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2023.02.23

「博士の愛した数式」を見る

「博士の愛した数式」
原案・原作 小川洋子
劇作・脚本・演出 加藤拓也
出演 串田和美/安藤聖/井上小百合
    近藤隼/草光純太/増子倭文江
演奏 谷川正憲
観劇日 2023年2月23日(木曜日)午後2時開演
劇場 東京芸術劇場シアターウエスト
上演時間 1時間20分
料金 6000円

 そういえば、ロビーでパンフレット等が販売されていたかどうか、チェックしそびれてしまった。

 ネタバレありの感想は以下に。

 まつもと市民・芸術館の公式Webサイト内、「博士の愛した数式」のページはこちら。

 ネタバレありの感想といっても、ストーリーはほぼ原作小説に忠実に描かれている。
 上演時間を80分にしたのは、「博士」の記憶が80分しか保てないことにちなんだのかなと思う。もっと盛り込んでもいいだろうエピソードがいくつか思い浮かぶので、80分にまとめることを結構強く意識したのだと思う。

 ギターの生演奏が入ったり、開幕で「星に願いを」を結構長いバージョンで歌ったりしたのは、恐らく80分にすることでそぎ落とすことになる雰囲気を保つためだろうし、大人になったルートがずっと「語り手」を務めるのは、映画にあやかるのと同時に、舞台の特性を活かす方策だったのだろう。
 上手くはまっていたと思う。

 そういえば、この舞台では誰の名前も明かされていなかったような気がする。
 語り手の「ルート」も自分の母親のことをずっと「家政婦」と語っていたし、息子の「ルート」は博士が名付けた呼び名だし、その「博士」も家政婦母子からは「博士」と呼ばれ、隣に住む義姉からは「義弟」と言われている。
 名前のある登場人物がいない。
 結構、珍しいことのような気がする。原作小説にはそれぞれの名前が記されていただろうか。読み返してみようと思う。

 安藤聖演じる「家政婦」が、「博士」の家に入るところから、「博士」が80分の記憶すら保てなくなって施設に入所し、施設で「ルート」が中学の数学教師になることが決まったところまでが描かれている。
 安藤聖演じる「家政婦」の清々しい感じが素敵でよく似合っている。
 深津絵里が映画で演じていた「家政婦」を思い出した。

 串田和美演じる「博士」は、おろおろするシーンにインパクトがあった。ルートに怪我をさせてしまったり、ルートのために用意したバースデーケーキを崩してしまったりしたときの過剰なまでに自責の念を感じている演技が印象的で、少し突出しすぎてしまったかなと思ったくらいだ。
 しゃがれた感じの声と、子供をもの凄く可愛がっている感じが良かったと思う。

 その可愛がられる「ルート」を井上小百合が演じていた。小学校男子の役を演じる井上小百合にあまり違和感がなかったのは凄いと思う。
 実際に子役に演じてもらう方法もあったと思うけれど、ここで小柄な女優をキャスティングしたのは舞台ならではだし、この舞台のポイントだろうと思う。
 なかなか、活発かつ元気な男の子になっていたと思う。もうちょっとワガママでもいいんじゃない? と言いたくなる感じが良い。

 博士の義姉である未亡人を演じた増子倭文江の固い感じもよく似合っていて、彼女が「家政婦」を雇用するとき、解雇するとき、最後に「家政婦」に、義弟はあなたを記憶することはできないが私のことは忘れないと宣言するところなど、舞台の要所をきっちりくっきり締めていたのが格好良かった。

 舞台奥にガラスっぽい素通しの格子になった壁があって、そこに開演前から舞台上を行ったり来たりしていた大人のルートを演じる近藤準が、数式や「e」や素因素分解を書いて行く。
 ルートが数学の文章題を絵に描いたりもする。
 舞台の左手にダイニングテーブル、右手にベッド、真ん中にキッチンがあって、料理のシーンでは包丁は手に持つけど材料はなくて野菜を切るところなどはマイムで表現される。ちょっと不思議な感じだった。

 あのシーンも入れて欲しい、こっちのシーンも入っても良かったのにと色々と思い浮かぶ。
 しかし、80分に必要なエピソードをきっちり入れ込み、かつ、小説の持つ静謐な時間を見事に舞台上に再現させていたと思う。
 私も原作小説から戯曲を書いてみたいわなどと、阿呆なことをうっかり思ってしまうくらいだった。見て良かった。

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コメント

 pippiさま、初めまして。
 そして、コメントありがとうございます。

 リンクを張っていただいたので、pippiさんのブログを拝見して参りました。
 やっぱり、この舞台、良かったですよね。

 ロビーでは、原作本が販売されていただけだったのですね。物販がほとんどないって割と珍しいような・・・。それで素通りしてしまったのかも知れません。
 教えていただいてありがとうございます。

 またどうぞ遊びにいいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2023.02.23 23:08

はじめまして。いつもこちらのブログを楽しみに拝見しております。私も20日に観てきました。静かで素敵な舞台でしたね。パンフレットは冊子のものはなく、見開きの1枚だけで、あとは原作の文庫本がおいてあるのみでした。もう少し詳しいものがあるといいなあと思いました。

投稿: pippi | 2023.02.23 20:47

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