで、「空が割れなければ、マクベスは負けない」とか「丘の鯨が空を飛ばなければ、マクベスは負けない」という預言については、ほとんど触れられていなかったような気がする。
 私の意識が飛んでいただけだろうか。

 「稲光で空が割れたようだ」と門番の報告を受けて、エクスプローラーがそれは破滅が近づいている証だと叫ぶシーンを見たときに、「この預言って魔女達は歌っていたっけ?」と思った記憶があるので、少なくとも強調はされていなかったのではないかと思う。
 上演予定時間がdisk2より5分短くなっていて、かつ、歌が増えたような印象だったから、どこかは割愛されていたのだろうと思う。

 逆に、エクスプローラー夫人が壊れてしまう直接のきっかけが、エクスプローラーの「最初におまえが唆したんだろう」という台詞だったという解釈は、disk3が一番分かりやすく提示されていたように思う。
 そして、「小さい人間が大きなことをやるのは大変だ」という、王を殺してしまった後のマクベス夫妻の嘆きというか呟きも、マクベスとむしろその夫人のその後の壊れっぷりの原因を示す台詞として、分かりやすい。
 こちらがそのつもりで見ていたから「分かりやすい」という感想になったかも知れないけれど、この分かりやすさは有難い。

 分かりやすさといえば、原作のマクベスでは、マクベスの次に王になるのはダンカン王の息子フリーアンスだけれど、メタルマクベスでは、魔女の預言を端的に表すべく、バンクォーの息子が王になることを示されて幕となる。
 これも、多分「分かりやすさ」を示すためだろうし、王の息子レスポールJrが我が身を犠牲にしてエクスプローラーを倒すシーンを加えることで、レスポールJrの見せ場を作ったということもあるんじゃないかと思う。

 見終わって、前日に職場で落ち込むようなことがあって鬱々とした気持ちを引きずっていたのですが、抜群の安定感の中、メタルマクベスの世界観に浸り、見終わったら随分と気持ちがすっきりしていました。
 お芝居って凄い、と思います。

|

« 「奇跡の人」のチケットを予約する | トップページ | 「民衆の敵」を見る »

*芝居」カテゴリの記事

*感想」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「メタルマクベス disk 3」を見る:

« 「奇跡の人」のチケットを予約する | トップページ | 「民衆の敵」を見る »