「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション」に行く
2022年9月2日、久々に会う友人に声をかけてもらい、国立新美術館で2022年6月29日から9月26日まで開催されている「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション」に行って来た。
ルートヴィヒ美術館は、ドイツのケルン市が運営する美術館で、「市民のコレクターたちによる寄贈を軸に」形成されたコレクションを持っているという。
・・・と説明してくれた彼女も「私もよく分かっていないんですけど」と笑っていた。
コレクションの多くは20世紀の作品のようだ。
日付指定制だったけれど、招待券をいただいたので、事前予約は必要なかったようだ。その辺りの仕組みはよく分からなかったものの、金曜日の18時半に入ったためか会場は空いていて、全く密になることはなかった。
金曜夜の美術館もいいものだわと思った。
最初は並んで見始めたものの、話しながら見るのも憚られ、そのうち夫々のペースで勝手に見るようになった。この辺りの呼吸が有り難い。
「序章 ルートヴィヒ美術館とその支援者たち」では、アンディ・ウォーホルの描いた、この美術館の館名にもなっている「ペーター・ルートヴィヒの肖像」がカラフルで大きくてなかなか優しそうな顔のおじさまで目を引いた。
ルートヴィヒ夫妻はどちらも美術史を学んでいて、妻の家の事業に成功し、早くから美術品収集を始めていたという。
この美術館だけでなく、世界各地の美術館にコレクションを寄贈しているらしい。お金持ちって凄い。
「第1章 ドイツ・モダニズム 新たな芸術表現を求めて」というタイトルで、油絵から写真から彫刻まで、時間と変化を追えるようになっている。
眠り猫のような猫の像(意思に見えたけれど木製だったらしい)がなかなか可愛らしい。
もの凄く地味な「陶酔の道化師」というタイトルのクレーの油彩画があって、このセピアな地味な感じの絵だったら、我が家に持ち帰って飾れるんじゃないかしらと勝手なことを考えた。
第1章でもう一つ気に入ったのが、「菓子職人」というタイトルのモノクロ写真で、かなりでっぷりとしたコック服のおじさんがオーブン(だったような気がする)の前に立ち、カメラをにらみつけている写真である。
ぜひこの絵はがきが欲しかったのだけれど、意外と「絵はがき」の種類が少なくて、残念ながら入手できなかった。
会場から出てみたら、大きく引き延ばされて宣伝というか目印に使われていて、やっぱりいい写真だよなー、としみじみ眺めた。
「第2章 ロシア・アヴァンギャルド−芸術における革命的確信」では、今の時期にロシアというのは何となく微妙な感じがする、という気持ちと、アヴァンギャルドって言葉は聞いたことあるけど意味知らないよ、という二つの感想がまず浮かんだ。
今調べたら、アヴァンギャルドは「前衛」という意味らしい。「前衛」も、耳にはするけど意味がよく分からない言葉の一つだ。
アレクサンドル・ロトチェンコという人の写真が多く飾られていて、絵を描くより写真を撮る方が少なくとも時間はかからないし、たくさん作品を生み出せるよなぁと当たり前のことを思ったりした。
「第3章 ピカソとその周辺ー色と形の解放」の最初の1枚がシャガールで、それが版画ではなく油彩画だったのがびっくりだった。
「妹の肖像」というタイトルのその絵は、地味で暗くてデフォルメはほぼなくて、シャガールと聞いて頭に浮かぶあの絵の感じとは全く似ても似つかない。
章タイトルのとおりピカソ絵も何点かあって、これまた地味にモノクロの「グラスとカップ」という絵が気になった。持ち手がついた形はカップとして、グラスはどこかしらと探してしまった。いや、でも持ち手が付いていた器はガラスっぽい感じに描かれていたから、そちらがグラスかも知れない。
「第4章 シュルレアリスムから抽象へー大戦後のヨーロッパとアメリカ」の辺りから、「何か、分からない感じのタイトルが多くなってきたわー」と思っていた。
特にこの辺りは、名前を知らない作家の作品ばかりだったからかも知れない。
個人からの寄贈という作品も多くて、寄贈を受け入れて美術館に飾るか否かの基準は何なのかしらと思ったりした。
「第5章 ポップ・アートと日常のリアリティ」には、全く「日常のリアリティ」を感じないまま通り過ぎた。
「女たちは美しい」というシリーズの写真があって、街中にいる女性の写真が並べられてあった。うーん、この女性たちって、真正面からカメラを見ている人はいいとして、歩いているところを横から撮られている人とか、写真を撮られることとか発表されることとか、ちゃんと了承しているとは思えないよなぁ、と見ていた。
1960年代の写真だから、当時は「肖像権」もそれほど厳密には扱われていなかったのだろう。
「第6章 前衛芸術の様相−1960年代を中心に」も、やっぱりよく分からないよと思いながら通り過ぎ、「第7章 拡張する美術−1970年代から今日まで」では、最新で2016年作品が飾られていた。
コロナ禍前だわと思う。
ここで「ハシビロコウ」という作品だけ、写真撮影がOKになっていた。
最後の最後は映像作品で、何だかよく分からなかったけれど何だか面白かった。
たまに気にすると「**からの寄贈」という記載があって、本当に個人が寄贈した作品のコレクションなんだわと再確認した。
なかなか我々には持ちにくい感覚だと思う。
その感覚が何よりの展示物なのかなと思った。
前にも書いたけれど、現代に近い時代の作品が多いためか、絵はがき等のグッズになっている作品が多くなく、ちょっと残念だった。
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