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2019.03.17

「母と惑星について、および自転する女たちの記録」を見る

パルコ・プロデュース公演「母と惑星について、および自転する女たちの記録」
作 蓬莱竜太
演出 栗山民也
出演 芳根京子/鈴木杏/田畑智子/キムラ緑子
観劇日 2019年3月16日(土曜日)午後1時開演
劇場 紀伊國屋ホール
料金 8500円
上演時間 2時間30分(15分の休憩あり)
 
 ロビーでの物販はチェックしそびれてしまった。
 パンフレットが販売されていた、と思う。

 ネタバレありの感想は以下に。

 パルコ劇場の公式Webサイト内、「母と惑星について、および自転する女たちの記録」のページはこちら。

 初演を見ていて、出演者の半分が変わった今回の再演はどんな感じなんだろうと思っていた。
 もっとも、初演のときの感想はほとんど覚えていない。
 斉藤由貴若いなぁ、親子に見えないなぁ、むしろ姉妹に見えるよ、と思ったことは何となく覚えている。
 今、自分で書いた感想の最初の部分だけを見返して、チケット代が700円も値上がりしていたよ! とそこにまず驚いた。

 キムラ緑子演じる母親が心筋梗塞で亡くなり、長崎で一緒に暮らしていた芳根京子演じる三女はもとより、東京(だと思う)で暮らしている田畑智子演じる長女と鈴木杏演じる次女にとってもそれは「最愛の母が亡くなった」とは真逆の意味で衝撃的な出来事で、3人は長女の発案(と出資)で、母が好きだった歌にちなんでイスタンブールまでやって来ている。
 一応「母の骨を撒く」という目的はあるものの、それ以外のことは何ひとつ決めずに来たようだ。

 三姉妹の母親は、好き勝手かつ奔放かつ娘達を「重石」と公言して所有物であるかのような扱いをする。
 「扱いをする」というか、所有物であることを前提に娘達に話しているように思う。それは「会話」というよりは、概ね「一方的な宣言」として伝えられていた、のかも知れない。
 初演のときは、この母親を肯定しているような描き方に随分と反感を持ったものだけれど、今回はあっさりと「この人の言うことやることには筋が通っているような気がする」と陥落してしまった。
 多分、今回の母親の方が、「娘達に嫉妬することのやるせなさ」を感じさせたからだと思う。

 芳根京子が何だかとても可愛らしかった。朝の連続テレビ小説に出ていたときよりずっと可愛く見えた。年相応の役を演じているからか。
 思ったことを言えない、内にため込んでしまう三女のを演じていて、でも(恐らくは)生来の素直な感じが演技にもにじみ出ているような気がする。
 志田未来が「屈折」を強く打ち出していたのに対して、芳根京子は「内にこもる」感じをポイントに置いていたのかなぁと思う。
 いずれにしても、この三女が一番「扱いづらい」ことは間違いない。

 生真面目に正面衝突を繰り返す長女、その長女を見ているせいか何とか家族を上手く取り持とうとする次女、そして10才の時に森に置き去りにされたことや母親に「おまえだけ父親が違う」と言われたことから「私が一番嫌われている」と思い続けてそれを誰にも言えず、なのに母親と一緒に住んで彼女の面倒を見続けた三女が、久しぶりに三姉妹が一緒になり、母親はもうおらず(なのにバザールで3人一緒に母親の姿を目撃したりして)、それぞれの母親への思いと、結婚や「自分が母親になること」への不安と不信をそれぞれ少しずつ語り始める。

 その三姉妹の語り方を見ていて、「若いなぁ」と思ってしまったのは、こちらの年齢のせいだと思う。
 かといって、年齢的には遙かに近い母親の心情には全く理解及ばず、そちらにシンパシーを感じた訳でもない。むしろ、長女と一緒になって彼女にかみつきたい気持ちで一杯だった。長女が「親子ではなく女同士だと思っていれば、普通に会話できたかも」的な独白をノートに向かって書き付けていたけれど、長女のやり方には「それじゃこの母親には敵わないよ」と思うし、次女を見ていると「上手いな」と思う。
 三女が一番やっぱり扱いづらいし、声のかけように困る。

 この舞台は独白のシーンが多くて、三姉妹がかわりばんこに「語り」を務める。長女はエッセイのネタをノートに書き付けているようだし、次女は夫にLINEで旅の様子を綴る。
 三女の独白も、最後にお腹の子の父親で何ヶ月か前にプロポーズしてくれた相手に対する手紙であったことが明かされる。
 そうして、三女の独白で始まった舞台は、その最初の独白の「続き」も最後に語られることで輪が閉じられる。
 計算された展開なんだなぁと改めて思ったりした。

 母親が恒星で、イヤだと思いながらもその重力から逃れられない惑星の娘達、そして、その重力のくびきから逃れようとして娘達は「自転」という空回りを続けている。
 それは、母親が亡くなった後も多分ずっと続いて行く。
 でも、そういうことなのだと改めて確認し、三姉妹で共有したことで、次女の言うとおり「もう死んじゃった人なんだから、こっちに都合良く考えよう」ということができそうな気もする。
 旅は何も解決はしないけれど、何かのきっかけにはなる、こともある、かも知れない。

 再演も見て良かったと思う。

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