「ア・ラ・カルト」を見る
移動レストラン「ア・ラ・カルト」
演出 吉澤耕一
台本 高泉淳子
音楽監督 中西俊博
出演 高泉淳子/山本光洋/中山祐一朗/采澤靖起
音楽家 中西俊博(vl)/竹中俊二(g)
パトリック・ヌジェ(acc)
ブレント・ナッシー(b)
ゲスト 尾上菊之丞
観劇日 2018年12月22日(土曜日)午後2時開演
劇場 東京芸術劇場シアターイースト
上演時間 3時間(15分の休憩あり)
料金 7500円
ロビーでは、30周年記念パンフレットや、高泉淳子のCD(大吟醸のお酒つき)などなどが販売されていた。
休憩時間のワイン販売ももちろんある。
ネタバレありの感想は以下に。
昨年の横浜での公演は見ていないので、2年ぶりのア・ラ・カルトである。
懐かしい、ような気がする。
今回は、舞台を三方から囲んだ客席のうち、舞台に向かって右手の横から見る席だった。前から2番目だったので、かなり舞台が近い。
旅芸人一座っぽい始まりが楽しい。
楽器を運んできて、シャンデリアをつるして、布をかけて積んであったテーブルや椅子を並べて、ギャルソンスタイルに着替え、演奏スタイルに着替え、そしてレストランのオープンである。
何しろ30周年だから当たり前なのだけれど、高泉淳子も、中西俊博も竹中俊二も、みなさんお年を召されましたね、と思う。多分、自分もだ。
それにしても、中西俊博のあごひげには驚いた。
今年のミュージシャンは、そのお二人に、パトリック・ヌジェがアコーディオンと(多分)ホルンを担当し、ブレント・ナッシーがコントラバスを担当していた。
どうも私は2年前のことをすっかり忘れているらしく、こちらの二人とも2年前にも出演されているのにほとんど記憶になかったところが情けない。
さらに書くと、2年前にも出演されていた采澤靖起を見ながら「今年は若い人を呼んだのね」などと思っていたのだから、我ながら記憶力の危機を感じる。
高泉淳子扮する女性一人のお客様がクリスマスのレストランを訪れるところから始まる。
今年の飲み物はシャンパンで、ウィリアム王子とキャサリン妃のご結婚の披露宴でも飲まれたシャンパンだと言っていた(けれど、銘柄の名前などは忘れてしまった)。確か、夫婦で作っているシャンパンで、ご夫婦の名前をそのままシャンパンの名前にした、みたいな蘊蓄だったと思う。
女性客が、30年前からこのレストランに来ている、場所を移ったことを知らなかったなどと話した上で、「最初に来たときはまだ未成年でした」と回りくどく説明するのが可笑しい。
えーっと、高泉敦子はいくつでしたっけ? と思う。
そして、彼女がいただく「クリスマスに女一人でフレンチレストラン」のコースを味わう舞台の始まりである。
次にやってくるのは、タカハシ先輩と中山祐一朗演じるナカタくんの二人が主宰する「ワインとフランス料理を嗜む会」のメンバーだ。
8人で予約していたのに、昨日2人分をキャンセルし、今日も部長たちがレセプションを抜けられずに2人分キャンセル、さらにひとみちゃんとトクサワさん(だったかな?)も「行けません」とメールで連絡してきて、結局、二人だけの「たしなむ会」になってしまう。
お店の人に「6人キャンセルなんてどう言おうか」と慌てる二人と、どうしても言えないタカハシ先輩、とことん空気を読まずに淡々と仕事をするギャルソンのヨネザサくんのやりとりが楽しい。
そういえば、この「ワインをたしなむ会」「台詞を知らされていないゲストと高泉淳子演じる女性との恋の始まり」「マダム・ジュジュとゲストの会話」「ショータイム」「老カップルのデート」というフォーマットは、移動レストランになってからほとんど変わっていないような気がする。
そんな訳で、本日のゲストである尾上菊之丞と高泉淳子が登場し、「恋の始まり」の始まりである。
尾上菊之丞は2公演目の筈なのに、アンチョコが隠されているのだろうメニューを返したがらないところが謎である。もしかして、昨日の公演とは設定などなどが変更されているんだろうか。それとも、「慌てている」風情も含めて演技なんだろうか。毎回、実は不思議に思っている。
それにしても、尾上菊之丞の場合はその端正なたたずまいが功を奏していて、とりあえず端正にしていれば許される感じがあるのが可笑しい。
