「御披楽喜」を見る
柿喰う客「御披楽喜」
作・演出 中屋敷法仁
出演 玉置玲央/永島敬三/大村わたる/加藤ひろたか
田中穂先/長尾友里花/福井夏/淺場万矢/とよだ恭兵
北村まりこ/村松洸希/永田紗茅/中屋敷法仁
観劇日 2019年9月14日(土曜日)午後2時開演
劇場 本多劇場
上演時間 1時間
料金 5000円
劇場にギリギリに入り、次の予定のこともありアフタートークも聞けずに劇場を後にしたので、物販関係はチェックしそびれた。
柿喰う客なので、豊富なラインアップだったのだろうと思う。
ネタバレありの感想は以下に。
何というか、非常に挑戦的な舞台だったという印象だ。
多分、結構えげつないことも語られていたと思うけれど、スタイルに追いつくことに必死で中味までは私の脳みそでは到達できなかった。
それがどんなスタイルなのかと言われると、私の中で一番近かったのは、第三舞台の「朝日のような夕日をつれて」の中に5人全員が壁を探りながら台詞を言い続けるシーンだ。あのシーンを1時間にわたって続けていた、という感じである。
強烈だ。
物語の舞台は、あったかも知れないしなかったかも知れない、美大の教授が亡くなってから13年後に行われた13回忌の法要である。
そこに、その美大教授最後の弟子であるゼミ生13人が集まっている。
ゼミ生のうち大学に残った一人が、「教授がその遺産4億を自分たちに託した。教授の出身地の自治体が20億を建設費用として出し、美術館を建設することになった。その条件は、我々13人の作品を美術館に納めることである。」と言い出す。
果たして、というところだ。
柿喰う客の舞台では、衣装は黒で統一されていることが多いイメージ(女体シェイクスピアシリーズの印象が強いからか?)で、今回の舞台も、場面が十三回忌法要ということもあって、全員が黒の衣装だった。
舞台の真ん中に櫓みたいなものが立っていて、その上にも照明、横からの照明を多用して光と影を作り出し、黒い衣装に身を包んだ役者にスポットライトを当てて浮かび上がらせる。
相変わらず「スタイリッシュ」というところを狙っているなと思う。
登場人物の名前が「角下都盛(かくしたつもり)」「比良木安示(ひらきやすじ)」だったり、13人がそれぞれ「13年前に死んでしまった」教授を演じて「あなたは13年前に死んでいるんですから」とツッコまれたり、その教授は実は殺人事件の被害者でその経緯は「前回公演で詳しく語られていますのでDVDを買って見てください、この芝居の中では説明しません」と宣言されたり、随所に遊びというのか、ちょっと気を抜けるシーンが用意されている。
そうでなければ役者さんたちも1時間もたないだろうし、見ているこちらの集中力にも限りがある。
本来、亡くなって12年目に行うべき十三回忌が13年後に行われているという設定からして「亜空間」的な扱いになっていて、これは架空の実際にはなかった場面なのだと言われたり、ゼミ生の一人が漫画として描いているシーンの一つであることになっていたり、時間も空間も現実もイマジネーションも自在に行き来しているようだ。
行き来しているというよりは、境目がなくなっているという方が相応しいかも知れない。
ゼミ生の生い立ちが語られたり、卒業後の進路が語られたり、美大やゼミに入った動機が語られたり、自分自身の才能についての思うところが語られたり、「思うようには生きてこられなかった」人生が次々に露わになって行く。
そこで語られている内容は、かなり凄惨だったりする。
教授の作品を「長死に」させるために建設されようとしていた美術館の資金は電源三法から出てきているのだと語られたり、世相も実は十分に反映されている。
そこを上手く「スタイル」で包み込んだ感じだ。
この芝居で語られていたのは、実は、「芸術」ではなく「お金」だったのではないかと思う。
最後、一列になってお焼香に向かう(のか?)13人の最後を歩いていた一人が「終わりで〜す」と気の抜けた声で宣言し、そのまま列の最後尾について全員が舞台袖にはけ、終演である。
もの凄い「置いてきぼり」感がある。
かなりモヤモヤしたけれど、これはアフタートークで「裏話」は聴かずに自分の中で消化したい(できるかどうかは別にして)という思いもあって、アフタートークは聴かずに劇場を後にした。
強烈だ。
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