「風の谷のナウシカ」を見る
七月大歌舞伎「風の谷のナウシカ(かぜのたにのなうしか)上の巻―白き魔女の戦記―」
原作 宮崎駿
脚本 丹羽圭子/戸部和久
演出 G2/尾上菊之助/尾上菊之丞
振付 尾上菊之丞
観劇日 2022年7月9日(土曜日) 午後6時30分開演
劇場 歌舞伎座
料金 16000円
上演時間 2時間40分 (30分の休憩あり)
ふと気がついたら、観劇は1ヶ月ぶりだった。
歌舞伎座は現在、2席販売して1席は使用せず、次の2席を販売して1席は使用しない、という感じでチケットを売っているようだった。
これはチケットを1枚購入したときも同じで、私の場合も、左隣は空席、右隣は知らない人が座っていた。一人で観劇に行けば両隣は知らない人だから、特にどうということはない。
また、客席及びロビーでの飲食は(水分補給を除き)禁止されている。
30分の休憩時間はそしたらいらないだろうと思ったけれど、歌舞伎座内には食事処があり、事前予約すればそちらで食事を摂ることはできる。また、予約不要のカフェもあったと思う。
私は開演前に早めの夕食をいただき、30分の休憩は持て余すかなと思ったけれど、購入した筋書きを読んだり、売店でナウシカグッズを見たりしていたらあっという間だった。
ネタバレありの感想は以下に。
2019年に新橋演舞場で昼夜通しで原作漫画全7巻を舞台に乗せた「風の谷のナウシカ」が、今回は歌舞伎座で上演された。
しかし、今回は「上の巻」としているくらいだから、物語は前半部分まで、夜の部のみで上演される。
さらに、2019年にはナウシカを演じた尾上菊之助が今回はクシャナを演じ、サブタイトルに「白き魔女の戦記」と付けて、クシャナの物語を前面に出すと言う。
と聞いていたけれど、やはり「風の谷のナウシカ」は「風の谷のナウシカ」で、中村米吉演じるナウシカがいなければ物語は始まらないし動かない。
クシャナの物語にするには、もっとずっと大胆にクシャナ視点で、クシャナが知っていることしか舞台に乗せないくらいにしないと難しいのかなと思う。もっとも、原作にもそこまで詳しいクシャナの物語は描かれていないから、それはそれで難しい。
色々と難しいところに挑戦した舞台だったと思う。
2019年の舞台の演出を覚えている訳ではないけれど、今回は映像を多めに使っているなという印象を持った。
演出にG2が加わっていることも大きいのかも知れないと思う。
王蟲の大群が押し寄せる幕を下ろし、その赤くなった目の部分にスポットを当てて動かして光り動いているように見せたり、腐海の木々が胞子を飛ばしている様子を照明の動きで見せたりしていた。
なるほどと思う。
やはり舞台転換が多くて、幕が下がっている時間も結構ある。
花道を使って踊りが入ったり、三味線と太鼓と笛(だと思う)で、久石譲作曲のナウシカの楽曲が演奏されたり、その時間を長く感じさせまいという工夫がこちらも施されていた。
「この音楽は録音?」と思っていたけれど、多分、生演奏されていたと思う。
物語は、2019年版よりは多少、設定や語り手が動かしてあったけれど、かなり原作に忠実だったと思う。
私はアニメ映画も見ているし、原作漫画も持っているので、ストーリーはほぼ分かったし、「あぁ、ここを変えたのね」ということも気づけたけれど、この舞台を「風の谷のナウシカは映画は知ってるけど漫画は読んだことがない」とか「風の谷のナウシカはタイトルは知ってる」という状態で見たら、かなりちんぷんかんぷんなのかなぁと思う。
私が、普通の(というのも変な表現だけれども)歌舞伎を見たときにちんぷんかんぷんなのと同じくらいにちんぷんかんぷんだろうなぁと途中で思ったりした。
それはある程度想定されていて、上演の一番最初に「口上」があり、「腐海」や「トルメキア」や「土鬼帝国」などなどの用語解説や、時代背景の解説が入っていた。
歌舞伎っぽい解決策だと思う。
ナウシカやクシャナの衣装は漫画やアニメに寄せてあり、例えばペジテの姫であるラステルや、クシャナの部下のクロトワ、クシャナの母などは着物を着たり鎧を着たりしている。
その辺りの融合の力業加減は歌舞伎ならではだよなぁと思う。
何だかんだ言いつつ物語の中心になって引っ張っているナウシカを演じる中村米吉は、可憐さを押し出したナウシカを作っていたと思う。
尾上菊之助演じるクシャナとの対比という意味もあるだろうし、クシャナを力強くした分、ナウシカは可憐さで押した方がインパクトがある。
そして、筋書きのどこかに書いてあったけれど、この二人はどこまで行っても合わせ鏡で、乱暴にくくると、クシャナは父を憎み母を慕い、ナウシカは父を慕い母の記憶は薄い。クシャナは外は強く内がもろいけれど、ナウシカは多分、外見は可憐で中味は莫迦みたいに芯が強い。
その対比を、この舞台はかなり意識して見せようとしていると感じた。
ラストシーンは、クシャナは父や兄弟と争い王位と王国を我が手にしようと決心し、ナウシカは王蟲の呼ぶ声に従って南に進むと決める。
そうして、二人が別々の方向に向かう、というところで幕である。
正直なところ、「え? ここで終わり?」と思った。唐突感がある。
休憩前が1時間20分、休憩後が40分そこそこという上演時間も、その印象を強めたと思う。
もうちょっとこう、余韻というか、盛り上がりというか、「終わるぞ」感が出ていればびっくりしなかったのにと思う。
もっとも「上の巻」だから、「下の巻」に続く感はかなりたっぷりと出ていたと思う。
米吉演じるナウシカはメーヴェに乗って宙乗りで退場し、菊之助演じるクシャナは、ユパとアスベルを従えて(実際は同じ場所にはいないけれども)舞台中央でせり上がってナウシカに手を振る。
そして、幕である。
早く「下の巻」を見せてくれ! 見たい! と思った。
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