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2019.06.22

「黒白珠」を見る

「黒白珠」
作 青木豪
演出 河原正彦
出演 松下優也/平間壮一/ 清水くるみ
    平田敦子/ 植本純米/ 青谷優衣
    村井國夫/ 高橋惠子/ 風間杜夫
観劇日 2019年6月22日(土曜日)午後1時開演
劇場 シアターコクーン
上演時間 2時間20分(15分の休憩あり)
料金 10000円
 
 ロビーではパンフレットの他、リピーターチケットが販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 シアターコクーンの公式Webサイト内、「黒白珠」のページはこちら。

 舞台は長崎である。
 真珠養殖会社社長の自宅、真珠を養殖している海岸、高台にあるレストラン、別の高台にあるグループホーム、20年以上前の長崎の教会が舞台上に点在し、ライトによって舞台平面が海面になったり道路になったりする。
 そこで、真珠養殖会社社長の22歳になる双子の息子が主人公だ。

 息子の内、一人は早稲田大学に通うヒカリで、一人は真珠養殖の仕事を始めたもののすぐに辞めてしまい、今はアルバイトもしていないイサムである。
 二人の母親は、二人がまだ赤ん坊のときに家を出てしまっている。
 二人の叔父にあたる男と駆け落ちしたのだと人々は噂するけれども、それが本当なのかどうか、二人には確認する術もない。父親も決して説明することはない。
 この「謎」が、この舞台の中心である。

 ヒカリが帰省しているときに、東京から父親を訪ねてどうにも怪しい男が訪ねてくる。彼は、二人の母親の知り合いで、彼女が脳溢血で倒れたことから身内を探して長崎まで来たらしい。母親とは「サークルで知り合った」「たまたま彼女が倒れたときに一緒にいた」と話すところが、さらに胡散臭い。
 しかし、ヒカリはあっという間に彼を信じ、一緒に東京に戻り、母親に会うことを決めてしまう。それが「謎解き」の始まりだ。

 イサムの彼女がなかなかの人物だったり、彼女は高台のレストランでアルバイトをしていたり、アロハシャツを着た年配の男がやけに社長一家と親しかったり、彼が娘のためにグループホームを用意していたり、そのグループホームにヒカリが母親を連れ帰ったり、その母親は脳溢血の影響で記憶が大分混乱していたり、何というか「謎が謎を呼ぶ」という感じで次々と胡散臭い物事が展開される。

 母親はどうして双子の赤ん坊を捨てたのか、二人が小学生のときに子猫を助けようと畳を上げていたら父親に殴られたのは何故なのか、母親と叔父は本当に駆け落ちしたのか、二人の父親はもしかして叔父なのか、双子の兄弟の葛藤を見ていると、「何だか若いな」という感想が浮かんだ。
 どうにもおばさん臭い感想で気が進まないけれど、そう思ってしまったものは仕方がない。若いというよりは青い。青いというよりは幼い。彼らの言動を見てそう思う私は随分トシを取ったものである。

 だからなのか、後半になってフラッシュバックのように20年前のシーンが挟まり始め、父親弟の顔にやけどを負わせてしまったことに負い目を感じていたこと、叔父は逆に兄を恨んでいたこと、叔父が母親を襲ったこと、母親が(多分弾みで)叔父を殺してしまったこと、その母親に向かって父親が「一人で逃げろ」「そうすれば叔父と駆け落ちしたということになり殺人はばれない」と説得したことなどなどが次々と判明して行く中、随分とストレートな展開だなと思っていた。

 ヒカリは父親が叔父を殺して床下に埋めたのだと信じ込んでいて、実際に床下を掘り返すところまで追い詰められていたし、イサムに向かって「そう考えればつじつまが合う」と掴みかからんばかりの勢いだったけれど、いや、それでは母親が我が子を残して家を去った理由は説明がつかないだろうとツッコミたくなった。
 何というか、一言で言うと、釈然としない。

 最後の方になって、「たまたま電話を立ち聞きする」という展開で、イサムの彼女の叔母が、母親を連れてきた男が入信者を集めようと、いわば詐欺を働くべく長崎に来ていたことも判明する。
 いや、いくら「家政婦は見た」を何度も引用していたとはいえ、ご都合主義すぎるでしょうというか、それは禁じ手でしょうと思う。

 そういえば、ヒカリは実は舞台冒頭で帰省してくる直前に大学を退学していて、そのことが明るみに出るのは、イサムの彼女が「東京の友達から聞いた」ことがきっかけになっている。
 大学4年生が大学を辞めたことが、そうそう親しくない人間に伝わるとも思えないし、数ヶ月たってから彼女の耳に入った理由も説明されないし(というか、彼女にその話を伝えたのが誰なのかということも特に示されない)、その展開はやっぱり禁じ手でしょうと思う。

 謎が謎を呼ぶとか、伏線を回収とか、大好物の要素がたっぷりだったし、実際「次はどうなるんだろう」と思い続け、かなり集中して見られたと思う。
 出演者陣も設定もかなり贅沢だ。
 ここはその贅沢さを存分に利用すべく、もう一ひねりというか、もう一段、判りにくくした方がカタルシスを感じられたんじゃないかなと思った。

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