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2023.01.22

「宝飾時計」を見る

「宝飾時計」
作・演出 根本宗子
出演 高畑充希/成田凌/小池栄子/伊藤万理華
    池津祥子/後藤剛範/小日向星一/八十田勇一
観劇日 2023年1月21日(土曜日)午後1時開演
劇場 東京芸術劇場プレイハウス
上演時間 2時間45分(20分の休憩あり)
料金 9800円

 ロビーでは、パンフレットの他、Tシャツ等のグッズが販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 ホリプロの公式Webサイト内、「宝飾時計」のページはこちら。

 高畑充希演じる、子役(多分10歳くらい)のときから19年間にわたって同じ舞台の主演を務めていた女優ゆりかの、自分探しの物語だったと思う。
 サイトを読んだときは、「女優としていかにあるべきか」「自分は女優として求められているのか」という悩みと成長の物語かと思っていた。主演の高畑充希自身とも状況が重なるし、高畑充希ありきの舞台だからこそ、そういう作りにしたのだと勝手に思い込んでいた。
 実際に見た舞台は、もう少しファンタジックというか、恋愛物っぽい感じに仕上がっていた。

 ゆりかが舞台デビューしたその舞台は、主役の少女はトリプルキャスト、相手役の少年はシングルキャストで、「ゆりかの演技が一番いい」と言ってくれたその少年とゆりかは仲良くなり、「一番好きなものを選べない、一番好きなものを言えない」等々の共通点を知ってますます仲良くなる。
 しかし、その後、少年は自殺してしまい、ゆりかは同じ舞台の主演を30歳近くまで務めて来た。
 昨年、19年目で役を譲ったというか、役を降りており、役を降りた途端に身長が10cmも伸びたとまた話題になったようだ。

 その、ある意味「伝説の」舞台が20周年を迎えるに当たり、記念コンサートが開催されることになり、初演キャストのゆりかにテーマ曲を歌うようオファーがあったと、ゆりかは、マネージャーであり恋人でもある大小路から告げられる。
 物語の始まりはそこからだ。
 ゆりかは、何故か初演のトリプルキャストが全員集まることを求め、自身からも今はバラエティで活躍している真理恵に連絡を取り、その後ずっと引きこもっているらしい杏香の母親にも連絡を取る。

 20年前の初演時の様子を挟みつつ、回り舞台で舞台を転換し、現在のゆりかと大小路とのやりとりをメインに記念コンサートのリハーサルでの楽屋の様子までを一幕で見せて行く。
 「女優」としてのゆりかは、それほどメインテーマに据えられていなくて、むしろゆりかは、恋人との関係に悩んだり迷い、不安定になっているように見える。
 そして、1幕の最後、その自殺した(と思われていた)少年と、今のゆりかのマネージャーが同一人物であることが分かる。

 2幕では、ゆりかが子供の役を19年続けた理由や、不安定だった理由というか原因として、自殺した少年のことを考えすぎる余り「実体化」して、ゆりかのみならず周りの人からも見えることがあるくらいにまでなっていることが明かされる。
 1幕で演じられたシーンがもう1回、全部ではなかったと思うけれども、そこに「実体化させてしまった少年」がいて、ゆりかとやりとりをしている様子が演じられる。

 面白いし凝った構成かつ演出だと思うけれど、何というか、全体に作・演出の根本宗子の思考というか頭の良さが感じられて勿体ないようにも思う。
 1幕の最後で、ゆりかのマネージャーと自殺した(と思われていた)少年が同一人物だとばれるのは、ずっと知っていたゆりかが言ったからではなく、「鼻が効く」と子供の頃から言われていた真理恵が匂いで気がついたからだ。
 そういう伏線の張り方の裏に、伏線を張った思惑みたいなものが見える気がしてしまった。

 2幕では、「その後」も語られる。
 リハで配られたお弁当を持って帰って二人で食べる。マネージャーの作る夕食をずっと食べていた二人にとっては珍しい「晩餐」である。
 何度も「出会い直せていなければ意味がない」と言いつつ、観念したというか、考えを変えたようにも見せていたマネージャーは、結局、ゆりかが翌朝に目を覚ましたときには姿を消している。

 舞台上で、高畑充希が主演していた舞台のテーマ曲を歌っている間に、舞台上では随分と長い時間が過ぎたのだと思う。
 ゆりかのしゃべり方が急に老け、多分彼女はもう60代どころか70代にもなっているように感じられる。
 そこに、何故か見た目もしゃべり方もほぼ若い頃のままのマネージャーが登場する。
 そして彼に抱きかかえられたまま、ゆりかは息絶える。そこで、幕である。

 正直に言うと、何がなんだかさっぱり分からなくなってしまった。
 「自殺に見せかけて姿を消すって、一体、彼が何歳の設定のときの話だよ」とか、「ゆりかの元にマネージャーとして戻るのはいいとして、どうして”出会い直す”必要があったんだよ」とか、「楽屋履きのことで喧嘩したから少年が自殺したとか普通は考えないだろう」とか、「出会い直せなかったら姿を消すしかないと思ったのは何故なんだ」とか、「そもそも、ゆりかの悩みって何だったんだ」とか。
 最後の疑問が一番重要だ。
 とりあえず、最後に現れた彼は、多分、ゆりか自身が生み出した幻だったと思う。

 謎解きに大分引き込まれて見ていたので、最後にカタルシスが味わえる感じで全て分かりやすく解決してくれればいいのに! と勝手なことを考えてしまった。

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