「日本の歴史」を見る
シス・カンパニー公演「日本の歴史」
作・演出 三谷幸喜
音楽 荻野清子
出演 中井貴一/香取慎吾/新納慎也/瀬戸康史
シルビア・グラブ/宮澤エマ/秋元才加
観劇日 2021年7月15日(木曜日) 午後6時開演
劇場 新国立劇場中劇場
料金 13000円
上演時間 2時間50分(20分の休憩あり)
ロビーではパンフレット(1000円)が販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
「日本の歴史」を見に行った筈が、いきなりオープニングがテキサスでびっくりした。
「日本の歴史」というタイトルはブラフで、このテキサスにやってきて広大な土地を購入し牧場を始めようとする母と息子と娘の一家の物語が始まるのか、と覚悟したくらいだ。
舞台が進むにつれ、この一家の物語と「日本の歴史」が重ね合わされて行くことが分かりほっとする。
「因果は巡る糸車」的な歌で始まり、「歴史は暗記ではなく因果だ」と説明された割に、ピックアップされた「できごと」に因果はあまり感じなかったように思う。
私が「日本の歴史」に疎いせいだと思う。
覚えている限りで、卑弥呼、藤原仲麻呂と孝謙天皇と道鏡、平清盛、源頼朝と義経、織田信長と明智光秀、相楽総三と西郷隆盛、ちょっと戻ってG・B・シドッチと新井白石らが現れた。
彼らの間を、秋元才加演じる「先生」が歴史の授業を行いつつ繋いで行く。
時代がこれだけ飛ぶから当然場所は変わるし、テキサスの一家の物語と行き来するから外国になったりもする。
そこは、大きな布を左右からカーテンのように引いて来たり、上から岩に見立てた衝立のようなセットを落としてくることで登場人物の死を表すのと同時にその陰に隠れて舞台からはけられるようにしたりして、場所と時代を軽やかに切り替えて行く。
ただ、このカーテンによる役者さん達の登場と退場のときは時々、岩が落ちてきての退場のときはほぼ毎回、私がいた席から「登場」「退場」が見えてしまっていた。
新国立劇場中劇場は客席が横に広いので、余計に見切れたり見えちゃったりということが起きやすいのだと思う。
でも、そこは「どこの席から見ても楽しめる」ようにしてもらえると嬉しい。
このカーテンや衝立の陰に隠れて登場・退場をして、役者さんがどこから現れたのか分からないように見せるというやり方を最近よく見るような気がして、「ちょっとこればっかり使いすぎじゃないでしょうか」という気分がある。ただこれは私が見た芝居で私が持った印象で、ということなので、文句を言う方が間違っているとは思う。
それはともかくとして、場所と時代が変わったことを表すのは登場人物たちのみ。
セットはほぼない。ホルスタインの模様の箱が台になったり椅子になったりするくらいだ。
これもワンシチュエーションと言うんだろうか。
歴史上の「出来事」の間に「因果」を感じられなかった代わりに、テキサスの一家の物語とシンクロさせることで、個々の出来事の繋がりを表している。
そうすると、「日本の歴史」が一つの曲・物語として繋がるのと同時に、「日本の歴史」と「テキサスの一家の物語」が重なりあってあたかもハーモニーが生まれているようにも感じられる。
そういう風に考えて行くと、このラインアップと「解釈」は計算し尽くされている。凄い。
役者さんたちは総勢7人で、全員が一人何役もこなし、そして歌っている。
そして、歌が上手いって素晴らしいと思う。ハモるハモる。様々な組み合わせで様々な役柄としてハモりまくり、歌いまくる。
オリジナルの歌も耳に心地よく覚えやすいメロディで、中でもテキサスの一家のテーマソングのような歌が一番耳に残り、帰り道でつい口ずさみそうになった。
役者さんはみな歌が上手くて、ゆったりいい気分で聴いていた。歌詞もきっかりと聞き取れて嬉しい。
中でもシルヴィア・グラブの印象が強い。上手いし格好いい。他の役者さん同様、男役も女役もこなす。そして、彼女が演じた「卑弥呼」という役がこのミュージカルを一つの流れとして繋ぎ止める役割を負っていたように思う。
彼女と新納慎也のデュエットが特に格好良かった。
「テキサスの一家の物語」の最後のシーンは覚えているのに、「日本の歴史」の最後のシーンは覚えていない。
多分「テキサスの一家の物語」と「日本の歴史」のシーンが重なった第2次世界大戦のシーンが、「日本の歴史」の最後のシーンということになるのだと思う。
そして、ずっとこの「歴史の授業」を担当してきた「先生」が出産し、生まれた赤ちゃんは「いんが」という名前であると紹介され、様々な時代で登場したときの衣装に着替えた役者陣が揃ってポーズを決めて幕である。
楽しかった。
見られて、聴けて、良かった。
今回チョイスされなかった「日本の歴史」のできごとや登場人物が現れる別バージョンの「日本の歴史」も見たいよ! と思った。
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コメント
みずえ様、コメントありがとうございます。
みずえさんも今回初めてご覧になったんですね!
やっぱり、「日本の歴史」のタイトルで、いきなり「大草原の小さな家」みたいな始まり方で驚きましたよね(笑)。
「日本の歴史」の方は、私も、明治以降や、明治から江戸時代中期に戻った辺りで「誰?」「実在の人物?」と疑ったりしていました(笑)。
三谷さん、ごめんなさい(笑)。
男性陣の歌は、私は新納さん推しで聴いておりました。
やっぱり格好いい。
繰り返しちゃいますが、シルヴィア・グラブと新納さんとのデュエットがとにかく良かったと思います!
またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
投稿: 姫林檎 | 2021.07.20 22:57
姫林檎さま
私も観ました。
これは数年前の舞台の再演ですね。
私は前回獲れなかったので、今回観れて良かったです。
私も冒頭には驚きました。
ただ、このテキサスの一家のストーリーは、先がわからなかったので、むしろ日本の歴史より興味深かったです。
これだけで一本公演できたんじゃないかと思いました。
そして、日本の歴史の方は、あまり王道の歴史じゃないというか、こんな人いたの?という人も出てきたので、それはそれで面白かったけれど。
歌のシーン多かったですね!
特に女性陣、そして、姫林檎さんのおっしゃったとおり、シルビアグラブは素晴らしかった。
主役と脇役の区別のない舞台でしたが、彼女が主役のような存在感を放っていましたね。
ただ、男性陣は、歌のレベルにやや差があったような気がしますが……。
日本も誕生して長いので、確かにいろんなバージョン出来そうですね。
投稿: みずえ | 2021.07.20 13:02