「ザ・フィンランドデザイン展」に行く
2021年12月24日、Bunkamura ザ・ミュージアムで2021年12月7日から2022年1月30日まで開催されているザ・フィンランドデザイン展に行って来た。
土日祝日は時間指定の予約制を採用しているが、平日はそういった制限はない。金曜日の午後3時頃という時刻だったせいか、場内はゆったりしていて、マイペースでゆっくり見ることができた。
フィンランドの50人前後のアーティストの作品が、1890年台のアアルトに始まって年代順に展示されている、いってみればシンプルな美術展である。
その「デザイン」の範囲は幅広く、ガラス製品、陶磁器、家具、ファブリック、テーブルクロス、ドレス、ラグ、おもちゃまである。
「イッタラ」「アラビア」「マリメッコ」とメーカー名は知っていても、それぞれで活躍してきたデザイナーの名前は全然知らないし、その存在を考えたこともなかったよ、と思いながら見る。
デザイナーの一人一人(全員ではなかったかもしれない)の顔写真がその作品の近くに飾られ、デザイナー本人についての説明が作品の説明よりも長いくらいに丁寧に書かれている。面白い。
スタッキングがしやすいように収納しやすいように考えられたガラスの食器や陶磁器の食器が並んでいる。
ガラス製品では、大量生産のときにできやすい気泡が目立たないようにという点が工夫されているそうだ。その工夫がそのままデザインに直結している。
また、結核患者が呼吸をしやすいように背もたれの角度を調節した木製の椅子があったりする。
機能性を追求しつつ、あるいは、機能性を追求したからこそ、そのデザインは「洗練されている」という印象を強烈に残す。
だからこそ、日常生活ではあまり聞くことのない、工業製品のデザイナーの名前がここまでしっかり残り、確認できるようになっているのかなと思う。
一方で、花瓶などのガラス製品や「布」は、実用性や機能性よりも「自然を写す」ことの意識が強い作品が展示されていたように思う。
北極圏にも入るフィンランドでは、夏はとことん日光を楽しみ野外を楽しむ。トーベ・ヤンソンが夏の休暇を過ごしているときに、家族(弟だったかも)が撮ったという写真は、開放感に溢れている。
冬をテーマにした写真は、雪の結晶をアップで撮っていたりして、むしろ、内へ内へと入っていく感じがある。
割とそういう「日常的に使うもの」である展示が多い中、ビーズで作られたシギのオブジェが面白かった。
ビーズと陶器に文字盤が描かれた時計を組み合わせて、田んぼに立っていそうな鳥のオブジェが作られている。
一般家庭には置けなさそうな大きさの置物で、これはある程度以上の広さがあるところに置いてこそ映えるんだろうなぁと思う。冬は家に押し込められてしまう北欧のおうちは、もしかしてこのオブジェを普通に置ける大きさのお宅が多いのだろうか。
ムーミンの絵があったのも楽しかった。
病院の壁に飾られた絵で、ムーミンと仲間たちが楽しげに階段を上がっているような絵だ。この絵を病院の階段の壁に置き、子供たちが絵を見ながら楽しく階段を上がって診察室に辿り着く、というものだという。
どこまでも実用的な発想だ。
同時に、何しろムーミンである。心楽しくなる工夫でもある。
ところで、自分でも意外だったのは、ミュージアムショップで物欲がほぼ生じないことだった。
食器や布製品など品数は少ないながら揃っていたのに、「これは欲しい!」というものが見つからなかった。
フィンランド展だし、ミュージアムショップで爆買いしたくなったらどうしようと少しばかり心配していたところ、全く無用の心配に終わった。
がつがつ見るのではなく、雰囲気や、フィンランドデザインに囲まれるという気分を味わう美術展だったと思う。
ゆったり味わった。
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