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2023.08.06

「ピエタ」を見る

asatte produce 「ピエタ」
原作 大島真寿美
脚本・演出 ペヤンヌマキ
音楽監督 向島ゆり子
出演 小泉今日子/ 石田ひかり/峯村リエ
    広岡由里子/伊勢志摩/ 橋本朗子/高野ゆらこ
    向島ゆり子/ 会田桃子/ 江藤直子
観劇日 2023年8月5日(土曜日)午後1時開演
劇場 本多劇場
上演時間 2時間30分(10分間の休憩あり)
料金 8500円

 ロビーではパンフレットや原作小説、Tシャツ等が販売されていた。
 ネタバレありの感想は以下に。

 asatteの公式Webサイト内、「ピエタ」のページはこちら。

 ヴィバルディを主役に据えた、ヴィバルディが登場しない戯曲、という感じだった。
 時はヴィバルディの死後、場所はヴィバルディが住んでいたベネツィア、舞台に登場するのは全員がヴィバルディと何らかのつながりがあった女性で、唯一、ゴンドリエーレの男性が歌声でだけ登場する。
 何というか、ストーリーらしいストーリーはないような気がする。
 ヴィバルディをとりまく女性達の「それから」を描くことで、ヴィバルディを語ろうとしている舞台、という感じだ。

 そこを際立たせるべく、舞台上にチェンバロっぽい音を出すグランドピアノっぽい見た目の鍵盤楽器(結局、何という楽器なのかは分からなかったが置かれ、ピアニストとバイオリニストが生演奏している。
 また、ヴィバルディに「ピエタ」という慈善院で音楽を教わった中でも突出してヴァイオリンが上手だった女性は役を演じつつ演奏し、突出した声楽が上手かった女性は役を演じつつ歌を歌う。
 実は、最初のうちは「本当に演奏している?」「本当に歌っている?」と失礼なことを考えていた。マイクを使っていたのだろうか。よく分からない。

 ヴィバルディというよりも「音楽」が主役だったのかもしれない。
 ここで「ヴィバルディの音楽」と書けないのは、私がヴィバルディの曲だと特定できたのが「春」だけだったからだ。
 ここで、全曲がヴィバルディの曲だったら凄いけど、果たしてどうだったろう。

 そして、ところどころで古典的っぽい振り付けのダンスが披露される。
 いわゆる社交ダンスではなくて、何というか、演舞っぽいと言えばいいのか、みんなが同じ方向を向いて踊るような感じのダンスだ。
 登場人物たちはほぼ全員が白やクリーム色の長いドレスを着て白い靴を履いている。
 もう少しゆったりとした動きと優雅な雰囲気を強調すると、さらに「時代」を表す感じになったのではないかと思う。

 「ヴィバルディを語る」中心となっているのは、小泉今日子演じるピエタで育ちピエタで働くエミーリア、石田ひかり演じる貴族の娘ヴェロニカ、峯村リエ演じる高級娼婦(舞台上ではカタカナで名乗っていたけれど覚えていない)のクラウディアの3人である。
 ここに、女性歌手の姉でヴィバルディをずっと慕っていた女性や、ピエタで育って今は薬屋のおかみさんになっている女性、ヴィバルディの妹らが加わる。
 一応、ヴェロニカが「裏面にいたずら書きをした」ヴィバルディの楽譜を探すという謎は提出されているけれど、そこはあまり重要視されていないように見える。

 では、何に焦点が当てられていたかと言われると、何ともほわっともやっとしている。
 原作小説も読んでいないし、「さて、どうなるのか」という興味でずっと最後まで引っ張られ集中して見ていたけれど、見終わっても何だか五里霧中という感じがしている。
 ヴィバルディの楽譜の裏に落書きをしたというヴェロニカの立ち位置が今ひとつ分からなかったのが、この五里霧中の理由のかなりの部分を占めているように思う。

 彼女が何を求めていたのか、クラウディアが彼女を褒めまくったのは何故なのか、ヴェロニカが最後にクラウディアを自宅に引き取り高額のアヘンで彼女の痛みを取ろうと努力したのはどうしてだったのか。
 もう少し分かりやすく教えてください、と思う。洞察力がなくて申し訳ない。
 エミーリアが「楽譜を探す」役割を担い、この舞台の狂言回しを同時に引き受けていたので、最後がクラウディアとヴェロニカに集約していった動きも、うーん、何故だろう? と思った。

 もしかして、「楽譜の謎」が、ヴィバルディがゴンドリエーレの男性に口伝えで教えた歌が、ヴィバルディが譜面を書きヴェロニカが裏に書いた詩を歌詞としたものだったから、という「答え」を提示するためだったのかなとも思う。
 うーん、やはりよく分からない。

 最後まで集中して見たにも関わらず、この舞台の中心を見誤り、肝心なところを見逃してしまっている感じがある。
 原作小説を読んでみようと思っている。

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コメント

 みずえ様、コメントありがとうございます。

 みずえさんはご覧になれなかったのですね・・・。残念。
 少しだけでも気分を味わっていただけたようで良かったです。

 エミーリアが自分のお母さんを探しに行ったときに助けてくれた人がいたエピソードは、クラウディアとの会話に出てきたと思います。
 ただ、私が注意力散漫で聞き逃したのだと思いますが、エミーリアの相手がヴェロニカのお兄さんだとは明言されていなかったかも知れません。
 ヴェロニカが、お兄さんの昔の話として独白していたような気がしますし、エミーリアに「お兄さんがエミーリアに求婚したときにどうして断ったの?」というようなことを言っていたような気もしますが・・・。

 原作小説はロビーでも販売されていたのですが、電子書籍でないかなぁと思いその場では購入しなかったのですが、何と! 電子書籍化されていませんでした。
 ので、文庫本をその後購入しまして、ちょっとだけ読んだところです。
 エミーリアが語り手になっているところや、その語りの雰囲気などは忠実に舞台化されていたんだなぁと思いました。まだ数ページなんですけれども。

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2023.08.12 17:06

姫林檎さま

私はこれの原作を読んでおり(大島真寿美さんのファンなのです)、もちろん公演も観るつもりだったのに、まさかの落選!
誰がどの役を演ったのかも、ここで知りました。
原作でもヴィバルディはほとんど出てきませんし、私も「春」しかわからないかも……読みながらウィキで経歴を調べたくらいです。
原作も女性ばかりですが、エミーリアとヴェロニカのお兄さんとのエピソードなどは出てきましたか?
原作はわりと長かったので、舞台で全部描くのは難しかったかもしれません。
一読をお勧めします。

観れなかったけど、ここに記していただいて少し溜飲が下がりました。
ありがとうございました。

投稿: みずえ | 2023.08.09 09:48

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