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2021.10.14

「狐晴明九尾狩」を見る

いのうえ歌舞伎 「狐晴明九尾狩」
作 中島かずき
演出 いのうえひでのり
出演 中村倫也/吉岡里帆/浅利陽介
    竜星涼/早乙女友貴/千葉哲也
    高田聖子/粟根まこと/向井理 他
観劇日 2021年10月14日(木曜日) 午後1時開演
劇場 赤坂ACTシアター
料金 14800円
上演時間 3時間10分(20分の休憩あり) 

 ロビーではパンフレットが販売されていた。パンフレット以外の物販があったかどうかはチェックしそびれた。
 新感線の芝居で必ず配られる配役表は、今回はネットからダウンロードしてくださいという形になっていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 「狐晴明九尾狩」の公式Webサイトはこちら。

 久々の新感線である。
 赤坂ACTシアターも久しぶりで、席に着き、M列でこんなに舞台が近かったのか! と感動した。
 オープニングの音楽と発車ベルのような開幕ベルも懐かしい。嬉しい。
 本当に何もかもが嬉しい。

 そして、満を持してと言っていいか分からないけれども、中村倫也演じるのは安倍晴明である。
 安倍晴明を主役に据えたいのうえ歌舞伎が面白くならない訳がない。
 カーテンコールの連続で最後はスタンディングオーベイションになったから実際は10分くらい押していたけれども、新感線の本公演としては当初予定の上演時間が3時間ジャスト(20分の休憩あり)は短めの方だと思う。その分、ド直球のストーリーになっていた。

 大陸から、九尾の狐が日本にやってきた。
 安倍晴明と彼の盟友の姿をした九尾の狐は戦い、最後に安倍晴明が盟友の力も借りつつ勝利を収める。
 しかし、安倍晴明は九尾の狐から「喜怒哀楽の全てを感じなくなる」という呪いを受ける。
 あらすじだけを追うとこんな感じである。もちろんもっと登場人物は多いし、様々に絡んでくる訳だけれども、大筋はほぼこうなる。

 正直に言うと、そのド直球が少しばかり物足りなくも感じた。
 向井理演じる賀茂利風の正体が「九尾の狐」であるとサイトで読むんじゃなかった! と始まった瞬間に思っていたら、かなりあっと言う間に(少なくとも晴明と観客には)明らかにされたし、敵味方のひっくり返り方がわりと分かりやすく予測がついたし、いつものしつこいくらいにたたみかけるどんでん返しがあっさり味になっていた。
 でも、やっぱり「いのうえ歌舞伎」は「いのうえ歌舞伎」で外連味たっぷりである。

 中村倫也がまた、役者さんにこの言い方はどうかと思うものの、芝居っ気たっぷりで新感線の舞台にしっかりどっぷりハマっている。楽しそう過ぎて、その楽しそうな感じを見ているだけでこちらも楽しくなってくる。そういう感じだ。
 向井理は、もはや悪役の方が似合うのかも知れない。こちらの思い込みなのか、殺陣のシーンになると頭の中でカウントを取っている雰囲気を感じてしまう一方で、全身から醸し出される品の良さが本物っぽくていい。

 ほぼ一貫して対立していたこの二人が直に刃を交えるシーンは少なくて、本当に最後の最後、後ろから襲った九尾の狐の剣を晴明が振り返りもせずに払っていたように見えて、思わず「嘘でしょ」と叫びそうになった。
 私の見間違いじゃないと思うのだけれど、もう少し「見せ場」にしても良かったような気もするし、あのあっさりした流れはやっぱり私の勘違いなのか、と今でも??? と思っている。とにかく格好良かった。

 ラストに至るまでのこの舞台の殺陣の見せ場は、中村倫也と、敵である九尾の狐を追って大陸からやってきたのに何故かその九尾の狐に汲みした狐の霊であるところの早乙女友貴が担っていたように見えた。
 この弟狐がいつまでたっても九尾の狐の正体に気づけないのは、この殺陣の見せ場を作るためだったんじゃないかと邪推したくらいである。
 それはそれとして、新感線の舞台にこの単純莫迦というキャラ(褒めてます)は不可欠だ。

 狐の霊の単純莫迦がこの弟狐だとすると、人間の方は竜星涼演じるところの悪平太がその役目を一身に背負っている。
 「修羅天魔」で竜星涼を見たとき、彼は凄く綺麗な太夫だったのに・・・、と何度か見直してしまった。化けてる。どっちがより「化けてる」のかは分からないけれど、とにかく化けてて意外すぎた。意外と役者が歌うシーンが少なかったこの芝居で彼はがっつり歌っていて、そういう意味でも大活躍である。

 弟がいれば姉か兄がいる訳で、この舞台の笑いは割と姉狐を演じた吉岡里帆が産んでいたようにも思う。
 何故か戦っているシーンで彼女が動いていないように見えてしまい、それが勿体なかったと思う。

 粟根まこと演じる左大臣が「こいつ絶対だめな奴!」と思っていたら本当に腹黒くてとんでもなかった一方で、割と敵役ど真ん中を担うことが多くなっている(と思うのは、コロナ禍で五右衛門シリーズを何度も見直したせいかも知れない)高田聖子演じる天皇の母が最後にやけに物分かりのいい様子を見せたことが意外だった。
 頭盛りすぎだけど、この女、いい人じゃん、という感じだ。
 この「天皇の母」が「安倍晴明」を評して「あのふにゃっとしてしゅっとしているところが」と言っているのが、まんま中村倫也を上手く表していて可笑しい。

 「ひたすら実直な検非違使」の浅利陽介と、何だかやけにいい人っぽい「蘆屋道満」の千葉哲也は、はまり役というよりは、彼らがいたからこそこの役が生きたというか生まれたというか、作ることができた、という感じである。
 それと同時に彼らの役は映画の「陰陽師」へのオマージュなのかなという風にも思った。

 とにかく新感線である。
 エンタメ上等である。
 堪能した。

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