「神州無頼街」を見る
劇団☆新感線42周年興行・春公演 いのうえ歌舞伎「神州無頼街」
作 中島かずき
演出 いのうえひでのり
出演 福士蒼汰/松雪泰子/高嶋政宏/粟根まこと
木村了/清水葉/宮野真守 / 他
観劇日 2022年5月4日(水曜日) 午後2時開演
劇場 東京建物 Brillia HALL
料金 14800円
上演時間 3時間20分(20分の休憩あり)
ロビーではパンフレット等のグッズが販売されていた。終演後の販売はなかったので、早めの購入が良さそうである。
ネタバレありの感想は以下に。
2020年に上演が予定されていて中止になった「神州無頼街」が、2022年に(多分、ほぼ予定していた出演者陣で)上演された。
そもそも、そこからして凄い。
主演の福士蒼汰と宮野真守は、髑髏城の七人 シーズン月の「上弦の月」「下弦の月」でそれぞれ主演し、かつ「神州無頼街」の上演が予定されていた期間に、出演者が3〜4人の小規模な公演でそれぞれ主演していたものの、同じ舞台に同時に立つのは初めてである。
何だか、それだけで伝説的だ。
タイトルの「神州無頼街」がそのままこの芝居の舞台だ。
高嶋政宏演じる身堂蛇蝎、松雪泰子演じるその妻・ 麗波、木村了演じる息子の凶介、清水葉月演じる娘の揚羽の4人が、次郎長親分の全快祝いの宴に乗り込んできて、集まっていた親分衆を軒並み毒殺する。
その場におらず無傷で生き残った、福士蒼汰演じる医者の永流と、宮野真守演じる口出し屋の草臥が、それぞれの理由で、この4人が根城とする神州無頼街に乗り込んで行き、果たして、という物語である。
カチカチ山と浦島太郎のときも思ったけど、この神州無頼街というお芝居は、さらにパワーアップしてこの主演の二人に当て書きしている感じがある。
生真面目な永流とお調子者の草臥というキャラが際立つし、それぞれの役者に合っている。
こう言っては何だけれど、どちらも可愛い。
あらすじは公式サイト で見ていただくとして、いのうえ歌舞伎だから、もちろんあちこちに伏線を張りまくってあるし、「実は」という正体も主要キャラの全員が持っているという念の入れようだ。
流留は、「シレンとラギ」や「蛮幽記」にも登場していた狼蘭族という殺人を生業とする一族の人間だし、草臥は実は元公儀御庭番である。
蛇蝎は天皇を守ってきた忍びの頭領だったし、凶介は草臥の元同僚、揚羽は和宮の替え玉にされかかっていた娘だし、何より、麗波が永流の父親だったとか、仕込むにもほどがあるという仕込みぶりだ。
しかし、これこそがいのうえ歌舞伎の真骨頂である。
「実は」という過去を持たないのは次郎長親分とその子分達だけ、という案配だ。
あと、神州無頼街で暮らす市井の(と言っていいのか)人々も、これまでに色々と苦労をしてきつつも「実は」という正体はなさそうである。
草臥の元同僚であるくノ一達も、くノ一になった過去はともかくとして、なってからはお庭番としてひたすら掃除をしていました、というのだから、裏はないと言えるかも知れない。
いずれも、たくましい人々で、そのたくましさを劇団員のみなさんがきっちり強かに固めている。
これだけのお膳立てを、歌あり踊りあり殺陣ありで大団円とは言えないと思うけれど、とにもかくにも永流と草臥が、京都に毒虫を撒いて火を付けてその混乱に乗じて帝をさらってくるという蛇蝎の企てを阻止し、そうしてさらってきた帝を殺すという麗波の企ても阻止し、燃え尽きた神州無頼街で生き残った赤ん坊を二人で育てようという前向きなラストシーンにまで持って行く。
クライマックスの連続といったお芝居である。息つく暇もない。次にどういう展開になるのか目が離せない。楽しい。
そして、この芝居はまだまだ進化し続けそうな気がする。
全力で楽しんだ。
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