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「ベルリン・天使の詩」
監督・脚本・製作 ヴィム・ヴェンダース
出演:ブルーノ・ガンツ、ソルヴェイグ・ドマルタン、オットー・ザンダー
クルト・ボウワ、ピーター・フォーク ほか
ドイツ・フランス合作映画
1987年劇場公開
今年(2019年)2月に、主演のブルーノ・ガンツが亡くなったというニュースが流れ、それでもう1回見たくなってすぐに購入したものの、なかなか見る機会がなかった。
半年もたって、やっと見ることができた。
懐かしい。
映画はモノクロで始まり、モノローグが続く。
会話らしい会話はほとんどない。時々、天使同士で「今日の出来事」を報告し合っているくらいだ。
天使たちが見下ろしているベルリンで暮らす人々の、誰にも聞こえていないモノローグが聞こえてくる。
舞台は「ベルリンの壁」がまだ崩壊していないベルリンである。
映画が公開された2年後、ベルリンの壁が崩壊されることになる。ベルリンの壁の間の緩衝地帯が上空から撮影されていたけれど、これって大丈夫だったんだろうか、それとも撮影の工夫でそれらしく見せたんだろうか。
ブルーノ・ガンツとオットー・ザンダー演じる天使たちは、何というか「務めを果たしている」という風情だ。
その淡々とした様子は、天使ってこんな人たちなんだわ、きっと、と思わせる。
髪を後ろで一つにくくっているのも、なかなかそれらしい。
彼らに天使の羽はないけれど、紛れもなく天使である。
ダミエルは、サーカスで空中ブランコを演じているマリオンに会って恋をし、相棒のカシエルに「人間になる」と宣言して、カシエルが止める間もなく人間になる。
彼が人間になった途端、それまでのモノクロから一転してカラー画面になるのが鮮やかだ。
しかし、カシエルの視点のときには、またモノクロに戻り、その差が際立つ。
カシエルは無言のまま、ダミエルを見守る。
その視線は、多分、優しい。
ダミエルは「人間になれた」ことが嬉しくて、スキップでもしそうな勢いで街を歩き、人に話しかけ、元天使の「刑事コロンボ」と語り合う。
彼に話しかけられたときに、ダミエルは差し出された手を握って握手をし、カシエルは少し離れた場所から視線を返すに留まる。
その差が、人間になった天使とならなかった天使の差であり、違いだ。
ダミエルはマリオンと再会し、あっという間にお互いに恋に落ち、二人は一緒に暮らし始める。
そこには多分、カシエルの「差配」があったのだと思う。
改めて見直して、邪気のないダミエルよりも、無言でアルカイックスマイルを浮かべるカシエルの方が何だか気になってしまった。
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