「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」に行く
2022年9月2日、久々に会う友人に声をかけてもらい、国立新美術館で2022年8月10日から11月7日まで開催されている「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」に行って来た。
ルートヴィヒ美術館展からのハシゴである。二つ合わせて1時間半で回った。なかなか贅沢な時間だ。
こちらの美術展は時間指定制にはなっていないようだった。
金曜日の18時半に入ったためか会場は空いていて、全く密になることはなかった。この美術展は人が少ないときにゆっくりゆったり見る方が楽しいと思うので、時期と曜日と時間を選んで行くといいと思う。
李禹煥氏は韓国で生まれ、ソウル大学校美術大学入学後に来日し、日本で「もの派」を牽引したことで広く知られている、そうだ。
「もの派」という言葉も初めて聞いたし、李禹煥氏の名前も今回初めて知った私にはちんぷんかんぷんの説明である。
2010年に、香川県の直島に「李禹煥美術館」が開館しているそうだ。
本展には、油彩画あり、絵ではない「何か」ありで、不思議な空間である。
何というか、説明が難しい。
なーんにも知らず分からないまま、置いてあった「李禹煥鑑賞ガイド」も面白そうだともらったもののその場では読まずに進んだ。
それでも面白いって凄いと思う。
「大きなキャンバスに蛍光塗料をスプレーでがーっと吹きつけまくったでしょう!」という絵に三方から囲まれるとかなりふわっとした感じになる。
小砂利を敷き詰めた部屋に入って歩くと、自分の足音が何と大きく響くのだろうとびっくりする。
大きな岩が厚いガラスの上に置かれていて、しかしガラスにはヒビが入り一部は割れている。大きな岩を大きなガラス板に落としたように見えるけれど、どうやって持ち上げたのよ! と思う。
思っていたら、公式サイトにメイキング映像が掲載されていた。迫力だ。ぜひこの映像は音入りで見たかった。
長瀞の岩畳みたいな石が一面に敷き詰められたお部屋に入ると、足下でその石が揺れたり鳴ったりする。これはこの音も「作品」だよなと思う。よく分からないけど、敷き詰められた石よりも、「音」が作品のように感じられる。
何となく友人と点対称の位置にで外周をゆっくり回ってしまった。可笑しい。そして楽しい。
この美術展には、ハイヒールで来てはいけないと思う。
屋外展示もあって、かなり広い面積に小石が敷き詰められていた。どうやって持ってきたんでしょう、どうやって持って帰るんでしょう、新作だそうだけど、この後この展示はどこに行くのでしょう、と思う。
この屋外展示は、夜見たときと昼みたときと夏見たときと雪の日に見たときと雨の中見たときと、それぞれで印象が異なるのだろうなぁと思う。できれば、雪景色を見てみたかった。
恐らくは制作年代順に展示されており、進むにつれて、油彩画が戻り、点が延々と押されていたり(消しゴムはんこのようだと思った。多分、違う)、線が延々と引かれていたり、そういうシステマティックな絵が続いたかと思うと、ランダムにしゅっと筆を走らせたかのような絵が出てくる。
あまりタイトルを見なかったので定かではないけれど、「風より」だったか「風とともに」というタイトルのモノクロでランダムに線をシュッと走らせたような絵が好きだった。「私の部屋の壁紙、これでいいわ」とか不遜なことを考える。
グラデーションでどうみても湯飲みの形を描いた絵が続き、最後には、キャンバスではなく、この美術展の壁に湯飲み(に見えて仕方がない)が直接描かれていた。
この作品の制作過程も、メイキング映像で見ることができた。
この作品も、この美術展終了後にどこへ行くのか気になるところだ。
会場の外にも作品があり、そちらも小石が敷かれた作品の中に「入る」ことができる。
国立新美術館の煌々とした明かりをバックに、お隣の建物の明かりが木々の影を作っていたりして、こちらも昼と夜とでは雰囲気が全然違うのだろうなぁと思う。
静かで面白い美術展だった。
彼女に誘ってもらわなければ行くことはなかったと思う。
めちゃくちゃ、得した気分である。ありがとう!
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