「世襲戦隊カゾクマンⅢ」を見る
プリエールプロデュース「世襲戦隊カゾクマンⅢ」
作・演出 田村孝裕
出演 山口良一/熊谷真実/小浦一優/西山水木
岡田達也/曽世海司/塚原大助/上田桃子
梨澤慧以子/田中真弓
観劇日 2019年7月14日(日曜日)午後7時開演
劇場 赤坂REDシアター
上演時間 2時間15分
料金 4500円
ロビーでは、パンフレットやTシャツ、クリアファイルなどが販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
「完結編か」と噂のあった「世襲戦隊カゾクマンⅢ」の終わり方はかなり微妙だった。
どっちもありですかね、という感じで、テレビドラマだったら「映画を作りたいのね」という終わり方である。どちらかというと「世襲戦隊カゾクマンⅣ」がありそうな勢いだ。
数日前にチケットを予約していて、受付でお支払いして受け取った席が最前列だったのには驚いた。
その最前列の席に座ってみて、目の前30cmくらいのところに幕が下りていてさらに驚いた。
そこに映像が映し出されたけれど、近すぎるのと、端に近いせきだったので角度的に、映像の全部を見ることができない。ちょっとしたストレスである。
しかし、幕が開いてしまえば「近すぎる」と思った舞台までの距離は「近い」くらいになって、敢えていうと「何もかも見える」感じになった。
セットや衣装や小道具のあれこれも詳細に見えてしまうと、これがなかなかチープである。
もっとも、それは狙ったチープさなのだと思う。
彼らは「世襲戦隊カゾクマン」なのだから、当然、ショッカーと戦ったり、ミドラーという敵の頭目と戦ったり、空を飛ぼうとしたり、佐久間家を改造した巨大ロボに搭乗したりする。
それを小さな劇場でワイヤーアクションなどの助けも借りず、「還暦の誕生日が間近」という設定が普通な感じの年齢の役者さんたちが演じる訳で、そこは厳しいに決まっている。
その厳しさを、「チープ」なところと「真剣」なところとの合わせ技で切り抜けようとしている訳だから、実際のところ、役者さんはかなり微妙なバランスで演じているのではなかろうか。
幕開けは、山口良一演じる一家のお父さんであり「レッド」である一郎が、手と足を縄で縛られ、ちゃぶ台に座っているシーンである。
ミドラーに拉致され、改造人間にされそうになった寸前、岡田達也演じる男前男らしき声が響き、助けられる。
しかし、どうやら中途半端に改造が進んでいるようで、時折、暴れてカゾクマンを襲おうとする。
世襲で正義の味方を務めている佐久間一家は、どうやら地球防衛軍と出来高払いで契約しているらしい。
ここ2年ばかり敵であるミドラーが出没しないため、一家の家計は火の車である。
そこへ、一郎がミドラーに攫われ、ショッカーと戦うという「家計の足し」になる事件が起きる。
熊谷真実演じる3日後に還暦の誕生日を控えているお母さん「ピンク」は家計を考えてピリピリしているし、どうにも殺伐とした雰囲気の家族である。
カゾクマンなのに。
ⅠでもⅡでもそうだったけれど、カゾクマンの家族はあまり円満そうではない。
その原因は、兄夫婦ではなく(そういえば、上田桃子演じる兄の嫁が今回から「ピンク」として活動を始めていた。確か前2作では彼女は戦ってはいなかったような記憶だ)、妹夫婦にある。
梨澤慧以子演じるカリカリしている妹と、小浦一優演じるそのイライラに拍車をかけるような弱気な婿養子、というありそうでありそうな組み合わせだ。
一話完結なので前2作を見ていなくても楽しめますという宣伝文句ではあったけれど、例えば、Ⅱで嫁を助けて男前男が死んでしまったとか、Ⅱでは婿養子であるグリーンが倒した筈のイーゲンがさらに強くなっていたとか、これまでのお話を知っていた方が楽しめる仕込みも色々あった。
家族だし、家族なら当然「続き物」である。
レッドを助けた男前男だったけれど、実は彼はパソコン教室に2年通ったミドラーがプログラミングしたヘドラー(ミドラーの父)で、前作で命を助けられた嫁はその恩を返そうとしてまんまと敵の手に落ちてしまう。
しかし、その機に乗じて、レッドの改造人間化を阻止するにはモロヘイヤとリンゴ酢を混ぜて飲ませればいいと聞き出し、その秘策(?)を敵と戦う中で何とかして家族に伝えようとし、それを果たす。
