「ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」を見る
愛のレキシアター「ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」
原案・演出 たいらのまさピコ(河原雅彦)
上演台本 たいらのまさピコ(河原雅彦)・大堀光威
音楽 レキシ
音楽監督 ヒロ出島(山口寛雄)
振付 梅棒
出演 山本耕史/松岡茉優/佐藤流司/高田聖子
井上小百合(乃木坂46)/前田悟
浦嶋りんこ/山本亨/藤井隆/八嶋智人
梅澤裕介/遠山晶司/楢木和也/野田裕貴
巽徳子/YOU/碓井菜央/佐久間夕貴
五十嵐結也/永井直也/カイル・カード サラ・マクドナルド
観劇日 2019年3月23日(土曜日)午後1時開演
劇場 赤坂ACTシアター
料金 9000円
上演時間 3時間15分(20分の休憩あり)
ロビーではパンフレットやTシャツなどのグッズが販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
席に着いたら、何故か目の前に稲穂が用意されていた。
そういえば相変わらず下調べというか、確認しないで来てしまったけれど、このお芝居はミュージカルだった。そして、客席の様子を窺ったところ、「レキシ」のファンの方が多いような気がする。
「舞台を見に来た」という感じではなく、「歌を聴きに来た」「コンサートに来た」という雰囲気だ。
もっとも、私はほとんど「コンサート」に行ったことがないので、ほとんど行ったことのない私が感じた「感じ」である。当てにはならない。
最初からステージ上にあったスクリーンに、レキシ氏のお葬式の様子が映し出され、明らかにアングロサクソン系の男女が「兄です」「姉です」と名乗り、「レキシ ネーム」を持った人々が次々に登場する。
私のような全く予備知識のない人間に「この舞台でのお約束」を伝えるための、超直球のレクチャーである。
しかし、どうも私はここでこのノリに全く置いて行かれてしまったらしい。どうにも馴染めないままになってしまったのが残念だ。
山本耕史演じるニートの若者(というほど若い設定ではなかったような気もするけれど)こきん、ネットで動画配信している松岡茉優演じる「歴女」のかおりこに恋をし、何がどうなったかよく判らないまま「レキシーランド」という日本の歴史を(一部、旧石器時代などもあったけれども)テーマにしたテーマパークにやってくる。
彼ら二人だけでなく、高田聖子演じる母親の胡蝶と、藤井隆演じる引きこもりサポーターの明智という男も一緒である。そして、この二人が、学生時代に付き合っていた、というのがややこしい。
八嶋智人演じるレキシーランドの支配人であるウォルト・レキシーの案内で、彼ら4人や、ニートの男が生み出した「義経」というハンドルネームの佐藤流司演じる若い男が、悪役というのか、その「影の存在」でいることに飽き足らず、主に明智を唆して、一応は日本史に則った展開を心がけているレキシーランドのアトラクションに次々と介入し、自分が「主役」になろうと足掻く。
「役」で思い出したけれど、役名「代役侍」の前田悟は本当に代役だったらしい。
殺陣指導で参加していたところ、お侍ちゃんの代役で出演することになったと舞台上で語っていて、ネタかと思っていたら実話だったようだ。
こういう内輪受け的なノリにどこまで付いて行けるか、素直に楽しんじゃえるかどうかがこの舞台を見る側のポイントのような気がする。
こきんはかおりこに恋をし、かおりこは義経に恋をし、胡蝶と明智は何となくいい感じになりつつ山本亨演じる将軍の存在に振り回されている。
ちなみに、胡蝶と将軍の息子がこきんである。
日本史に忠実そうにしつつ、どうしてこの男の名前が「こきん」なのかがよく判らなかった。どうやら、こきんは古今らしい、ということが判ったくらいである。
狂言回しのレキシーに連れ回され、腰元を演じている浦島りんこの歌にため息などついていると、どこまで行ってもダメなこきんはあちこちのアトラクションを回りつつ、どこまで行っても情けないままである。
筋書きをとりあえず横に置いておいて舞台上を追うと、浦島りんこ始めとして、歌の上手い人たちを集めたなぁと思う。
大体、どの組み合わせでも(概ね)きちんとハモる安定感があるというのは結構凄い。
この舞台で歌われていた歌は「このミュージカルのために作られた」楽曲ではなく、元々「レキシ」の楽曲なのだそうだ。
日本の歴史をテーマにした曲ばかりで、それは「レキシ」を名乗っている訳だけれども、これだけよく既存であったものだと思う。
そもそも、楽曲があったからこそのこのミュージカルなんだと思う。
歌詞を舞台両脇の電光掲示板で見せてくれ、何だか海外ミュージカルのようでもある。要するに、歌詞を理解してなんぼというミュージカルの造りなのだと思う。
確かに、楽しい。
初めて聞いた曲ばかりだったけれど、そのうち一緒に口ずさめるようになった曲の結構あったし、帰り道では頭の中をぐるぐる回っている曲もある。
あとは、これはもう「乗った者勝ち」だ。
最初に乗り遅れると、なかなかこちらに挽回のチャンスがない。
私は、2階席にいて舞台から遠かったということもあり、最後まで挽回できなかったので、実際よりも舞台を遠く感じたし、稲穂も使いそびれたし、舞台がやけに広く感じられてしまった。
歌の迫力や、アンサンブルの力強く楽しそうな感じから考えれば、もっと舞台を「狭く」感じてもいい舞台だったと思う。
最後には、こきんは自分の分身義経を倒し(このときだけ、こきんのビジュアルが格好良くなっていたのはご愛敬だ)、胡蝶は何十年も前に蒸発した夫である将軍をやっと思い切る。
レキシーランドの従業員たちのストライキはうやむやになり、そこの扱いはどうかと思う。
しかし、それはそれとして、こきんとかおりこは、最後のアトラクションである縄文時代を体験して「名前がまだない」存在に何か意義を見いだしたようだ。
そして、大団円である。
明智と胡蝶とこきんで暮らす家に、かおりこがオープンカーに乗って迎えに来てドライブに行くシーンで幕である。
ミュージカルらしい終わり方で、カーテンコールも3回あった、と思う。
ここは「知らない」とか「判らない」ことはなかったことにして、この舞台のノリに乗った者勝ちの舞台だと思う。
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