可笑しいといえば、随分、高泉淳子が尾上菊之丞の役名を間違えていたけれど、あれもネタなのか素なのか判断しにくいところである。
ここで15分間の休憩となる。
ロビーでは、187.5mlのワインが赤白2本セットで販売されていて、そちらを飲んでいる方ももちろん多かったけれど、普通にロビーのカウンターでワインを注文して飲んでいらっしゃる方もいて、とにかくワイン率が高い。
昼公演とは思えないくらいである。
そういえば今回は「マダム・ジュジュ」とは名乗っていなかったような気がするけれど、とにかくマダム・ジュジュとゲストの尾上菊之丞とのトークから後半が始まる。
尾上菊之丞は和服姿である。
彼ら二人も、中西俊博はいなかったけれど他3人のミュージシャンたちもワインを楽しんでいて、その楽しんでいる感じが楽しい。
高泉淳子が「美しい所作を教えてください」と頼み、尾上菊之丞が立ち方を伝授すると、後ろで竹中俊二が一緒に立ち方を練習していたり、そういう雰囲気が持ち味だよなぁと思う。
ショータイムの圧巻は、やっぱり尾上菊之丞の舞である。
ピアソラのリベルタンゴに載せて舞ってしまうのだから、何というか、凄いとしか言いようがない。
何だか凄い空気の時間だった。
じーっと見ていると、腰と首が本当にぶれない。あの体幹が美しい所作を支えているのねと思う。
休憩前にも思ったけれど、尾上菊之丞の歌がまた上手くて、ピアソラに載せた舞いだけでなく、ショータイムでもマイクを握って歌っていた。
天は二物を人に与えるのよね、やっぱり、と思う。何というか、怖いものなしだ。
もちろん、高泉淳子も歌うし、山本光洋も踊っていたし(パントマイムというよりはダンスだったと思う)、たっぷりのショータイムが楽しかった。ギャルソンたちももっと歌って踊ってくれるといいなぁと思う。
休憩後は本当にあっという間に進んでしまって、もう老カップルの出番である。
山本光洋と高泉淳子のカップルは、これまでは「友達以上恋人未満」の二人だったような記憶だけれど、今回は「老夫婦」になっていた。
老夫婦である分、お互いに遠慮がなくて、不機嫌になるととことん不機嫌になるし、遠慮なく言いたいことを言うのが可笑しくも切ない。
来年の予約をして帰ろう、という終わり方も見事である。
そして、最初の女性の食事風景に戻る。
ア・ラ・カルトで用意された彼女のディナーもここで終了である。
闇に沈んでいたゲストにスポットが当てられ、彼から彼女にシャンパンがご馳走されるのも、そのシャンパンにギャルソンたちがご相伴にあずかるのも、風物詩的に展開される物語だ。
懐かしい。
そして、また会えた嬉しさがある。
ア・ラ・カルト、閉店である。
客席には30年間ずっとア・ラ・カルトを見ているという方もいらっしゃって、そちらには遠く及ばないけれど、私も30周年記念パンフレットを見ながら考えてみたところでは、20年くらいは(毎年ではないけれど)このレストランに通っているようだ。
そして、またの開店を心待ちにしているところである。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- 「Riverdance Japan 2024」のチケットを購入する(2024.03.13)
- 「虹のかけら~もうひとりのジュディ」の抽選予約に申し込む(2024.03.02)
- 「ジャージー・ボーイズ イン コンサート」を聴く(2020.08.03)
- 「大地」/「三谷幸喜のショーガール」の抽選予約に申し込む(2020.02.16)
- 「天保十二年のシェイクスピア」を見る(2020.02.11)
「*芝居」カテゴリの記事
- 「先生の背中 ~ある映画監督の幻影的回想録~」の抽選予約に申し込む(2025.03.29)
- 「フロイス -その死、書き残さず-」を見る(2025.03.23)
- 「リンス・リピート」のチケットを購入する(2025.03.20)
- 「やなぎにツバメは」を見る(2025.03.16)
- 「デマゴギージャス」を見る(2025.03.09)
「*感想」カテゴリの記事
- 「やなぎにツバメは」を見る(2025.03.16)
- 「デマゴギージャス」を見る(2025.03.09)
- 「にんげんたち〜労働運動者始末記」を見る(2025.03.03)
- 「蒙古が襲来」を見る(2025.03.01)
コメント