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「ダブル」
劇作・脚本 青木豪
演出 中屋敷法仁
出演 和田雅成/玉置玲央/井澤勇貴
護あさな/牧浦乙葵/永島敬三
観劇日 2023年4月8日(土曜日)午後1時開演
劇場 紀伊國屋ホール
上演時間 2時間20分
料金 8500円
ロビーではパンフレットや原作漫画が販売されていた。
また、「写真撮影可」のマークとともに出演者たちの舞台写真(ポートレートと言うべきかも)がパネルに入って飾られていたり、原作漫画のページが額に入って壁に飾られていたりした。
ネタバレありの感想は以下に。
原作漫画を読んだことはなく、ストーリーなどもほぼ知らずに見に行った。
チラシ等を見たときの予想は、「男版のガラスの仮面?」というもので、当たっているといえば当たっている、当たっていないといえば全く当たっていない感じだった。
何というか、どこにポイントを置いて見るかで、似ていたり似ていなかったりするような気がする。
ロビーで飾られていた原作漫画を見ると、出演者全員、かなりビジュアルで原作漫画に似ている役者を選び、役者の方も思いっきりビジュアルを原作漫画に寄せるべく作っている感じがした。
流石である。
ただ、舞台上で主役二人の実年齢の年齢差は隠せず、玉置玲央演じる「友仁」が和田雅成演じる「多家良」よりも5〜6歳は年上という設定なのかと思って見ていた。
つまらないことのようで、結構、この二人の年齢をどう見ているかで舞台の印象も変わったような気がする。
舞台上には、多家良の住むマンションの一室がセットで作られていて、セットの転換はない。物語は常に彼の部屋で展開する。
ここには、友人というよりは私設マネージャーに近いような友仁を始め、劇団の先輩である
演技の天才(というところがやっぱり「ガラスの仮面」を思い出させる)の多家良と、その多家良を育てようと「演技のいろは」を教え込み、生活全般まで面倒を見ている友仁の二人が、漫画的には「世界一の役者」を目指すストーリーだそうだけれど、舞台は原作漫画の一部を切り取っていて、「世界一の役者」を目指したいと多家良が意識して声にするところまでが描かれている。
多家良が友仁の属していた劇団の舞台を見て、芝居がしたいとその劇団に入団し、多家良は「友仁」に追いつきたいと心底思っているようだけれど、客観的には、そして友仁から見ても多家良は「天才」で、芸能事務所に見いだされ、テレビや映画の世界に進出している。
そういうところから舞台が始まる。
何というか、「天才」を演じるのは大変だよなぁと思う。
「天才っぽく」見せることは多分できて、それはエキセントリックな役柄の方が作り込みやすいということにも繋がると思うけれど、しかし「天才っぽい」ことと「天才」であることは全く違う。
「天才っぽい」ところのない「天才」を演じるって、何だかハードルが高すぎてクラクラする。難し過ぎる。
この舞台での多家良の天才っぷりは、玉置玲央を始めとする周りの役者陣の力と合わせることでより本物感を出しているのではないかなぁと思った。
「天才」も難しいけれど、天才に焦がれる多分天才ではない天才に懐かれる役者、という役だって大変だ。
もの凄い葛藤ありまくりである。
この舞台が「成立」しているのは、この複雑極まりない(実はもっと色々と複雑な感情が渦巻いている)役を演じた玉置玲央の力が大きいと思う。そもそも「役者が役者を演じる」だけで、相当にキツいことなのではないか。
この舞台の登場人物は5人の役者と一人のマネージャーで、そこでキツいとか言っている場合ではないのかも知れない。
そして、6人共がよく通るいい声をしていて、しかも声の使い分けが上手い。そういう役者さんたちが作る舞台というのは本当に気持ちがいい。しつこく主張するけれど、やっぱり役者は声だと思う。
ひそひそ声や小さな声、つぶやきもきちんと客席の一番後ろまで届かせるってどういう技術なのかと思う。
かなり後方の席だったので、実は役者さん達がマイクを使っていたかどうか確信が持てないけれど、それでもそう思う。
この舞台のオープニングは「白鳥に湖」で、熱海殺人事件みたいじゃんと思っていたら、熱海殺人事件も飛龍伝も登場してきて、かなり嬉しかった。
やはり今の若い人たちにとっての「伝説の舞台」というとつかこうへいになるのかなぁと思う。
つかこうへいは口立てて台詞を伝えていたと聞くし、多家良が台本を読めずに友仁に台本を読んでもらって台詞を覚えるという設定も、ある意味オマージュなのかしらと思う。
多家良が出演していた舞台「飛龍伝」に、友仁が代役として参加したことから、最後、多家良と友仁が三人芝居の「飛龍伝」で男の役二人を交互に務める追加公演が決定され、「世界一の役者を目指す」と言った多家良がそれを受ける、というところで終わる。
ついつい集中して見てしまい、自分一人で酸欠になっていたようで、見終わって劇場を出たら頭痛がしていた。莫迦である。
でも、それくらい先が気になり、二人が気になり、集中した舞台だった。
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