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2023.03.12

「なるべく派手な服を着る」を見る

MONO「なるべく派手な服を着る」
作・演出・出演 土田英生
出演 奥村泰彦/水沼 健/金替康博/尾方宣久
    渡辺啓太/石丸奈菜美/高橋明日香/立川茜
観劇日 2023年3月11日(土曜日)午後2時開演
劇場 吉祥寺シアター
上演時間 1時間55分
料金 4300円

 かなりギリギリに劇場に到着し、ロビーでの物販は、あったかどうかもチェックしそびれてしまった。
 ネタバレありの感想は以下に。

 MONOの公式Webサイト内、「なるべく派手な服を着る」のページはこちら。

 舞台は、増築に増築を重ねて迷路のようになってしまった久里家である。
 左手に階段、右奥の小さな押し入れが台所への通路になっていて、右手のドアを出ると庭がある。台所には庭から入ることもできるらしい。
 お茶の間から玄関には「正規ルート」と「近道」の二つがあるようだ。
 訳が分からない。

 久里家は男6人兄弟で、上の4人は四つ子である。
 末っ子の翔は養子で一人だけ年が離れているらしく、えらく兄たちに可愛がられている。
 その四つ子と末っ子の間にいる五男の一二三が、「すぐに存在を忘れられてしまう」から「なるべく派手な服を着る」ことにしている当人だ。
 この日も、赤いパンツにオレンジの背中の上着だったか、オレンジのパンツに赤い背中の上着だったか、とにかく派手な服を着ている。

 6人兄弟の母はすでに亡く、久里家では長男の勝が同居して父の面倒を見ている。
 今回は、父親が危篤とまでは行かないようだけれどかなり具合が悪いということで兄弟全員に招集がかかったらしい。
 久里家には妙な家訓が多く、「結婚してはいけない」とか「パスポートを取ってはいけない」とか言われていて、次男と四男は律儀に守って「内縁の妻」とは籍を入れていないし、「有名カメラマン」らしい三男の隆も海外での仕事を全て断っていると言う。
 滅茶苦茶だ。

 MONOの芝居では割とお馴染みな感じでちょっと変わった口癖というか言葉が普通に使われていて、今回のそれは「おひおひ」だった。
 「おいおい」とほぼ同じ感じで使われているらしい。
 次男の妻も妙な丁寧語を駆使していたし、四男の妻は滅茶滅茶虐げられているのにその境遇に甘んじているというより積極的に受け入れているし、久里家では「長男」の存在がやけに重んじられているし、何というか、妙に時空がゆがんでいるような感じがある。
 普通だけど普通じゃない、という感じだ。

 果たして「なるべく派手な服を着る」は何の物語だったのか、実は最後までよく分かっていなかったと思う。
 「なるべく派手な服を着る」ことにしている五男は、恋人からも「存在感がない」から「別れる」と言われているし、実際兄弟達の誰からも名前を覚えてもらっていない。「自分も養子だったら良かった」と末っ子の六男をうらやましがり、自分だけが漢字1文字の名前でないことを嘆く。
 いや、多分、問題はそこではない。そう伝えたい。

 しかし、それならば問題はどこにあるのかと言われると、これがよく分からない。
 「存在感がない」ことと「覚えてもらえない」ということと「存在を認識して貰えない」ことと「無視される」ことは同じだろうか。多分、違う。
 そして、一二三の存在感のなさは筋金入りで、一二三の名前も覚えられない兄たちや弟に悪意がないところに、悲劇の根っこはあるように思う。

 彼ら6人兄弟の父親は、死の直前に「兄弟の上4人も四つ子などではなく、全員が養子だ」ということを告げる。
 それを聞いた兄弟は養子縁組を証明する書類を探し始めるが、家中探してもどこにもないらしい。
 四つ子は「そういえば全然似ていない」ことを改めて認識し、籍を入れられないのもパスポートを取れないのも養子縁組がバレないようにするためだったのだと納得する。
 そこもおかしいと思うのだけれど、とりあえず置いておく。

 一二三は一時的に「自分だけが実子だった」ことに価値を置こうとしたものの、彼らが無条件に慕う母親が決して褒められたタイプの女性ではなかったのではないかとこちらも「思い出し」始め、そして、一二三は母が浮気して生まれた子供であると分かる。
 そこ、わざわざ戸籍に載せる必要があった?
 やはり謎である。そもそもその設定は必要だったのか。

 一方で四つ子が四つ子ではなかったことから「長男は誰だ」争いが勃発する。
 この際、誰でもいいのではないかと思うけれど、勝と悟が「長男性」みたいなものに過剰に拘っているために、妙な雰囲気となり、一触即発となり、殴り合いが勃発する。 

 そして、父親の一周忌に集まった彼らは、その後の状況の変化を受け入れ、末っ子への過剰な思い入れと思い込みが一時失われたものの適度に復活し、何故か一二三の存在が忘れられがちでありつつも少しだけ影が濃くなった感じがあり、「別れる」と言われて本当に別れていたらしい元彼女から「一緒に帰ろう」と言われる。
 幕だ。

 分からない。何というか、座りが悪い。
 どこにポイントを当てて見ればいいのか本当に分からなかったし、今も分かっていないけれど、とりあえず、一二三が「なるべく派手は服を着る」ことを止められるといいなぁ、もしかしたらなるべく派手な服を着続けるかも知れないけれどその理由を忘れられるといいなぁと思った。

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