「眠くなっちゃった」を見る
ケムリ研究室no.3「眠くなっちゃった」
作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演 緒川たまき/北村有起哉/音尾琢真/奈緒
水野美紀/近藤公園/松永玲子/福田転球
平田敦子/永田崇人/小野寺修二/斉藤悠
藤田桃子/依田朋子/山内圭哉/野間口徹
犬山イヌコ/篠井英介/木野花
観劇日 2023年10月14日(土曜日)午後1時開演
劇場 世田谷パブリックシアター
上演時間 3時間30分(15分の休憩あり)
料金 12800円
物販のチェックはほとんどできなかったけれど、パンフレットは販売されていたと思う。
ネタバレありの感想は以下に。
「ネタバレあり」と書いたものの、実際のところ「どんなストーリーだったのか」というのは難しい。
何というか、元々あった1本のお話を、捻りに捻り、抜いたり付け加えたりして、この舞台になった、という感じである。
要するに、つかみ所がない。
お話としては、最後に主要登場人物がほぼ死んでしまっている訳で、決して明るい話ではあり得ないのに、何故だか「優しくなったな」と思った。どこが優しいのか、我ながら不可解だ。
大体、この物語の世界観というか、この物語が進行している世界の状況はかなり酷い。
中央管理局という組織があって、世界の気温を始めとするあらゆることを牛耳っており、しかし、中央管理局職員たちはその「命令」がどこから出ているのか全く知らされていない。
きっと、その命令の「意味」だって知らされていないだろうし、その命令が正しいのか根拠があるのかだって考えてはいけないことになっているのだろうし、考えたら最後粛正されてしまうような場所なんだと思う。
終わりに向かって着々と進んでいる世界が舞台だ。暗くない筈がない。
登場人物の多くは半端に顔を白塗りしていて、世界の終わり感を常に高めている。
具体的に何も救われていないし、繰り返すけれど登場人物たちはこの舞台を通じて次々と死んでいってしまう。理不尽だ。
それでもこの世界に救いはあるように思えた。不思議だ。
「ケムリ研究室」は、作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチと、女優の緒川たまきの二人で立ち上げたユニットで、この「眠くなっちゃった」が3作目である。
ケムリ研究室立ち上げの意図は知らないのだけれど、勝手な印象としては「緒川たまきを見せる場」だと思った。
この舞台で緒川たまきが演じた「ノーラ」という女性も、殺人1件、傷害も窃盗も二桁の犯罪歴があり、現在は娼婦をしていて、しかし住んでいるアパートの大家さんの女性に可愛がられ、新たにやってきた「指導監察官(だったか」のリュリュという男性にも、稀代の歌手らしいボルトーヴォリという男にも滅茶苦茶執着されるという役柄だ。
むちゃくちゃだ。
大体、「指輪をもらっちゃった」と人の指をハンカチで包んでコートのポケットに入れて持ち帰ってくる女を、スプラッタでなく、むしろ「純真」みたいに演じ、さらに客席から笑いも取ってしまうなんて、むちゃくちゃすぎる。
でも、彼女が演じていると自然でなく不自然に思えるのに自然に存在するという謎な存在として舞台にいることができる。何だか凄い。
これを説得力というのか。
その「説得力」を生み出しているのは、緒川たまきの佇まいだけでなく、もの凄く豪華な出演者陣でもあると思う。
言い方としてどうかと思うけれど、無駄に莫迦みたいに豪華だ。
10人くらいで舞台上にいても、一人や二人で舞台上にいても、同じ密度で舞台が埋まっている。むしろ、一人や二人で舞台に立っているときの方が、より威力があるようにも思う。
多分、自分の存在感みたいなものを役者陣がそれぞれコントロールしているのだと思う。
役者さんたちの多くが顔を白塗りしていたし、舞台全体が暗めだったし、一人で数役を演じる役者さんが多かったこともあって、役の見分けがときどきつかなかった。
ほぼほぼ自分のせいだけれど、それで時々、混乱した。
「この人誰だっけ?」とか「この人とこの人は親子だから似ている? だから同じ役者さんが演じている? それとも出演シーンが重ならないから?」とか、ボケっとしているとあっという間に置いて行かれる。
世界の終わりに向かって、その世界で生きている人たちが次々と死んだり殺されたりして行く。でも、多分、優しい。そういう舞台だったと思う。
もの凄く体力を持って行かれた。
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コメント
みずえ様、コメントありがとうございます。
「眠くなっちゃった」は初日が延期になっていたのですね。存じませんでした・・・。
みずえさんが無事に観劇されることができて何よりでした。
プロジェクションマッピング、凄いですよね。
毎回、「映画みたいだよ〜。」と思います。カッコ良いですよね。
カッコ良いといえば、もの凄く力説して熱く語っているのですが、なかなか友人たちに「古田新太が格好良い!」と理解してもらえません(泣)。
いや、髑髏城見て! と思います。
私は分かりやすい格好良さが好きなのです(笑)。
なので、みずえさんが北村さんについて語っていらっしゃることもよく分かります!
またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
投稿: 姫林檎 | 2023.10.16 22:31
姫林檎様
私も観ました。劇場機構のトラブルで初日が延びたので、観れるかドキドキしましたが、無事観れて良かったです。
この舞台は、「近未来を舞台にした大人のための寓話」がテーマだそうですが、電話の形態や、テレビやPCがなくてラジオが主流だったりと、むしろ昔懐かしい感じがしましたね。ロボットはいたけれど。
役者さんは確かに豪華でしたが、皆さん複数の役を演られているので、席が二階だったせいもあって、誰が何やらわからなくなることもありました。
そして、緒川たまきさんは素晴らしい女優さんですね。
ケラさんの舞台でしか拝見しませんが、彼女の持つ軽やかさ且つ妖艶さは、他の女優さんにはないものなので、もっといろんな舞台に出てほしいです。
舞台のセットというか、プロジェクションマッピングといっていいんでしょうか、圧倒されました。
これもケラさんの舞台の特徴ですね。
いい舞台でした。
ラストは泣きそうになりました。
北村さんは、イケメンではないけれど(失礼)、色気のある俳優さんだと思います。
特に舞台だとそう感じます。テレビだとここまでは思わないんだけどなあ。
投稿: みずえ | 2023.10.16 10:20