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2020.12.10

「オリエント急行殺人事件」を見る

「オリエント急行殺人事件」
演出 河原雅彦
出演 椎名桔平/松井玲奈/松尾諭/室龍太
    本仮屋ユイカ/粟根まこと/宍戸美和公
    中村まこと/マルシア/高橋惠子
観劇日 2020年12月10日(木曜日)午後1時開演
劇場 シアターコクーン
上演時間 3時間(20分の休憩あり)
料金 11500円

 入場時に消毒と検温、ロビーのあちこちにアルコール消毒液が置かれ、カフェは閉鎖、物販も最小限となっていた。
 休憩時に天井までのガラスのドアが全開されていて、流石に寒く感じた。
 また、客席は「一人置き」ではなく販売されていたようだけれど、ぱっと見は6割から7割が埋まっているという感じだった。

 ロビーに「Keep Secret」と何故か英語で張り紙がしてあったことだし、ネタバレなしで感想を書こうと思う。

 オリエント急行殺人事件の公式Webサイトはこちら。

 ネタバレなしの感想はなかなか厳しい。
 「オリエント急行殺人事件」はアガサ・クリスティの作品の中でもかなり知名度の高い1冊だと思うし、その結末というかネタバレは結構有名な話なのではないかと思う。
 その「有名なネタバレをどう料理するか」がこの舞台(脚本)のポイントになっていると思う。
 そこに触れない感想というのはなかなか難しい。ついうっかり書いてしまいそうになる。

 舞台セットは、もちろんオリエント急行の車両である。
 今は、オリエント急行は廃止されてしまっていて、もう乗ることはできないんだよなぁと思う。
 そのオリエント急行の外側(ホームから見ている感じ)の車両1台分の壁があって、その奥にガラス越しに食堂車っぽいことが分かる。
 その車両(の壁)は上下に動くようになっていて、上に飛ばすともちろん食堂車の内部になる。
 キャットウォークがあり、食堂車の上に、寝台車両のドアが並んでいる。

 CGを全く使わない舞台はもはやほとんどないようにも思う。
 この舞台でも、窓の外の景色を表したり、列車が急停車して火花が散る様子を表したりと活躍していた。
 照明もスポットライトというよりは、ズームアップっぽいイメージで使われていたように思う。
 舞台が映像に寄ってきたのかしらと改めて思ったりした。
 生身の人間の横に登場人物の名前を映し出して紹介していたので、そういう印象を持ったのかも知れない。

 休憩前の一幕は殺人事件が起きる瞬間までを描き、休憩後の二幕はいよいよエルキュール・ポワロの推理が始まる。
 そして、エルキュール・ポワロの苦悩で幕を閉じる。
 オリエント急行殺人事件というタイトルだし、オリエント急行殺人事件を描いているけれど、そこにあるテーマは随分と変更されているように思う。
 オリエント急行殺人事件という余りにも有名な小説をモチーフにして全く別の舞台を作り上げた、という印象だ。

 私は小説のオリエント急行殺人事件のファンなので、この変更が最初は居心地が悪くて仕方がなかったけれど、二幕目の途中辺りから「これはこれでありだわ」と思うようになった。
 「どうしてアンドレニ伯爵が乗車していないんだ」という配役表を見た時点での疑問というか不満にも、この舞台は理由を用意している。
 でも、アーバスノット大佐はここまで不用心かつ抑制の効かないタイプではなかったのでは? という私の疑問への答えは見つからなかった。デブナム嬢のこの先が心配である。

 それはともかくとして、もちろん小説の筋を知らなくてもポワロのキザっぷりと推理を楽しめる組み立てとしつつ、小説の筋立てを知っている人向けの仕掛けというか、それを前提としたあれこれも散りばめられているように思う。
 「オリエント急行殺人事件」という小説を本歌取りした舞台、という感じだ。
 本歌取りなので、別ものである。そして、そのズレを楽しむのが本道という感じがする。

 開幕したばかりだったこともあってか、台詞を噛んだり(恐らく)間違ったりしているところがちらほらあったのが勿体ないと思う。
 推理劇なので、そこはきっちりしていた方が緊張感も高まる。
 椎名桔平のエルキュール・ポワロは見た目が格好良すぎると思う。何しろ原作では「ベルギー人の小男」である。小説とは別ものとしてもやはりそこはハロー効果の逆バージョンの意外性を追求して欲しい。
 とはいえ、全体的にしっくりと「イスタンブールからカレーに向けて走る国際列車に国籍雑多な欧米人が集まった」感じが醸し出されていたと思う。

 推理劇としては色々とツッコミを入れたくなりつつも、最後まで「どうなるんだ?」と楽しめる舞台だった。

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