「守銭奴 ザ・マネー・クレイジー」を見る
東京芸術祭2022 芸劇オータムセレクション「守銭奴 ザ・マネー・クレイジー」
作 モリエール
翻訳 秋山伸子
演出 シルヴィウ・プルカレーテ
出演 佐々木蔵之介/加治将樹/竹内將人
大西礼芳/天野はな/茂手木桜子/菊池銀河
長谷川朝晴/阿南健治 /手塚とおる/壤晴彦
観劇日 2022年12月9日(土曜日) 午後1時開演
劇場 東京芸術劇場プレイハウス
料金 9500円
上演時間 2時間
ロビーでの物販はチェックしそびれてしまった。
ネタバレありの感想は以下に。
「ザ・マネー・クレイジー」を何故か「スクルージ」と読んでしまったくらい、全く何も知らないどころか先入観ありまくりで観劇した。
しかし、この先入観はある程度当たっていて、佐々木蔵之介演じる主人公のアルパゴンはとにかくケチでケチでケチな、性格の悪そうなおじさんである。「お金 命!」という感じで、お金は貯めるものと思っており、使うことはほとんど考えていないし、自分以外の誰かが使うのも許せない、という感じだ。
当然のことながら家族は苦労していて、奥さんはすでにいないようだけれど、息子と娘はそれぞれ「家は金持ちなのにお金がない」ことに辟易している様子である。
娘のエリーズは、自殺しようとしたところを救ってくれた男ヴァレールと恋仲で、その男は父親を懐柔すべくアルパゴンの家に執事として入り込んでいる。
息子のクレアントは、近所に住むマリアンヌという女性に恋をしているが、「お金がない」からなかなか先に進めずにいる。
そして、「子供達の結婚は自分のお金のために」と思っているアルパゴンがある日「結婚する」と言い出し、言い出したその相手がマリアンヌだったからさあ大変、というところだ。
だけれども、これって大変なんだろうか? というのが観ている間中ずっと気になっていたし、今も気になっている。
クレアントはマリアンヌと結婚するための資金を高利貸しから借りようと召使いを走らせていたけれど、そもそもクレアントは独立してしまえばいいのではないの? と思う。
この時代はそれも出来ない相談だったのか。
「親父が金をくれない(から貧乏で困っている)」と言うけれど、そもそも結婚を考えるくらいの年齢なのだから、お金を父親にもらうという発想自体が間違っているんじゃないかとツッコミたくなった。
また、エリーズのために執事となったヴァレールが、何がきっかけだったか覚えていないのだけれど、屋敷のコック御者であるジャック親方をアルパゴン並に理不尽に棒でたたきのめすシーンがあって、そこも謎だった。
私が見逃したか理解が足りないかそれだけかも知れないけれど、ヴァレールにジャック親方を折檻する理由はなかったように思う。だから私の目には「理不尽」と写った。
これは「エリーズが恋した相手は実はアルパゴン並に理不尽かつ自分勝手かつ暴力的な男だった」みたいな事実が後に明らかになる伏線かと思ったくらいで、しかしそういう訳でもない。むしろ、後にジャック親方によって意趣返しをされている。
意味不明だ。
また、壤晴彦がフロジーヌという「仲人婆」みたいな女と、アルパゴンが娘と結婚させようとした金持ちのアンセルムという男の二役を演じていて、最後の方で舞台奥で化粧と衣装を変えるところ見せて成り代わるのだけれど、これは、「壤晴彦が一人で二人の人物を演じた」のか、「壤晴彦が演じた人物は一人で二つの顔を持っていた」のかどちらか、実は未だに分かっていない。
どっちなんだろう。
何にせよ、女性のフロジーヌという役を演じて違和感がないところが凄い。違和感がないというよりも、違和感がありすぎて説得されてしまった感じだ。
マリアンヌも、実はクレアントとは知らない若者に恋をしているのに母のためにアルパゴンと結婚しようとするし、登場人物達の行動一つ一つが意味不明だった。
時代背景などなどを理解すれば分かった話なんだろうか。
そして、最後は、マリアンヌとマリアンヌの母、ヴァレールとアンセルムが実はヴェニスの大金持ち一家であったことが判明し、船の難破でその頃の財産は失われているけれど、アンセルムが稼いで今は再び金持ちになっていたことが判明する。
そうして、アルパゴンは自分の子供達の結婚相手がそれぞれアンセルムの子供達で、かつ結婚の費用諸々を全てアンセルムが負担すると聞き、子供達の結婚を許す。それを聞いてだったか、クレアントの召使いが盗んだお金をアルパゴンに返す。
アルパゴンは盗まれたお金が返ってきて満足、アンセルム一家はバラバラになっていた家族がまた一つに戻れて満足、アルパゴンの子供たちは好きな相手と結婚できて満足。一応、大団円、なのかも知れません。
もっとも、アルパゴンの家の召使い達がどう思っているかは示されていません。少なくともジャック親方は、意趣返しのたえにヴァレールがアルパゴンのお金を盗んだと偽証したことがばれてしまったので、これから保安官に酷い目に遭わされそうだ。
大団円と書いてから思ったけれど、フロジーヌがアルパゴンの家の召使いの少女に「あなたがちょうどいい」と言って連れ出した伏線はどこで回収されていたのだろう。
アンセルム一家などというものは幻で、マリアンヌの母(アンセルムの妻)は、召使いの少女が化けた姿であった、という結末もあり得る。描かれてはいないけれど、こういう設定なのだとしたら、何とも後味の悪い大団円である。
ビニルの書き割りの壁を移動させたり、なかなか凝った舞台セットで、楽器演奏(主にエリーズが担当)があったり、歌があったり、最後は少しばかりヴェニスの仮面舞踏会ぽかったり華やかさを楽しみつつ、お話の展開としてはあちこちもやっとしたものが残った舞台だった。
| 固定リンク
「*芝居」カテゴリの記事
- 「無駄な抵抗」を見る(2023.11.26)
- 「ねじまき鳥クロニクル」を見る(2023.11.19)
- 「ガラスの動物園」「消えなさいローラ」を見る(2023.11.12)
- 「パートタイマー秋子」のチケットを予約する(2023.10.29)
「*感想」カテゴリの記事
- 「無駄な抵抗」を見る(2023.11.26)
- 「ねじまき鳥クロニクル」を見る(2023.11.19)
- 「ガラスの動物園」「消えなさいローラ」を見る(2023.11.12)
- 「終わりよければすべてよし」を見る(2023.10.28)
- 「尺には尺を」を見る(2023.10.22)
コメント