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「ハケンアニメ!」
原作 辻村深月
脚本・演出 G2
出演 大場美奈/小越勇輝/市川しんぺー
三上市朗/菅原永二/町田マリー
幸田尚子/山内圭哉/小須田康人
観劇日 2019年11月9日(土曜日)午後1時30分開演
劇場 紀伊國屋ホール
上演時間 2時間15分
料金 7500円
ロビーではパンフレット等が販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
チラシでは、出演者のみなさんがピンクの衣装を着ていたけれど、実際の舞台上では誰もピンクの衣装は着ていなかった。
まぁ、当たり前である。
物語の舞台はアニメ制作会社のいわば「裏方」のポジションである。絵を描いているシーンはほぼ出てこない。
ハケンアニメの「ハケン」は「派遣」ではなく「覇権」で、あるクールに放映されたアニメのうち、一番売上を上げたアニメに与えられる称号なのだそうだ。
独立系のアニメ制作会社が舞台で、町田マリー演じるスタジオ・プロデューサーは次の作品の監督に、7年前に撮った第1作が異様に高い評価を受けた若手の「王子」監督を起用する。この「王子」というのが本名(名字)で、しかもイケメンという設定なのが可笑しい。
新入社員を演じかつ舞台の狂言回しを務めた大場美奈と「王子」を演じた小越勇輝は、多分舞台で初めて見ていて、声が通って聞きやすいのが何よりである。
そこへ、アニメ制作会社の社長を市川しんぺー、タイアップ等々を担うプロデューサーを小須田康人、作画監督を菅原永二、原画を描くアニメーターに山内圭哉、脚本を依頼した作家のマネージャー(というか、出版社の担当編集者)に三上市朗、作・演出がG2と、もう贅沢なことこの上ない布陣である。
まさに「盤石」の体制である。
しかし、舞台上も盤石だったらドラマにならない訳で、舞台上は波瀾万丈である。
王子監督はストイックな完璧主義で、「アニメの世界観」を守るためにあらゆることに手を尽くし、「経済的成功」を目指すプロデューサーの仕事を悉く否定する。
作画監督やアニメーターたちにもダメ出しを強烈に出し続ける。
「仕事を放り出したことがある」という実績がそこに加われば、軋轢が生じない訳がない。
その監督の仕事を全力以上の力でフォローしているのがスタジオ・プロデューサーで、彼女は何とかして監督の思うとおりの作品を作らせようと獅子奮迅の活躍をし、獅子奮迅の活躍をするために奔走する。
何だかんだ言いつつ、彼女の働きぶりと監督の作品を尊重している社長も、ときどき「やらかし」つつも作品の完成のために力を尽くす。
そこへ、肝心の監督が失踪してしまった訳だから、大問題にならない訳がない。
「ハケンアニメ!」というタイトルの芝居を50歳前後の役者さん(おじさん)たちが支えるというのは、意外な気もするし、実態に合った年齢構成なのか、実際のアニメ制作会社は若手が多いのか、その辺りはよく分からない。
何かを象徴しているのか、そういうことではないのか、象徴している先は「アニメ」なのか「「舞台」なのか。
いずれにしても、この舞台は、若者二人とそれを支える役者さんたちのバランスが見事で、そのバランスが抜群の安定感を生んでいると思う。
失踪した監督は1週間後に戻って来て「ハワイに行って来た」と言いつつ、チョコレートのお土産を配りつつ、全12話のうちシナリオのなかった9話分を絵コンテまで仕上げて戻ってくる。
スタジオ・プロデューサーの彼女は監督にころっと騙されたみたいだけれど、後になって社長とプロデューサー、作画監督の3人に「本当はどこにいたんでしょうね」とカラクリを知らされて地団駄を踏んでいる。
監督も彼女も可愛い。
そして、二人の可愛さを温かく見守る体制のおじさんたちもいい感じである。
新入社員の彼女とスタジオ・プロデューサーの彼女のアニメへの「愛」や、完成披露での監督インタビューや、放送終了の打ち上げの翌日のおじさん達の会話などなど、それこそ「泥臭く」テーマを語っている台詞が数々あって、急ぎすぎじゃない? と思ったこともあったけれど、それは多分、狙った泥臭さなのだと思う。
面白かった。
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