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「画狂人 北斎」
脚本 池谷雅夫
演出・脚色 宮本亜門
音楽 福岡ユタカ
出演 升毅/黒谷友香/玉城裕規
津村知与支/和田雅成/水谷あつし
観劇日 2019年1月13日(日曜日)午後1時開演
劇場 新国立劇場小劇場
上演時間 1時間45分
料金 8000円
1月の観劇予定が1本しかなく、それは寂しすぎる気がしてチケットを予約した。
朗読を見たくて見逃していたので、とても楽しみである。
宮本亜門演出だしと勝手にミュージカルだと思い込んでいて、朗読劇をミュージカルにするって落差が激しいと思っていたら、ストレートプレイだった。
我ながら、間抜けな話である。
ミュージカルだったら、そもそも音楽担当が明らかにされているだろうと自分で自分にツッコミたい。
それくらい予備知識なく行ったので、いきなり北斎研究者による講演の場面から始まったことに驚いた。
どうなっちゃうのかしらと思っていたら、場面転換で北斎とお栄父娘のシーンになったので、なるほど、現代と北斎の晩年の頃とを行ったり来たりして進んで行く形なんだなと納得する。
現代では、日本画家を目指したものの挫折した北斎研究者になった男と、その後輩で東日本大震災以降描けなくなってしまった画家の卵のやりとりがメインで進んで行く。
一方、江戸時代では、北斎とお栄父娘の暮らしに、悪魔のようにやってきてお金をせびって行く孫の時太郎、北斎と組んで仕事をしている戯作者(だと思う)の種彦という4人が主に登場し、描こうとする北斎、描いている北斎、色々なものが禁止されて描きづらくなった北斎、小布施に逃げ出して高井鴻山の家に身を寄せた北斎、再び描き始めた北斎が描かれる。
升毅の北斎は、もちろん絵にのめり込む北斎でありつつ、むしろ天才ではなくか弱い(という言い方も変かも知れないけれども)面が強調されているような気がした。
朝井まかての「眩」で時太郎という孫が本当に悪魔のようなとんでもない孫だったという印象を強く持っていたので、彼が現れると途端に嫌な気持ちになって、追い払ってやりたい気持ちになった。
実際、お栄も包丁を向けてまで嫌っているようだった一方、北斎は随分と優しくて、それは「孫に甘い」というよりは「罪滅ぼし」という感じすらある。
最後には、時太郎に子供が生まれ、改心したらしいシーンがあったので、ちょっとほっとした。
柳亭種彦と「眩」に出てくる淫斎英泉と、どちらも人物も実在の戯作者で、かつお栄と恋仲になる設定だったものだからごっちゃになってしまい、客席のこちらで勝手に混乱した。
一方、昨年秋に小布施に行って、高井鴻山記念館に立ち寄ったりしたので、彼が出てくるシーンでは何だか勝手に親しみを感じた。
北斎が「見られている」と気にしている目が、実は北極星がむしろ北斎を見守っている視点であって、小布施の岩松院の天井画の鳳凰の「目」に収斂していくところが上手く繋げたなぁと思う。
それは、徐々にリンクを張り巡らされていく現代との間でも、北斎研究者が「定規とコンパス」という理論的な分析を一時放り出し、研究発表のさなかに北斎の心情に言及するシーンとも繋がって行く。
むしろ、そこまでやらなければ現代と江戸時代とを行ったり来たりする設定は活かされなかっただろうと思う。
ただ、逆に、現代と北斎の時代とが交錯する、その両方に画家が登場し「描けない」ということに直面する、という設定を活かそうとする余り、無理をしているというか、ぎくしゃくしている部分があるように感じた。
勝手な感想ではありつつ、それぞれで「物語」として成立しているものを無理矢理繋ごうとしているようにも感じられてしまい、ちょっと消化不良なところがあった。
こちらの頭がどんどん固くなって、時代が飛んだりすることに付いて行けていなかったのかも知れない。
葛飾北斎という画家は、きっと、これからもずっと人気の画家で、色々な人が色々な角度から視点から研究し、テーマとして取り上げ、色々は北斎が描かれて行くんだろうなと思った。
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