「イサム・ノグチ 発見の道」へ行く
2021年7月3日、東京都美術館で2021年4月24日から8月29日まで開催されているイサム・ノグチ 発見の道に行って来た。
空きがあれば当日でも入れるが、事前予約が推奨されている。私は当日、30分前くらいにネットで予約してから向かった。どちらかというと、向かいながら予約した、というのが近い。
どんな芸術も「分からない」ながら、彫刻ってホントに分からないと思い、珍しくイヤホンガイドを借りた。
イヤホンガイドは2種類用意されていて、「何が違うんですか?」と聞いてみたら、片方は解説、片方は解説なしでBGMとして聴くように音楽が入っているらしい。
もちろん、解説の方を借りる。
展示は3フロアに別れていて、そのうちの「第1章 彫刻の宇宙」と「第2章 かろみの世界」では写真撮影がOKだった。ちょっと嬉しい。
そして「第3章 石の庭」で構成されている。
順路はなく、好きなように見て行けばよい。彫刻は壁際に並べられているのではなく、「点在している」という感じだ。なかなか好ましい。
入ってすぐは、とにかく「あかり」が圧巻である。
いや、「圧巻」という言葉からイメージされる重厚さというか重さはない。
むしろ、素材は紙だし、明かりが灯ったり消えたりして、いずれも柔らかな変化だし、下に敷かれた白い小石(白砂というには粒が大きいと思う)があって、ちょっとお祭りっぽい感じも、和室っぽい感じも、バルーンフェスティバルっぽい感じもある。
入口から見ると、その手前に「黒い太陽」が置かれていて、色といい素材といい、対照的だ。
いきなり、びっくりだ。
広い空間に主に金属で作られた彫刻が点在しているのもいい。
私が主にそういう作品に惹かれたからか、音声ガイドが多く取り上げていたからか、曲線で柔らかな印象が強い。
そして、タイトルが面白い。
「不思議な鳥」とか「ヴォイド」とか、名付けられている。
イサム・ノグチ氏のインタビュー映像が流されていた。
晩年の録画だったようで、失礼ながら「こういうお爺さんだったのか!」と思った。
そして、流ちょうに日本語でインタビューに応えていて、この作品タイトルたちも日本語で付けられたのかしら、それとも英語でつけて和訳されたのかしらと思う。
何というか、タイトルと一体として作品、という感じがする。
一方、展示としては、作品のすぐ近くには名前や製作年等の情報は表示されていない。
作品に近い壁に、フォルム付きで作品名や製作年や素材などの情報が表示されている。
こういう展示方法は初めてだ。
名前と一体だけれど、まずはそういう先入観なしで見て貰いたいということかも知れない。
結構好きな感じだったのがこちらのティーカップだ。
ティーカップも作っていたんだ! と思う。
もっとも、会場では、私は「片口」だと思って見ていた。口ではなく持ち手だったらしい。
そういう「誤解」もありだよねーと勝手に思う。
割と音声ガイドが「イサム・ノグチと日本との関わり」とか「アイデンティティ」等に焦点を当てていたので、それで発想が日本的な方に引っ張られたのかも知れない。
第2章の「かろみの世界」で真っ先に目に入るのは、この赤い遊具である。
ここだけ、色がある。(実際は違うけれども、そういう感じがする。)
遊具らしい。
今の公園に置けるかどうかは微妙かも知れないけれど、遊具である。
何だかもう、そう聞いてしまうと、よじ登ってみたくて仕方がなかった。よじ登るのは無理にしても、ちょっと触ってみたい。
つるつるして冷たい感じなのか、触ってみればざらっとして体温くらいなのか、気になる。鋼鉄製らしいから冷たいような気がする。
作品群の中で唯一実際に触れることができたのは、このソファとオットマンだ。
座ることができる。
だから誰かは必ず座っていて、人がいなくなるのを大分待って写真を撮った。我ながら執念深い。
もちろん、実際に座ってもみた。
座面が低くて、リラックスするためのソファという感じがする。許されるものなら寝転がってみたかった。
しかしこのフロアのメインは、「溶融亜鉛メッキ鋼板」を素材として作られた彫刻の数々である。
そして「雨の山」とか「マグリットの石」とか「原子の積み藁」とか「座禅」とか、哲学っぽい作品名が付けられている。
表面に浮かぶ模様は偶然に生まれるものらしい。
そして、ちょっと折り紙っぽい感じがする。
抽象的な作品名の作品が多い中「リス」の彫刻がなかなか可愛かった。このソファから見えるところに置かれていて、作品としてなかなかの特等席にいたのも良かった。
第3章の「石の庭」は撮影禁止である。理由はよく分からない。
タイトルのとおり、石を素材として作られた作品が置かれている。
割ったまま、石として在ったときのままっぽい、ざらざらデコボコしたところと、パッと割って磨き上げた真っ平らな面とが組み合わされている作品が多かった、と思う。
この石の庭の作品だけでなく、イサム・ノグチの作品って、本当に触って見たいという欲求を生むよなぁと思う。
触ったらもちろんいけない訳だけれど、触って見たい。触りたい。手触りを確認したい。
無題の作品が多かったのは、アトリエに残された発表していない作品だったからかなぁと思う。
会場では、香川県のイサム・ノグチ庭園美術館を紹介する映像が流されていて、益々行ってみたくなった。
閉館時間ぎりぎりまでいたので、ミュージアムショップに行く直前のところで、誰もいない「第1章」のお部屋を見ることができた。
静かだけど温かい感じがする。
こういうところを独り占めするって贅沢だろうなぁと思う。今、中に入りたい。
ミュージアムショップでは、イサム・ノグチがデザインしたというコーヒーテーブルや、明かりの数々が販売されていた。
かなり欲しくなったけれど、どちらも置く場所がない。
コーヒーテーブルは受注生産だそうだ。
私の一生の野望の一つに「イサム・ノグチのコーヒーテーブルと明かりが似合う部屋で暮らす」が加わった。
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