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「プラトーノフ」
作 アントン・チェーホフ
翻訳 目黒条
演出 森新太郎
出演 藤原竜也/高岡早紀/比嘉愛未/前田亜紀
中別府葵/近藤公園/尾関陸/小林正寛
佐藤誓/石田圭祐/浅利陽介/神保悟志
西岡徳馬 ほか
観劇日 2019年2月16日(土曜日)午後0時30分開演
劇場 東京芸術劇場プレイハウス
料金 9800円
上演時間 2時間55分(15分の休憩あり)
ロビーでは色々販売されていたようだけれど、行列ができていたのでチェックしそびれてしまった。
ネタバレありの感想は以下に。
チラシの人物相関図をちゃんと見ていなかった私が悪いのか、登場人物が多すぎて人間関係を呑み込むまでに時間がかかった。
むしろ、見終わった今でも劇中の人間関係を把握できていない気がする。
しかも、今日、出かける前にチケットを見るまで、何故か「プラトーノフはシアターコクーンで上演される」と思い込んでいた。何となく、この芝居のうたい文句はシアターコクーンっぽいと思う。
劇場に入ってまず、かなりの八百屋になっている舞台に驚いた。
これは役者さんたちは相当に大変だろうなぁと思う。
開演して明かりが入ると、カーブを描いて舞台奥にずっと坂が続いている感じになっていて、ますます「大変だろうな」感が増した。
しかも、舞台奥にいる人が何だか遠くに見える。もの凄い遠近感だ。
チェーホフの処女作ということは何となく覚えていて、ということは、舞台はロシアである。
チェーホフの芝居というと「かもめ」とか「桜の園」くらいしか浮かばず、この芝居もしっかりそれらの芝居に繋がる雰囲気や舞台設定ができあがっているように見える。
未亡人、将軍、大佐、義理の親子、インテリ、借金、金貸し、質実な娘、ダメダメなのにモテる男ともはや定番という気がする。
藤原竜也演じるミハエル・プラトーノフも、どう考えてもダメ男だろという感じなのに、何故かモテる男である。
チェーホフの芝居に出てくるダメ男としては珍しく、定職を持っている。小学校(と言っていたような気がする)教師だそうだ。見えない。
何だかもう屁理屈をこねくり回してその場にいるすべての人を不快にする、というタイプの男にしか見えない。なのに何故モテる。
このダメダメなプラトーノフには、彼と正反対のタイプに見えるのに彼に惚れ抜いているように見える妻がいて、高岡早紀演じる舞台となっている屋敷の女主人アンナ(将軍の未亡人だそうだ)も彼に惚れているし、アンナの義理の息子セルゲイの嫁である比嘉愛未演じるソフィアはかつてプラトーノフと付き合っていたらしい。
何故登場したのかかなり不思議だったマリヤという若い娘もプラトーノフに惚れているっぽい。
この辺りがまず私が混乱したところで、何故だか最初、セルゲイの嫁はマリヤだと思い込んでしまい、しばらくの間?マークで頭が一杯だった。
プラトーノフは、子供もいるのに妻を莫迦にしきっていて、かなり感じが悪い。
アンナの誘惑にもあっさり乗るし、ソフィアには積極的に手も口も出す。
アンナにお金を貸している何とかという男のことは散々けなすし、彼に手名付けられている乱暴者(という言い方でいいんだろうか)の男のことを挑発する。
そのくせ、本人は痛みにも弱いし、意思も弱いし、いいところが全くない。
結局、人妻となっていたソフィアを籠絡できたものの、そのソフィアに逆にのめり込まれてプラトーノフの友人でもあるセルゲイにソフィアが不倫を告げた辺りから、さらにプラトーノフはダメダメの自己中心的極まりない本性を現していく。
妻であるサーシャはプラトーノフに裏切られたことで自殺を図り、さらにプラトーノフはアンナとソフィアと三角関係で馬鹿馬鹿しく苦悩している振りをする。
アンナに惚れていた近所に住んでいる男は、プラトーノフのダメっぷりを見て何がどうなったのか、アンナを助けて借金を肩代わりする代わりに息子が住むパリに出かけることにし、彼がからかったマリヤは教育委員会に訴え出てプラトーノフを失職させ、ついでに裁判にも訴えたらしい。
踏んだり蹴ったりも状況にも関わらず、プラトーノフの反省のなさがかなり腹立たしい。絶対コイツは嫌な奴だという思いが強くなる。
そこを、嫌みな感じなのに笑いを起こさせるように演じる藤原竜也はもの凄く「上手い」のかも知れない。でも、藤原竜也はやっぱり藤原竜也なんだよなぁとも思う。
プラトーノフは結局、誰と何をどうしたかったのか、最後まで誰に語ることもない。
「責任を取る」ということから逃げまくり、自分を守るように言い訳しまくり、自分だけが不幸であるかのように語りまくり、競売に掛けられてしまったアンナの屋敷にやってきて、激高したソフィアに撃たれて死んでしまう。
何だかすべてがチェーホフっぽい。
自殺じゃないところはチェーホフっぽくないのか。
登場人物が多いのと、アンナがどういう人物なのかが今ひとつ私の定番に収まらなかったところがあって、見ながら右往左往してしまった。
でも、やっぱりチェーホフだ。処女作にはすべてが含まれているというのは本当なのかも、と思う。
重厚に見せて笑いもあり、プラトーノフのダメダメっぷりが際立つ。ちょっと得がたいものを見た、という感じがした。
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