「最後の瞬間は家で過ごしたい」と望んだレッドは、お母さんと元グリーンで今は地球防衛軍の司令官を務める「おちよさん」と共に家に戻り、ついでに夫婦の馴れ初めなども語られつつ、間一髪、モロヘイヤとリンゴ酢の力で改造人間化が阻止される。
ミドラーたちはミドラーたちで、イーゲンの下克上は失敗し、ミドラーが復活させたへトラーは防水加工していなかったために雨により弱って死に、巨大化したミドラーは、カゾクマン・ロボに乗ったカゾクマンたちの「家族が欲しかったんだよね」「友達になろう」という説得で破壊活動を止めたものの、アメリカ軍の攻撃により死んでしまう。
このカゾクマン・ロボには、佐久間家の血を引く人間しか乗ることができない、という設定が、何となく嫌な感じがするのは私だけなんだろうか。何故ここで「血」を持ってきたのだろう。
「世襲」だからなんだろうか。
カゾクマンたちはミドラーの墓を建て、そこにお参りして家に戻る。
カゾクマンたちが去った後、そのお墓を突き破ってミドラーの腕が伸ばされる。そこからはエンディングである。
エンディングでは、カゾクマンたちそれぞれの秘密が語られる。
浮気してたり、へそくりしてたり、大きなものから小さなものまで「秘密」と「嘘」を抱え、ミドラーが死んでしまったら彼らの職業「正義の味方」は必要ない訳で恐らくは明日からの家計の不安を抱え、幕である。
カゾクマンはあくまでもフォーマットというか枠組みで、カゾクマンが描こうとしているのは多分「家族」である。
今回は、「相手の家族を奪ってしまった」悔恨も語られている。しかし、あっさり説得されたミドラーには悪いけれど、どうもカゾクマンにはミドラー達に殺されてしまったメンバーはいないようで、相手の家族を奪っておいて「家族がいなくて寂しかったんだろう」はないだろうと思う。
「一郎ちゃんは優しいから」で済ませるのは豪腕過ぎる。
散々大笑いしつつ、でも、カゾクマンとしても家族の物語としても、何だか消化不良な感じが残った。
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コメント
みずえ様、コメントありがとうございます。
そうですね、キャラメルボックスの岡田さんを舞台で拝見できて嬉しかったです。
キャラメルボックスの今後はよく判りませんが、「仮面山荘殺人事件」はチケットを確保しました。
このお芝居を「家族の物語」として見ると、相当ブラックだと思うんですよね・・・。
相当ブラックな家族を描くために、「カゾクマン」という目くらましを使ったのかしら、と思うくらいです。
そう考えると「血縁者しか乗り込めないロボ」も、さらに輪を掛けてブラックな気がしてしまいます。
それはそれとして、大いに笑っても来たのですけれども(笑)。
またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
投稿: 姫林檎 | 2019.07.16 22:36
姫林檎さま
私も観ました。
私はキャラメルの岡田さんのファンなんです。
このシリーズは、Ⅰは見逃しましたが、Ⅱは観ています。
今回席は二列目でしたが、やはり映像は見にくかったですよ。
セットはⅡと同じでしたね。
岡田さんは、ガクトをイメージして、という指示でああいったスタイルだったそうです、言われてみればガクトっぽい?
強引なストーリー展開と無理アリアリな設定は、Ⅱと変わりませんでしたね。
ほんと、姫林檎さんのおっしゃる通り、仲がいいんだか悪いんだかわからない一家です。
妹夫婦は論外としても(妹の秘密は一番強烈でしたね)、長男夫婦も微妙ですよね……あの嫁、男前男のこと好きでしょ。
ラストに必ず出てくるロボは、毎回血縁者しか動かせないんでしたよね?
確かにあの設定は、ざらっとした違和感がありますね。
今回初めて観た人は、お千代さんが血縁てわからないんじゃないかな、なんて思いましたけど。
それに、お千代さんが引退したら、孫が成長するまで誰が操縦するのかしら、とも。
そんな細かいことを気にしないで楽しむ舞台ってことでしょうか。
投稿: みずえ | 2019.07.16 12:06