« 「凍える」の抽選予約に申し込む | トップページ | 「頭痛肩こり樋口一葉」を見る »

2022.08.20

「Q:A Night At The Kabuki」を見る

野田地図「Q:A Night At The Kabuki」
作・演出 野田秀樹
音楽 Queen
出演 松たか子/上川隆也/広瀬すず/志尊淳
    橋本さとし/小松和重/伊勢佳世/羽野晶紀
    野田秀樹/竹中直人 外
観劇日 2022年8月19日(金曜日) 午後6時開演
劇場 東京芸術劇場プレイハウス
料金 12000円
上演時間 2時間55分(15分の休憩あり)

 2019年の再演の舞台である。
 ネタバレありの感想は以下に。

 「「Q:A Night At The Kabuki」の公式Webサイトはこちら。

 初演を見たときも「全然分からなかった」と思った記憶がある。(初演の感想ははこちら。
 その理由についても、「Queenを全く聴いたことがない(どころか、そもそも洋楽を聴いたことがほとんどない)」ことや、「流れている曲の歌詞を理解できる英語力が全くない」ことを挙げていたような記憶がうっすらある。
 そして、今回も全く同じ状態で舞台を見ることになった。

 内容も「生き残ってしまったその後のロミジュリ」とか「源平合戦」というキーワードは覚えていて、しかし、キーワードしか覚えていないという体たらくである。
 始まりのシーンは覚えていたけれど、恐ろしいことに、ラストの手紙のシーンは全く記憶になく、当然のことながら手紙の内容も初めて聞くかのように聞いてしまった。
 記憶力の欠如とは恐ろしいものだと思う。

 映画「ボヘミアン・ラプソディ」や、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」など、狙っていたかのような公開や放映があり、(私は両方とも見ていないけれども)こういう連鎖反応というのか、盛り上がりというのか、タイムリーさというのは、偶然なのかも知れないけれど、野田秀樹の勢いだったり時代を捉える感覚だったり、「縁」を掴む強さだったり、そういうものの相乗効果なのだろうなと思う。
 一言で言ってしまうと「運」なのかとも思うけれど、もうちょっと何というか主体的な気がするのだ。

 私にとって、この舞台を見る見方がそれで変わったり、理解できるようになったりということはないのが残念である。
 要するに、私は「時代を捉える」というところからものすごく遠い位置に立っているということなのだろうと思う。
 それはそれで仕方がない。

 その「時代を捉えられていない」私が再演を見たときの感想は、もしかしてこの芝居はひどくゆっくりとした芝居だったんじゃないかしら、ということだった。
 野田秀樹の芝居といえば、マシンガントークというか、ものすごい勢いで畳みかけるように言葉遊びが連なっていて、追いつくどころかちゃんと聞き取れているかも怪しいときがある。
 そういう感じが、この芝居は少ない(ないとは言わない)ように思った。

 どうしてだろうと考えて、全編に流れているQueenの楽曲のテンポがそこまで速くなく、音楽と全く違うテンポでせりふを言うというのは難しく、それで全体にゆっくりめの印象になったのではないかと考え付いた。
 そういうこともあるかなぁと思う。
 だから、スローモーションの動きが随所に取り入れられていたのではないかとも思う。曲のテンポに合わせようとすると、スローモーションになったのではないかと感じた。

 そして、再演を見る前にはすっかり忘れ果てていた、ラストのロミオからジュリエットに宛てた手紙がよかったなぁと思う。
 竹中直人演じる「平清盛そっくりさん」が語り始め、松たか子演じるジュリエットが読み進める「手紙」は、途中で上川隆也演じる書き手であるところのロミオに語って欲しかった。

 でも、それは、結局のところ、書いてから30年も経って、書き手がとうに死んでしまった後で届いた手紙と同じように、叶わぬ願いなのだと思う。
 書き手であるロミオが「届いた」と思って死んで行き、ジュリエットが生きているうちに受け取れたのだから、願いは叶ったのか?
 この二人がずっと一緒にいられたとしたら、それは幸せな人生だったんだろうか。
 でも、ロミオとジュリエットはどうやっても、企みを成功させられない二人なんだろうなぁとも思う。大体、緻密さがない。

 ものすごく出演者が一丸となっていて、誰も独り勝ちせず突出せず、でもみんなが爪痕を残しているような舞台だったと思う。
 やっぱり分からなかったのだけれど、見てよかった。

|

« 「凍える」の抽選予約に申し込む | トップページ | 「頭痛肩こり樋口一葉」を見る »

*芝居」カテゴリの記事

*感想」カテゴリの記事

コメント

 みずえ様、コメントありがとうございます。

 そして、ここ最近は富に更新頻度が下がっているにも関わらず、お読みいただいてありがとうございます。

 なかなか厳しいところもありますけれども、少しずつ観劇のペースを上げて行けたらなぁと思っているところです。
 (あと、旅行にも行きたいです・・・。)

 引き続きよろしくお願いいたします。

投稿: 姫林檎 | 2022.08.24 21:35

姫林檎さま

連投失礼します。

このブログは、コメントは自分も観た舞台しかしていないのですが、いつも読んでいますよ。
「世界は笑う」は、自分が観れなかった分、ここで姫林檎さんの感想を読むのを楽しみにしていたんですが、姫林檎さんのチケットもあの中止になった数日に含まれていたのですね。
本当に残念でしたね(涙)

私は最近では、「鎌塚氏、羽を伸ばす」を観ましたよ。
実際に観れるまで、中止にならないか毎回ドキドキするようになってしまいました。

こんな哀しいことがもう起こらない世の中になることを願っています。

投稿: みずえ | 2022.08.23 10:53

 みずえ様。
 お久しぶりです&コメントありがとうございます。

 みずえさんは「ボヘミアンラプソディ−」をご覧になっているのですね。
 そうしたら、私の数倍「Q」を堪能されたのではないでしょうか。

 おっしゃる通り、役者陣の奮闘は素晴らしく、「技術が高いってこんなに何でもできるってことなのね」と感心することしきりでした。

 私も、いくつも観られなかった公演があります。「世界は笑う」は私も観られませんでした・・・。
 やっぱり悔しいですね。
 新型コロナが原因でで観劇できない、などということがない日常を渇望しております。

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2022.08.22 21:50

姫林檎さま

この舞台は、私も初演を観ました。
「ボヘミアンラプソディー」は観てましたが、あまりQueenには詳しくなく、英語もわからないため、それがもどかしかったことを憶えています。
内容はロミジュリの日本版で、さらに二人が生き残ったら、という仮定で進んでおり、だったらハッピーエンドかと思いきやとんでもない、という展開でしたよね。
観ていて切なくなったけれど、役者陣がみんな素晴らしいので、いい舞台だった、と思った記憶があります。
すずちゃんは初演で既に堂々としていましたが、さぞ演技力に拍車がかかったのでは?
上川さんや松たか子さんは安定していたことでしょう。大好きな二人です。

ところで、姫林檎さんは順調に観劇できていますか?
私は先日、「世界は笑う」を取ってあったのですが、コロナで初演が数日延び、私の観るはずだった日は中止に……。
泣きました。

投稿: みずえ | 2022.08.22 12:12

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「凍える」の抽選予約に申し込む | トップページ | 「頭痛肩こり樋口一葉」を見る »