「奇蹟 miracle one-way ticket」を見る
シス・カンパニー公演「奇蹟 miracle one-way ticket」
作 北村想
演出 寺十吾
出演 井上芳雄/鈴木浩介/井上小百合
岩男海史/瀧内公美/大谷亮介
観劇日 2022年3月19日(土曜日) 午後6時30分開演
劇場 世田谷パブリックシアター
料金 10000円
上演時間 1時間50分
ロビーではパンフレットが販売されていたと思う。ギリギリになってしまったのでチェックしそびれてしまった。
ネタバレありの感想は以下に。
タテホコ(字は映像で映し出されていたけど忘れてしまった)医師を演じる鈴木浩介が舞台に「語り手」として登場し、状況説明を始める。
客席から「鈴木!」と呼びかけがあったかのような台詞を言ったり、もう最初からメタな雰囲気満載である。
しかも、この芝居は時空をまたぐ、みたいなことも言っている。のっけからそんなことを言われてもついて行けない。それは多分、承知のことなんだろう。
いかにも「書き割りです」という感じのセットで、井上芳雄演じる男がベッドに横たわっている。
ここはホテルでも自宅でもないらしい。
タテホコさんが、相棒である法水探偵を紹介する。何しろ、登場時に探偵は寝ているのだから仕方がない。法水麟太郎探偵のシリーズを読んでいればこの設定だけでクスリと笑えるんだろうなぁと思う。私は名前しか知らない。
そのうち探偵が目覚め、記憶喪失に陥っていると判明してから、物語世界の中の情報がどんどんあふれ出してくる。
そこのベッドに横たわっていた男性は探偵である。タテホコ医師とは、シャーロック・ホームズとワトソン医師のような関係らしく、実際に彼らはそう呼び合っている。
探偵は、誰かから何らかの依頼を受けてこの場所に来ており、しかし記憶喪失になっていて、依頼者も依頼内容も不明。どうも、このロッジの持ち主らしい老人が依頼者らしく、その老人の孫娘が倒れていた探偵を発見して助けたらしい。
舞台上の役者さんたちがみなさん滑舌のいい聞きやすいくっきりした台詞をしゃべっていて、もうそれだけで気持ちいい。
気持ちよすぎて、どうにも彼らがしゃべっていた内容をきちんと聞けていなかったような気がする。
老人はプラズマを実用化させて会社経営に成功して大金持ちとなり、その会社を人に譲ってこのロッジのある辺りに隠居したようだ。
そこで、孫娘と二人で暮らしている。
老人は教会の世話役のようなものを務めているようだ。
老人はここに来る前、秋田に住んでいたときも同じく教会の世話役のようなものを務めていて、その教会ではいつだか分からない過去に両手に聖跡を持つ女性信者がいたらしい。
その秋田の教会とこの地にある教会の牧師(神父だったかも)は同一人物らしいし、女性信者がいた時の牧師(または神父)と今この地にいる牧師(または神父)は同一人物らしい。
この地の教会は、入ったら絶対に出てこられなさそうな「迷いの森」の奥にあり、実はこの迷いの森や教会である洞窟はすべて、老人がプラズマで作った物であるらしい。
そういう感じで「らしい」情報が次から次へと法水探偵の推理として語られて行く。
記憶喪失でも推理はできるそうだ。
記憶喪失といえば、法水探偵が突然「もしかして僕は歌が好きだったんじゃないか」とか言いながら歌い出したときには笑ってしまった。
この場合の「僕」は誰だろうね、と思う。
また、井上芳雄がかなり歌い方をミュージカルに寄せて歌うので、余計におかしい。
この「歌好きの法水探偵」が設定で最初から脚本に書いてあったのか、演出なのか、気になる。
台詞がくっきりと伝わってくるので、台詞の中身もくっきりしているとうっかり勘違いしそうだけれど、実際にこうやって断片的に並べてみると、実はよく分からないよなぁと思う。
不条理とまでは言わないけれど、舞台の上で時空はさりげなく割としょっちゅう飛んでいる。
孫娘は実は老人と血のつながりはなく、牧師(または神父)と結婚しようとしているらしく、そしてこの二人の男女の目的は、聖跡を持つ女性を偽物呼ばわり(呼ばわりはしていないが、認めなかったというだけで許せないようだ)したバチカンの転覆らしい。
しかし、どうやって?
聖跡を持つ女性は、このプラズマで作られた教会の祭壇にホログラフィで再現され、マリア様としてあがめられている。
このホログラフィも老人の発明の一つらしい。
そこに現れるマリア様はホログラフィであるという舞台上の設定で、実際は、そこに女優さんが立っている。
この舞台全体で本をめくるような音をさせつつ映像を切り替えて場面転換を行ったり、映像で「ゴオー」みたいな文字を出し音響でその音を出す、みたいな演出を行ってきた理由は、多分、彼女をホログラフィだと強調するためなんじゃないかという気がする。
タテホコ医師の(狂言回しとしての)説明によると、法水探偵は、牧師(または神父)と(偽)孫娘が企てていた事件を事前に阻止したらしい。
そうあらかじめ説明されてから、タテホコ医師言うところの「クライマックス」を見たにもかかわらず、どんな事件が起きようとしていて、法水探偵がそれをどうやって阻止したのか、私には全く分からなかった。
キシなんとかというクスリを注射して二人の男女を失神させ、失神している間に探偵と医師が逃げることで、自分たちを殺そうという殺人事件を事前に回避したということなんだろうか?
よく分からなかったけれど、最後は井上芳雄が歌い、井上小百合がサックスを吹き、何だか大団円っぽく終わった。
だから、大団円なんだと思う。
妙で不思議な舞台だった。
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コメント
みずえ様、コメントありがとうございます。
うん、何が謎なのかわかりにくいお芝居でしたよね。
これって推理劇? と思いました。
私は「法水麟太郎」という名前「だけ」見覚えというか聞き覚えがあっただけなので、「知っている」には入らないと思います(笑)。
私もなかなか観劇に行けておりませんが、またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
投稿: 姫林檎 | 2022.03.24 23:12
姫林檎さま
私は昨日観ました。
井上芳雄さんが感染して初日が延びたので、無事観られるかドキドキしましたよ。
私は「法水麟太郎」を知りませんでした、姫林檎さんは知ってらしたのですね。
推理作家の法月綸太郎さんは好きなのですが、ここからのペンネームなのかな、とどうでもいいことを考えてしまいました。
正直に言いますと、思っていたのと全然違うタイプの舞台でした。
もっとよくあるタイプの謎解きが繰り広げられるのかと思っていたのに、まさかのバチカンにマリア様!
確かに、探偵が突き落とされたり、プラズマを生み出した老人と娘は血縁関係がなかったりと、ミステリーっぽい要素はあるけれど、いわゆる推理ものとは違うような……。
ただ、私が一番びっくりしたのは、この娘と牧師が婚約していたことかも。
年違い過ぎる……。
でも、セット(プロジェクションマッピングでしたよね)が面白かったし、井上芳雄さんの歌も聴けたので、満足です。
投稿: みずえ | 2022.03.24 11:04