「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」に行く
2020年1月、江戸東京博物館で2019年11月19日から2020年1月19日までまで開催されている大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演に行って来た。
1月4日の午前10時半過ぎに到着したところ「混雑しています」の看板が出ており、チケット売り場も20人弱くらいの行列になっていた。
あと2週間弱だし、駆け込みで年末年始のお休みに来た人が多かったのだと思う。浮世絵って何だかお正月っぽい感じもある。
タイトルのとおり、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳の5人の浮世絵が展示されていた。
3人で1時間後に出口で待ち合わせしましょうと確認して見始める。
しかし、結構な行列で常に二重三重の列が絵の前を進んでいる感じである。
これは最初から見ていたら見終わらないだろうと思い、また入口付近は大抵混雑しているので歌麿を飛ばし、写楽のコーナーから見始めた。
写楽が最初に出した28枚の役者絵からの浮世絵が中心だった、と思う。
役者の特徴を強調しすぎるくらい強調し、顔は大きく手は小さく、背景は黒雲母刷という派手なシリーズである。
その筈だけれど、こちらが見慣れてしまったのか「ぎょっ」とするような感じは受けなかった。
むしろ、「こんなに小さかったっけ?」「意外と地味?」という印象である。
やはり悪役を描いた絵が楽しい。
何というか「写楽らしい」感じがする。
同じ浮世絵で別の美術館に所蔵されているものが2枚並べて展示されているものもある。
刷りの違いなのか、保存の違いなのか、色の残り方や背景の割れ方が全く違う。赤味の残り方で役者の顔の印象も全く違っていて驚く。
中でも、4 代目松本幸四郎の山谷の肴屋五郎兵衛は、2点で着物の色が違っていて、こういうのもあったんだと驚いた。片方は赤い着物、もう片方は青い着物だから、本当に違う。
私はどちらかというと青い着物の方が他の赤味(目元)が目立って格好いいんじゃないかと思った。
続いて葛飾北斎のコーナーである。
富嶽三十六景、諸国瀧廻り、諸国名橋奇覧、千絵の海から出展されていて、テーマは「水」のようだ。
こうしてみると、富嶽三十六景って水とともに富士山の絵を描いていることが多いのだなぁと思う。
以前に波の様子を高速カメラで撮ったところ、波しぶきの先端が北斎の描く波とほぼ同じ形をしていた、というテレビ番組を見たことを思い出した。
葛飾北斎の真骨頂は、その観察力にあるのかも知れない。
きっと、凄く目のいい人だったんだろうなぁと思ったりする。
そういえば、今、パスポートを作るとスタンプを押すページに富嶽三十六景が描かれているのではなかったろうか。
サイトを見ると、「神奈川沖浪裏」の説明として「世界で最も有名な絵」と書いてあり、だからこそのパスポートへの採用なんだろうなと思ったりした。
景色の浮世絵が多い中、数枚、植物を描いた絵も展示されていて、その中の芥子の花の絵には、この神奈川沖浪裏との構図の類似が指摘されていた。要するに、北斎はこういう構図が単に好きだったんじゃないかしらとも思う。
北斎の浮世絵は西洋画に大きな影響を与えたと言われ、一方で遠近法は恐らく北斎が西洋画から学んだもので、交流って大事、と思う。
前にドラマで北斎がラピスラズリを絵の具に使うというようなシーンがあったけど、版画にも使っていたのかしらなどとも思った。
もうこの二者を見ただけで30分以上が過ぎていたので、歌川広重の浮世絵は「葛飾北斎と同じ場所を描いた」という絵を中心に見た。
気のせいか、広重の浮世絵の方が色がくっきりと残っているものが多いように感じた。
元々、くっきりはっきりした絵を描く人なのかも知れない。
ついでに言うと、構図の選び方としては北斎よりもむしろ広重の方が好きかも、と思った。
極端な遠近の使い方というか、もの凄く近くにあるものとかなり遠くにあるものとを組み合わせている絵が結構ある。その極端さはかなり好みだ。
深川万年橋の亀をどアップで描き欄干の間から隅田川を望む絵なんて本当に好みである。
1時間では全然時間が足りなくて、結局、歌麿と国芳はほとんど見られず仕舞いだった、勿体ない。
もっとゆっくり見に行けたら良かったなぁと思っている。
しかし、お正月に浮世絵を見るというのもなかなかいい感じの新年の始まりだったわと思っている。
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