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2024.02.11

「大誘拐 〜四人で大スペクタクル〜」を見る

「大誘拐 〜四人で大スペクタクル〜」
原作「大誘拐」天藤真(創元推理文庫刊)
上演台本・演出 笹部博司
ステージング:小野寺修二
出演 中山優馬/柴田理恵/風間杜夫/白石加代子
観劇日 2024年2月10日(土曜日)午後2時開演
劇場 シアター1010
上演時間 1時間45分
料金 8800円

 ロビーではパンフレットが販売されていた、と思う。

 ネタバレありの感想は以下に。

 「大誘拐 〜四人で大スペクタクル〜」の公式Webサイトはこちら。

 「ネタバレあり」とは言っても、ストーリーは原作小説「大誘拐」にほぼ沿っていた。
 何しろ、白石加代子が台本っぽい冊子を手に登場し、第一声で「大誘拐 〜四人で大スペクタクル〜」「天童真作」と宣言したくらいだ。
 あの長編小説をどうやって1時間45分にしかも役者4人で上演するのかと思っていたら、ト書きを読むというか役者陣が代わる代わる「説明役」を務めて舞台を進めることでクリアしていた。
 なるほどと思う。

 舞台上には、真ん中に左右に開く扉のようなものが置かれている。
 何と言うか西洋風の丸い扉で、何故この意匠を選んだのだろう? と謎だった。場所を特定しないため、なのかも知れない。
 また、何故かギリシャ風(に見える)の低い柱と、椅子が何脚かあって、舞台セットはこれで全部である。少しばかりがらんとしているようにも見える。

 もちろん小説の登場人物は多くて、中山優馬が主に誘拐犯である健次を、白石加代子が誘拐される大奥様を、風間杜夫が誘拐事件を捜査する和歌山県警本部長を、柴田理恵が大奥様の忠実なメイドであったくらを、それぞれ演じつつ、他の役も次々と演じては物語を進めて行く。
 衣装を変えることもあれば、手っ取り早く「報道局長」なんて書いた名札を付けて表したりもしていた。
 つまりは色々と無理をして1時間45分の芝居に凝縮している訳で、そんな荒技を楽しそうにやりきっているのは、やはり白石加代子のパワーがあってのことだと思う。

 登場し、台本っぽい冊子を構え、読み始めると、その声だけで劇場の全部をかっさらって行く。
 突然、「優馬くん、それ取ったら?」と役柄上被っていたストッキングを取るように促し、客席に向かって「お客様には優馬くんはマスクを被っていると思っていただくことにして」なんて言い出して、あっさり了承を奪い取って行くような荒技、なかなか使える人はいない筈だ。
 彼女がそうして場の空気をかっさらっているから、その後、くらに「芸をしろ」と言われた健次に中山優馬のデビュー曲を歌って踊るようにけしかけたり(そして、実際に歌入りの音楽をバックに踊っていた)、柴田理恵が風間杜夫に「あんたも芸をしろ」「韓国語で”釜山港へ帰れ”を歌います」と勝手に宣言し、実際に歌い始めた風間杜夫の頭を「長すぎる!」とはたいたりできてしまうのだと思う。

 若干、内輪受けっぽいところもあるし、舞台上でこらえきれずに笑い始めたりしているのは、好みとしては「違う」「置いて行かないで!」と思うけれど、でも、これができてしまい、成立するのは、芸達者な4人が揃ったからこそということも分かる。
 贅沢だ。

 小説は何度も読んでいて、上演中は「どこを切り取るのかなぁ」と思いながら見ていた。
 健次が大奥様を誘拐するまでに結構な時間を割いていて、誘拐された大奥様のテレビ対面はともかく、身代金の受け渡しはさらっと済ませていた。
 そうなると、この舞台、この台本は、健次が中心なのだなと分かる。開幕と幕が下りる瞬間に舞台上にいるのは白石加代子一人で、彼女が支えているのはもちろんなのだけれど、それでも彼女が最後に語っているのは家族のことでもなく、柳川家といういわば「職場」のことでもなく、「一番迷惑をかけられた」不肖の弟子の県警本部長でもなく、健次のことである。

 例えば、誘拐犯から解放された大奥様が記者会見をするシーンとか、遊び人の画家崩れだった次男が突然山地経営に目覚めるシーンとか、大奥様の子供達が一致団結して山林を売って身代金を作るシーンとか、原作小説には多くの「名場面」があって、それを見られなかったのは残念な気持ちもある。
 しかし、その辺の「大奥様の子供達」の成長物語は、県警本部長の「(子供達が一致団結できたのであれば)この誘拐は無駄ではなかった」的な台詞に集約されているし、ここで表現しきったのだと思う。
 思い切っている。

 そうして、この舞台は、健次の成長物語として再構築された「大誘拐」なんだな、と納得した。
 同時に白石加代子の神通力が炸裂した舞台だった。可愛すぎる。流石だ。
 楽しかった。

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