「二度目の夏」を見る
M&Oplaysプロデュース「二度目の夏」
作・演出 岩松了
出演 東出昌大/太賀/水上京香/清水葉月
菅原永二/岩松了/片桐はいり
観劇日 2019年8月10日(土曜日)午後2時開演
劇場 本多劇場
上演時間 2時間5分
料金 7000円
ロビーでは、パンフレット等を販売していたと思うけれど、チェックしそびれてしまった。
ネタバレありの感想は以下に。
のっけからこういうことを書くのもどうかと思うけれど、見ているうちに、そういえば私は岩松了作・演出の舞台が苦手だったんだ、と思った。
どうして苦手なんだろうという疑問の答えは割とすぐ出た。
登場人物たちが全員揃ってエキセントリックだからだ。
ぼんぼんで田宮染物何代目かの社長を継いだ東出昌大演じる慎一郎も、水上京香演じる妻のいずみも、仲野太賀演じる慎一郎の後輩の北島、菅原永二演じる慎一郎の秘書の上野、片桐はいり演じる先代社長の代から田宮染物に勤めているらしい落合も、清水葉月演じる田宮家の別荘で家政婦として働いている早紀子も、岩松了演じる電気屋の遠藤も、みんな揃って、少なくとも私には判らないところに沸点があり、全く予想外のことで激高する。
できるだけお近づきになりたくない人々である。
慎一郎たちが結婚してから「二度目の夏」で、夏には必ずこの別荘に来ている、という設定のようだ。
新婚か新婚ではないかという話題は出ていたけれど、「結婚して二度目の夏」だって命じされてたかなぁと思う。
仕事で忙しい慎一郎は、後輩の北島に妻の相手をしてくれるように頼み、落合は北島といずみの仲が噂されることを心配している。
上野と早紀子はどうやら付き合っているらしい。
遠藤はなんだろう、落合のことが好きなのかも知れないけれど、存在意義も含めよく判らない人物である。
不安定な人々が、こういう不安定な設定の中に集まっているのだから、その場の空気が不安定というよりは不穏なものになるのは当然の帰結である。
実際、この「田宮家別荘」という場は、どんどん不安定になって行く。
別荘の敷地内に小川が流れていたり、池があったり、その池がボート遊びができるくらい大きかったり、お膳立てとしても「何かが起こる」要素がたっぷりだ。
いつの間にか、「この中で一人くらいまともな人がいるだろう」という感じで、できるだけ普通の人を探しながら見ていた気がする。
しかし、天然なのかわざとなのか「それは誘惑しているとしか言えないよね」という言動を見せるいずみも、先代夫婦を神格化している落合も、実は冷え切った夫婦に育てられたことを根に持っている慎一郎も、早紀子に対してDVすれすれの言動を見せる上野も、自分を小悪魔と信じて上野と北島を手玉に取ろうとする早紀子も、普通の気のいい大学生かと思ったらかなりの屈折を見せる北島も、やっぱりみんなお近づきになりたくないタイプである。
いずみと北島の関係はよく判らなくて、どっちが先に相手を好きになったんだろうなぁと思う。
ギターを抱えて、Fコードの押さえ方の見本を見せろと言ういずみは絶対に確信犯だよと思うし、実際に北島はそのまま泉にキスする訳だけれど、それは「乗せられた」のか「乗っかった」のか微妙なところだと思う。
その北島の慎一郎に対する感情は多分複雑で、コンプレックスと言えばコンプレックスだけれど、それが能力に対するものなのか、生まれ持った立場に対するものなのかは、これまた微妙だ。
ギターを抱え、池に入って行ったらしい北島を探して、慎一郎と上野は池にボートを出す。
ボートを漕いでいた上野が藻に絡まったサングラスを拾い、慎一郎はそれが、この別荘にたびたび遊びに来ていた盲目で犬を連れた女のものではないかと疑う。
果たして、彼女を殺したのは誰なのか。
誰かを疑った慎一郎がその場を離れるようにボートを漕ぐ上野に指示して幕である。
私は、彼女を殺したのは、「主人夫婦は中の良い夫婦である」という己の幻想を守るために落合が旦那様の不倫相手を殺したのではないかと思ったのだけれど、実際はどうだったのだろう。
そして、慎一郎は誰を疑ったのだろう。
会社も家族も別荘に集まっていた人々の人間関係も、これから一気に崩壊に進む予感だけを示して、この物語は時を止める。
何とも不穏かつ不安定な舞台だった。
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