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2023.12.03

「連鎖街のひとびと」を見る

こまつ座 第148回公演「連鎖街のひとびと」
作 井上ひさし
演出 鵜山仁
出演 高橋和也/千葉哲也/加納幸和/鍛治直人
    西川大貴/朴勝哲/石橋徹郎/霧矢大夢
観劇日 2023年12月2日(土曜日)午後1時開演
劇場 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
上演時間 2時間55分(15分の休憩あり)
料金 8800円

 ロビーではパンフレット等が販売されていた。
 また、「やっこ会」というファンクラブのような組織を発足させるそうで、その案内などもされていた。

 あと、ガチャガチャがあったと思う。中味は何だったのかチェックしそびれた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 こまつ座の公式Webサイト内、公演情報のページ「連鎖街のひとびと」の情報はこちら。

 戦時下で劇作家が台本を書く話というと、三谷幸喜の「笑の大学」を思い出す。
 なので、以下のようなちらしの文章を見て、ふっと「笑の大学みたいな感じかしら」と思いながら席に着いた。

***** ***** ***** ***** 

昭和二十年 旧満州国 大連市
取り残された劇作家たちに課せられた使命は
通訳将校歓迎会の台本作り
しくじればシベリア送りの状況下
時間も食事も何もかもが足りない中で
生み出されたのは起死回生の逆転劇

***** ***** ***** *****

 説明が入るまでそこが地下室とは思っていなかった。確かに窓は高いところにあったけど、ドアが普通にある。何なら地上に向かう階段を設定しておいてくれれば地下室って私にも分かったのに! と思う。
 そこにいる劇作家二人は、上演時間30分の戯曲を書こうとして、しかし、1行も書けていないらしい。
 窓から逃げだそうとしている。
 加納幸和演じるその家の使用人”陳さん”が「見張りは一人だけじゃない」と言いつつもう一人として時分の主人を指し示すことからも、缶詰なのか監禁されているのか、微妙な感じだ。

 そのうち、鍛治直人演じるここ大連市の市議会議員が彼ら二人の劇作家の依頼人であり、どうやら原稿料も払ってくれるらしい、しかし限られた時間の中もし戯曲を完成させられなかったり、日ソ不可侵条約を破棄してあっという間に大連を征服して封鎖したソ連(劇中ではロシアと言われていたような気もする)の軍人を満足させられなかったりしたら、シベリア送りになるかもと震えている。
 どこまで本気なのか分からないけれど、多分、もの凄く本気だ。

 最初のうちは、千葉哲也演じる劇作家が主導してこの場を逃げる方向で対応しようとしていたけれど、うっかり破格の原稿料をもらってしまい「全く書けていない戯曲をいかにも完成した風に装って市議議会議員にバレないようにする」ことを目指してドタバタする。
 さらに、高橋和也演じる新劇の劇作家の甥っ子である西川大貴演じる作曲家を呼んであり、彼が朴勝哲演じるピアニストとともにやってくると、彼らのことも「戯曲はもうできた」と誤魔化さなければならなくなる。

 極めつきは、霧矢大夢演じる主演女優にと望んでいた女優がやってきて、しかし彼女が石橋徹郎演じる元恋人に迫られてつい絆されてしまうところを、現恋人であり劇作家なお甥っ子の作曲家に目撃されてしまう。
 良くも悪くも「いい子」の劇作家は「世界を失った」と赤ちゃん返りをしてしまう。
 ない、それはない、と言いたい。

 しかし、劇作家二人は、この女優と話し、作曲家の「誤解」を解こうと決めるものの、普通に説明したところで作曲家が信じる訳もない。
 かつ、女優の元恋人は、元役者で現在は日本軍の文化担当官であり、劇作家の一人は彼が役者だった時分に劇団で可愛がっていた女優に手を出されて彼女が女優の道を断たれたという過去があり、劇作家のもう一人は現在進行形に近い形で検閲でいじめ抜かれているらしい。
 二人とも「どうせなら復讐したい」と思っている。
 欲張りだ。
 しかし、甥っ子の恋を取り戻してやることが第一優先である。過保護である。

 散々呻吟していたところ、主人の10円はげを心配した陳さんが「隠すには丸坊主にしてしまえばいい」的なことを言い、それを聞いた劇作家二人が同時に「昨日の痴話劇を、今書いているこの戯曲の一場面として取り込んでしまえばいい」「昨日の女優と担当官のやりとりは役者二人の稽古だということにしてしまえばいい」と閃く。
 閃かないから! というツッコミはどこにも届かない。

 この「昨日の痴話げんかを今日の戯曲に取り込んだ」舞台の稽古シーンがもうびっくりである。
 本当に「戯曲の一部」としてすっかり取り込んでしまっている。
 井上ひさしっぽい仕掛けと種明かしが一気に展開されている。何と言うか「見どころだぞ〜!」というドヤ顔が見えるようである。そうしたくもなる。
 もちろん、甥っ子の作曲家もコロっと騙される。

 ここで大団円にならず、続きがあるところも現実的である。
 いきなり元気になった作曲家が「この芝居をオペレッタにする」と言い出して、次の稽古シーンはいきなりミュージカル調だ。
 あと、劇作家二人が役者から転職した文化担当官への意趣返しとして、彼の台詞だけを長く、そして彼が一々ロシア語の長ったらしい発音しにくい固有名詞をしゃべらなくてはならなくしているところも可笑しい。
 可笑しいけど、復讐としては地味である。心優しすぎる。

 そうして稽古も盛り上がって来たところ、市議会議員が帰ってきて、この舞台の上演がキャンセルになったと告げられる。
 また、大連から日本に「大連にいる日本人を日本に帰国させてくれ」と要望書を送っていたところ、日本政府から「自力で帰れ」というほぼ見捨てたに等しい返答が帰ってくる。
 甥っ子の作曲家も、この戯曲の仕掛けに気づく。

 しかし、彼らはめげない。
 この地下室を劇場に改装し、いつかここで芝居を上演しようと話し始める。
 どこにいようと、自分達は劇作家だし役者だし女優だし作曲家だし音楽家だし実業家だと決意を新たにする。
 「新劇に劇作家」と「大衆演劇の劇作家」が知恵を出し合い、何故か、舞台上では「その場で足踏みをしたりかけったりしている役者がいて、背景や通行人が動くことで、その場での足踏みを歩いているように見せる演出」の練習が始まる。
 何故だ。
 何故だかよく分からないけれど、楽しそうである。

 きっとこの登場人物達には、確固としたモデルがいるんだろうな。知りたいな。
 そう思った。

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