「2020」を見る
パルコ・プロデュース2022「2020」
作 上田岳弘
構成・演出 白井晃
出演 高橋一生
DANCER 橋本ロマンス
観劇日 2022年7月17日(日曜日) 午後1時開演
劇場 パルコ劇場
料金 10000円
上演時間 1時間25分
ロビーで物販等があったと思うけれど、チェックしそびれてしまった。
ネタバレありの感想は以下に。
何とも難しい芝居だったなぁというのが最初に浮かぶ感想である。
そもそも、「これって芝居なのか?」とずっと思って見ていたような気がする。
どうしてそんな風に思うのかとつらつら考えて、高橋一生がずっと客席に向かってしゃべっているからだということに気がついた。
芝居で、役者が客席に向かってしゃべるのは、当たり前といえば当たり前である。
どうしてそこに違和感を感じるのかといえば、何というか、会話の相手がずっと客席(にいる「あなたたち」)だったことだと思う。
ずっと演説を聴いているように感じられた。
それでも、高橋一生が高橋一生としてしゃべっている訳ではなく、高橋一生は客席を相手にずっとしゃべり続ける役を演じているだけである。
それに、多分、客席にいる人間を「人類で最後に残った自分以外のあと一人」に見立てているだけで、客席にいる人間が「相手役」である訳ではない。
そこまで分かっても、やっぱりずっと違和感を感じていたように思う。
そこが「難しい」と思った。
「新型コロナウイルス感染症」という単語は恐らく1回も口にされていないけれども、この芝居は明らかに「新型コロナウイルス前」と「新型コロナウイルス後」を語っている。
その境目が2020年という設定である。
私の中では新型コロナウイルス感染症が最初に確認されたのは「2019年12月」だけれど、日本で最初に感染者が確認された2020年1月を起点ににしたのだと思う。
10万年前のクロマニヨン人が狩りをしているところから、20世紀まで一気に時代を飛んで1970年代の「赤ちゃん製造工場」の工場主になり、「最高製品」を生み出した胡散臭い社長(CEOと呼びたい感じ)になり、そして転生(何故か「生まれ変わりを繰り返してきた」のではなく「生まれ直しを繰り返してきた」と表現していた)を繰り返して、最後の二人のうちの一人になった2730年までを見せる。
その間には、映像も多用されているし、ダンサーの女性と踊り、マイクを握って歌も歌う。大サービスである。
映像を使い、芝居の間に歌が入り、ダンスが入る。何だか小劇場っぽい造りだと思ったりした。
しかし、そこに「祝祭」はない。
祝祭が必要とされているかどうかは分からなかったけれど、この芝居に「祝祭」感は全くなかったと思う。
マイクは、歌うときだけ使っていた訳ではなくて、最初からマイクを使って台詞をしゃべっていた。
その音声がちょっと不自然に思えたのも、違和感を感じた理由かも知れない。もしかしてマイクを使わない舞台の方が少ないのかも知れないけれど、マイクを使っている舞台でも、もっと「マイクを使ってなさそう」なマイクの使い方をしているように思う。
恐らくは、わざと「マイクを使った声」に聞こえるように調整していたのではなかろうか。何故だろう。
やはり、難しい。
「人類の最後の二人のうちの一人」ではあるけれど、そのもう一人は、人間の集合体というか、「肉の**(**が何だったか思い出せない。海だったか?)」と呼ばれていたから、もはや人間ではないのかも知れない。
その頃は、人間は改造しまくって「完璧」になることが普通で、でも彼はその改造を拒否して不完全なまま生きていた、という設定になっている。
完璧な人間というのは、多分、間違ったことしかしないんだろうなぁと思う。
彼はずっと「自分は人間だ」と言い続けていたけれど、何となく、彼は人間ではなく、自分を人間だと信じているAIのようにも見えた。
いや、AIが自分を人間だと信じることってあるんだろうか。よく分からない。
とにかく、彼は人間ではなく、生きている訳でもなく、機械であるような感じがした。
人間はとっくの昔に滅びていて、彼はしかし「人類はまだ滅びていない」という夢を見続けている機械のように見えた。
それなら何故、人類は滅びたのか。
新型コロナウイルス感染症はその予兆だったり引き金だったりしたのか。多分、違うような気がする。
「分水嶺」とか「区切り」ではあるけれど、そこまで大きな意味は持っていないというか、意味を持たせたとするならそれは人間であるというか、そんな気がする。
高橋一生の動きとしゃべりと声がこの芝居にめちゃくちゃ合っていて(むしろ当て書きなのだと思う)、難しさと「考えろ」というメッセージが強烈になっていた。
芝居を見たという感じは実は今でもしていないけれど、見て良かったと思っている。
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