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2022.11.19

「薔薇とサムライ2 -海賊女王の帰還-」を見る

劇団☆新感線42周年興行・秋公演 SHINKANSEN☆RX「薔薇とサムライ2 -海賊女王の帰還-」
作 中島かずき
作詞 森雪之丞
音楽 岡崎 司
振付・ステージング 川崎悦子
演出 いのうえひでのり
出演 古田新太/天海祐希/石田ニコル/神尾楓珠
    高田聖子/粟根まこと/森奈みはる
    早乙女友貴/西垣匠/生瀬勝久 外
観劇日 2022年11月19日(土曜日) 午後0時開演
劇場 新橋演舞場
料金 5500円
上演時間 3時間30分(30分間の休憩あり)

 ロビーではパンフレットやDVD、上演台本やその他のグッズが販売されていた。

 「薔薇とサムライ2」の公式Webサイトはこちら。

 90分、20分休憩、90分の舞台で、生バンドが入って、出演者の皆様は代わる代わる歌いっぱなしである。
 天海祐希は一体何回着替えたんだろう、というくらい、次々と衣装を替えて行く。
 五右衛門の頭は前回公演より小さくなったらしいけれど、しかしそれにしてもデカイ頭で、綿入れのような衣装で、カーテンコールでは高下駄を履いていた。
 天海祐希演じるヨーロッパの小国の女王と高田聖子演じる隣国である小国の女王が対決し、古田新太演じる天下の大泥棒石川五右衛門と生瀬勝久演じる「舌の魔術師」と呼ばれる泥棒が対決する。
 とにかく派手な舞台である。派手、元気、華麗、以上。

 相変わらず中島かずきの書く物語は練りに練られていて、これぞ伏線の張り方・回収の仕方の見本! という感じである。
 最終的に天海祐希演じるアンヌと五右衛門がどんな形であれ勝利を収めることは間違いなく、そういう意味では安心しきっているにも関わらず、一体何がどうしてどうなっていて、これからどうやって収めて行くつもりなのかとドキドキする。
 すげーなー、という感想しか浮かばない。どうしてここまで作り込めるのか。

 映像を使いまくり、回り舞台も回しに回し、いっそフライングシーンが地味に見えたくらいの派手な舞台である。
 山本カナコ、冠徹弥、教祖イコマノリユキの3人が旅芸人として諸国を回り、アンヌ達の活躍や世相を歌いまくる。流石にシャウトする感じは減ったようにも思うけれど、それにしても生バンドに全くひけを取らない声量で歌いまくって物語を進めて行くのだから贅沢だ。

 「世代交代」がテーマだそうで、生瀬勝久演じるボルマンと高田聖子演じる隣国のマリア女王と戦って勝利を収めつつも女王の座から引き、石田ニコル演じるロザリオに(そういえば血縁関係も全くないのに)譲ったアンヌの姿が、物語の中でそれを体現し象徴している。マリアも王座を降りて早乙女友貴演じる息子に王位を譲るし、今回は映像出演だけだった浦井健治が演じていたシャルルは王位に留まるようだけれど、神尾楓珠演じるその弟のラウルは宰相となるらしい。

 若者たちが小国を治める地位に就き、アンヌは航海と貿易の自由を守るべく大海原に乗り出すというラストシーンは、なかなか気宇壮大だ。
 アンヌが引退してどこかの宮殿に引きこもるとかいう終わり方じゃなくて本当に良かったと思う。
 終わり方と言えば、今回、悪者が殺されたり死んじゃったりしなかったところが新機軸、だったような気がする。麻薬めいた塩を使ってヨーロッパを支配しようとしたマリアは王位を降りただけで、アンヌに「出会い方が違っていたら友達になれたかも」と言われてたし、最後に往生際悪い感じで毒薬を飲もうとした生瀬勝久演じるボルマンは、その自殺を五右衛門に止められ、捕らえられていたけれど、その後どうなっていたんだろう。

 「いつもと違う!」ということは他にもあって、村木よしこの役柄がかなり意外だった。何というか、普通にいい人で、「大阪のおばはん」らしい感じが全くない役ってあまり見たことがないような気がする。
 常識的かつ上品かつ慈愛に溢れた、早乙女友貴演じるマクシミリアンを見守る乳母とか家庭教師のような役回りである。
 あまりにもいつもと違いすぎて、最初は誰だか分からないくらいだった。

 そういえば、粟根まこと演じる科学者のケッペルも意外なことに裏も企みもない普通にいい人だった。
 普通にいい人の粟根まことも久々な気がする。
 ラストで、エリザベッタとくっつきそうな雰囲気になったのは、前作の「薔薇とサムライ」のときにエリザベッタの夫役(かつ、悪の道にはまって滅びていった男の役)を演じていたからだろう。大人のお遊びだ。楽しい。

 誰だか分からないといえば、「アルセーヌ侯爵」という割と分かりやすい名前で天海祐希が登場したときには、角度的に顔が見えにくかったこともあって、最初は誰だか全く分からなかった。
 男性である。
 スーツというか燕尾服を着て舞踏会のシーンに登場し、マリア女王から金庫の鍵を盗むため、彼女とダンスを踊る。
 完全に男役で、この舞台に登場しているどの男優さんよりもはるかに格好良かった。宝塚の男役って凄いし、それを今もキープしているのも凄い。凄すぎる。

 山本カナコたち3人の吟遊詩人もだし、森奈みはるの声量も凄くて、全然枯れていない。
 新感線の劇団員のみなさんの平均年齢は50歳くらいらしいけれど、動きにしても、声量にしても、全く痩せていない。
 古田新太もやっぱり格好いい。古田新太の格好良さはやはり声としゃべり方だよと改めて納得する。

 流石に今回は主演のお二人の殺陣はかなり減っていたけれど、そこを一人でカバーしまくっていたのが早乙女友貴である。五右衛門から忍術教本をもらったマクシミリアンがあっという間に技術を習得して「フランス系忍者?」としてアンヌ達の危機を救いまくっているのかと思っていたら、それは五右衛門の変装という設定だったらしい。
 そこも「世代交代」の成せる業であり設定だという感じがする。
 全体として殺陣のシーンが少なめだったのは、多分、若手の俳優さん達の中で彼の殺陣が突出していて、彼が助けるというシチュエーションが多くなったからではないかという気がした。

 実のところ、何だか自分がもの凄く残酷で野蛮な人みたいだけれど、大立ち回りの末に分かりやすい悪人を討ち果たして平和を守る的な、爽快感というかスカっと感は実はそれほど高くなかったようにも思う。
 大人だ。大人の終わり方だ。
 恐らくは、時代というか世相も鑑みた結果、選ばれた物語の閉じ方なのだと思う。

 「海賊女王の帰還」というサブタイトルは、記憶を失っていたアンヌが女王としての記憶を取り戻したという意味と、その後に女王を引いてまた(海賊としてではないけれども)海に帰って行ったという二つの意味があったんだなと思う。

 何はともあれ、みんな楽しそうで、見ているこちらも楽しくて、3時間半があっという間だった。

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