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「MATTHEW BOURNE'S SWAN LAKE」
演出・振付 マシュー・ボーン
美術 レズ・ブラザーストン
照明 ポール・コンスタンブル
音楽 ピョートル・チャイコフスキー
出演
ザ・スワン/ザ・ストレンジャー ウィル・ボジアー
王子 ジェームズ・ラヴェル
女王 カトリーナ・リンドン
執事 アシュリー・ジョーダン・パッカー
ガールフレンド キャリー・ウィリス
外
観劇日 2019年7月20日(土曜日) 午後5時30分開演
劇場 オーチャードホール
料金 13000円
上演時間 2時間30分(20分の休憩あり)
前回見たのが14年前である。
子供王子の出番がなくなったことと、今回はオケが入らなかったことが大きな違いだと思う(だから、14年前より2000円、チケット代が安いのだと思う)。
ネタバレありの感想は以下に。
相変わらず、「白鳥の湖」のストーリーをよく知らないまま見に行ってしまった。
14年前と比べると、公式サイトにあったあらすじを事前に読んでいたところが、我ながら少し成長しているところである。
いわゆる「白鳥の湖」が恋のお話であることは多分間違いないところだけれど、この「SWAN LAKE」がどうなのかと考えると甚だ自信がない。
逆に言うと、どうしてこういう翻案をしたのだろうと思う。
「SWAN LAKE」の最大の特徴は、「白鳥」や「オデット」を男性が踊ることではなく、物語の主題が女王と王子の母子関係のスライドされているところなのではないかと思う。
この王子、単なるマザコンじゃん!
どう見てももう立派な成年男子なのに、いつまでも「お母さんが相手にしてくれない」と嘆いていてどうする! と思う。
王子はかなり素直な人材に見える。
女王の言うとおりに「王子らしく」しようとするものの、「お母さん」に甘えたい様子もしばしば見せ、それがさらに女王の冷たい視線を増幅させているように見える。
女王は女王で、厳格かつ奔放という真逆の性格を合わせもった性格の女性のように見える。
母への反抗なのか、「絶対にお母さんには気に入られない」タイプの女の子をガールフレンドにして母に紹介したものの、パパラッチにハメられて醜聞写真を撮られてしまう。
そして、ガールフレンドが彼をハメたのだと誤解する。
湖で自殺しようとしたものの、SWANの舞う姿を見て惚れたのか、何故だか急に明るくなって自殺は取り止めにし、宮殿に帰るところで一幕が終わる。
この「SWANが舞う」ところがバレエとしては一幕の白眉で、何というか、もの凄くゆったりとした動きに見えた。
高いジャンプというのは、ゆったりした動きに見えるのだなと思う。
だから、後半になってSWANの動きにゆったりさが見えなくなってきた(ように感じた)のが凄く勿体なく思えた。
二幕は、舞踏会のシーンから始まって、こちらは「白鳥たちの舞」とは逆に女性陣の見せ場である。
むしろゆったりさとか優雅さではなく、技巧を見て! という風に感じられた。一人一人が得意技を見せていますという感じだ。
この辺りでも何となく思っていたのだけれど、「バレエ」というのは何を以て「バレエ」たり得るのだろうと思う。
バレエ特有の「動き」を取り入れていれば、それがバレエなんだろうか。
バレエだから(だと思うのだけれど)、「SWAN LAKE」にはもちろん台詞はない。
動きは表情でかなり色々な「台詞」を伝えてきているけれど、出演者たちが言葉をしゃべることはない。
それでも(あらすじという前知識はあったにせよ)ストーリーをこれだけ伝えてしまえるというのは凄いことだよなと思う。
その「ストーリーを伝える」振りや表情はでも多分「バレエ」の動きではない。不思議だ。
「SWAN」は人間の姿になって舞踏会に登場し、そこにいた女性達を次々に誘惑して行き、最後には(最初から狙っていた)女王を手に入れる。
そのことに逆上した王子が銃を持ち出してSWANを殺そうとし、その王子を取り押さえようとして執事とSWANも銃を持ち出して、王子のガールフレンドが巻き込まれて死んでしまう。
王子は、そのまま幽閉されたようだ。
幽閉された(ように見えた)王子は、何故か元の自分の部屋に戻っている。
そこに白鳥たちがやってきて、王子を攻撃し始める。何故だ! と思う。
白鳥たちに攻撃されている王子を、何故かSWANが庇おうとする。
バレエだから(だと思うのだけれど)、そこに説明はない。
私はとりあえずSWANが女王の歓心を買おうとしたのは、実は王子の関心を自分に向けるためであり、そういう行動を取ったSWANを仲間達が裏切りと解釈して、SWANを裏切らせた王子と裏切り者のSWANを攻撃している、と解釈した。
そういう風に見えたのだけれどどうだろう。
結局、SWANも王子も死んでしまい、死んでしまった王子に気づいて女王は嘆き、王子を抱いたSWANは満足そうに昇天していく,という風に見えた。
SWANを始めとする白鳥たちが踊っているときは、概ね相手を威嚇するような声を発していることが多い。
白鳥って意外と攻撃的だしなぁと思う。男性が踊ることで、よりそういう攻撃性が面に出てくるのかも知れない。
話が最初に戻るのだけれど、さて「SWAN LAKE」の翻案の狙いはどこにあるのだろう。もしかして、「白鳥の群舞を男性に舞わせたい」ということに尽きたんじゃなかろうかという気がする。
一幕の最後の湖での舞も、二幕の最後の王子とSWANへの攻撃の舞も、どちらも力強く、激しかった。
話が多分後先だけれど、この「SWAN LAKE」を見ていて、つかこうへいの「熱海殺人事件」がずっと頭の中でぐるぐると回っていた。
「熱海殺人事件」のラストシーンで、白鳥の湖の音楽が大音量で使われ、その中で木村伝兵衛部長刑事が哄笑しているからだ。
もしかして、つかこうへいは、白鳥の湖の白鳥たちの攻撃性を「熱海殺人事件」ラストシーンに相応しいものと考えていたのかしらと思う。あちらも、ある意味で母と子の物語でもあるしなぁと勝手なことを考えた。
正直なところ、大変申し訳ないことながら、「SWAN LAKE」のバレエとしての素晴らしさやテクニックの高さなどなどはよく判らなかった。
でも、「舞台」としてかなり楽しんだ。
贅沢を言うと、やっぱり音楽は生演奏が良かったなぁと思う。
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