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2020.06.24

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」に行く

 2020年6月24日、国立西洋美術館で2020年6月18日から10月18日まで開催されているロンドン・ナショナル・ギャラリー展に行って来た。

 元々は2020年3月3日から6月14日まで国立西洋美術館で開催される予定で、新型コロナウイルス感染症対策のため、会期が延長になっていた。このまま国立西洋美術館では開催されなくなってしまうのではないかと心配していたので、開催されて嬉しい。

 6月18日からの会期では、事前に日時指定のチケットを購入する必要がある。
 当日券の販売はない。
 この先どうなるか分からないのだから、行けるときに行っておいた方が良い。
 週末のチケットは売り切れ必至だろうと、平日のチケットを購入した。実際に行ってみると「本日のチケットは完売」の掲示がされていた。

 日時指定ではあっても完全入れ替え制ではない。
 それでも、普段の週末に行くのとは雲泥の差で、じっくりゆっくり見ることができた。
 入口でのアルコール消毒を促され、マスクは必携(だと思う)、館内のベンチは一人置きに座るよう表示され(二人掛けのベンチは一人用になる)、ミュージアムショップは入口で入店者数を調整していた。

 ロンドン・ナショナル・ギャラリーがまとまった数の絵画を貸し出すことは今回が初めてだそうだ。
 今回来日した61点は全て「日本初公開」である。

 全体は、以下の構成になっている。

Ⅰ イタリア・ルネサンス絵画の収集
 この部屋の印象は「マグダラのマリアが目立っている」に尽きた。
 絵としては、「聖絵ミディ薄を伴う受胎告知」がくっきり鮮やかだし、大きいし、細かく描きこまれていて、目立つ。マリアにだけ届いている光が、ほとんど「円盤から発射されたビーム」に見えるところも面白かった。

Ⅱ オランダ絵画の黄金時代
 私が「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」に行きたいと思ったのは、フェルメールの「ヴァージナルノ前に座る若い女性」が初来日するからだ。
 その絵が、ここにある。
 何だか色々と描き込まれたごちゃっとした絵だな、という印象だ。その中で、若い女が来ている白い服の袖だけがやけに目立っている。
 フェルメールが一人の人間のつま先から(ドレスで見えない)頭まで描くのは珍しいのではなかろうか。

 もう一点の見どころが、レンブラントの自画像だと思う。
 何というか、初めて見る筈なのに「見慣れた自画像だ」という印象になるのが可笑しい。多分、レンブラントが何点も自画像を描いていて、かつ、どの絵も描かれた本人の年齢が違っていたとしても、「俺はひとかどの人物なんだ」というコンセプトが同じだからだと思う。
 今回来日しているのは「34歳の自画像」である。

Ⅲ ヴァン・ダイクとイギリス肖像画
 ヴァン・ダイクという画家は確かオランダ人だったと思うけれど、イギリスに長く滞在して肖像画家として活躍したそうだ。
 彼が「イギリス肖像画界」に与えた影響はかなり大きい、らしい。
 この人が描いた「レディ・エリザベス・シンベビーと アンドーヴァー子爵夫人ドロシー」は「妹が先に嫁に行くことになった姉妹」の絵で、そう説明されると何だか色々と想像できそうでありつつ、描かれた二人の女性は別にどろどろしたものを感じさせない風で良かったと思う。

Ⅳ グランド・ツアー
 18世紀のイギリスのお金持ちかつ身分が高い人々の間では、イタリアなどに若者を武者修行(というよりは、もうちょっとお金持ちな「可愛い子には旅をさせろ」的な雰囲気)に出すことが流行っていたそうだ。
 そうして外国に出た余裕のある若者たちは、お土産として現地の絵を購入したり、現地の文物と自分の絵を描かせたりして、イギリスに持ち帰ったらしい。
 ヨーロッパ大陸から離れたイギリスだから、外国への憧れ的なものも強かったのかしらと思う。
 多分、「吾こそは」という気概はその何倍も強かったに違いない。

Ⅴ スペイン絵画の発見
 遠い割に「お互い、海運と海軍で世界征服を目指している」ところで共感と敵愾心を持った国同士、という位置づけらしい。
 スペイン独立戦争にイギリスが参戦したことを契機に絵画面の交流も始まり、将であったウエリントン将軍をゴヤが描いた「ウエリントン公爵」という絵が小さくて地味な割に大きく扱われている。
 「裸のマハ」「着衣のマハ」を想像しているとうっちゃられる感じだ。
 ベラスケスにせよ、エル・グレコにせよ、私が持っているイメージよりずっと地味目の絵が来日していた。

Ⅵ 風景画とピクチャレスク
 一番よく分からなかった部屋である。
 理想的な風景って何なんだ、と思う。

Ⅶ イギリスにおけるフランス近代美術受容
 要するに(もの凄く乱暴に書くと)印象派である。イギリスで印象派の絵の収集が始まったのは20世紀に入ってからだそうで、人気がなかったんだなぁと思う。かつ、後発でこれだけの絵を集めたということは、20世紀初頭のイギリスは本当にお金持ちだったんだなとも思う。

 モネの「睡蓮の池」の絵が、「こんなに明るい睡蓮の絵は初めてかも」というくらい明るい印象で好ましい。
 ゴッホの「ひまわり」は、アルルでゴッホが描いた7枚のひまわりのうちサインを入れた2枚のうちの1枚だそうだ。ゴーギャンの寝室に飾られたというし、「会心の一枚」ということだと思う。モネの「睡蓮」とは別の明るさがある。ただ、こちらは、暗さを内包した明るさ、という感じがした。

 という感じで、1時間弱、堪能した。
 見られないかもと思っていた絵画展をじっくりゆっくり見ることができて嬉しかった。

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