「殺文句」を見る
柿喰う客「殺文句」
作・演出 中屋敷法仁
出演 玉置玲央/中屋敷法仁/七味まゆ味
村松洸希/永田紗茅/長尾友里花/沖育美
齋藤明里/原田理央/今井由希/淺場万矢
観劇日 2024年6月1日(土曜日)午後2時開演
劇場 本多劇場
上演時間 1時間50分(終演後に約10分間のアフタートークあり)
料金 5500円
ロビーではパンフレットや缶バッジ等が販売されていた。
柿喰う客はグッズが豊富だ。
終演後の物販では、「パンフレット完売!」の歓声が上がっていた。
ネタバレありの感想は以下に。
柿喰う客の公演を観るのは久しぶりな気がすると思って見てみたら、5年ぶりの観劇だった。
久しぶりの筈である。
見覚えのある俳優さんが3人(中屋敷法仁、七味まゆ味、玉置玲央)しかいない! と焦っていたら、アフタートークに出ていた俳優さんが「今回の出演者は11名ですが、劇団員はもっとたくさんいます!」と言っていて、サイトを見たら見知った顔があってほっとした。
「殺文句」は男優3人、女優8人が登場し、何となく「劇団員に女優が多いから登場人物も女性が多くなったのかしら?」と勝手に思っていたのは、全く的外れだったらしい。
ということは、この配役は「狙った」ということになる。
その方が柿喰う客っぽい、と思った。
もの凄い早口の台詞が隙間なく発せられて、最初のうちはなかなか聞き取ることができなかった。
滑舌が悪い訳では全くない。むしろ、このスピードで言い間違いがあったり詰まったり噛んだりしていることがほとんどない。超絶技巧の台詞術、という感じすらある。
だから、時間が経つにつれてこちらの耳も慣れてきて、次第に台詞を聞き取れるようになって行く。
それでも、台詞の全ては聞き取れていなかったと思う。
ほとんど早口言葉みたいに台詞を言うのは、なかなかえげつない「中味」をストレートに伝えないためということもあるのかなと思う。
舞台は人材派遣会社の総務部で、そこに、痴漢行為で逮捕された元営業部の広報戦略室室長や、労働組合の壊滅を請け負った広報戦略副室長、労働組合の壊滅を依頼した人事部労務課長が絡んでくる。
せっかく見事なスピードでカバーしていたのにここで「問題」をさらけ出すのもどうかと思うけれど、労働基準法、多様性、ジェンダー、暴力、宗教、社会運動等々の「現代社会の闇」的な様々な問題をこれでもかというくらいぶち込んである。
えげつないし引く。
ひー、と思うけれど、同時に、本当に珍しいことに客席に若い子(イメージとして「若い人」よりもさらに若い)が多いことに気づく。
この刺激とこの内容とこの表現は、若者たちにもの凄く受け入れられているということだ。
終演後も「凄かった」「良かった」と話す声が聞こえてきた。
そういえば、一人や二人ではなく、数人のグループで来ていた若者たちも結構多かったように思う。
「ミュージック!」と役者さんが叫んで音楽が入り、ダンスが始まる。
総務部の女優陣はいわゆる「事務服」を着て同じ衣装なので、よりダンスの「揃っている」感が強調される。振付を間違えたら絶対に目立つ奴! と思う。
格好いいなぁ、と思う。
そして、何より玉置玲央が凄い。
玉置玲央の声が聴きたいというのがチケット購入理由の過半を占めていたのだけれど、舞台が始まってみたら、しゃべらない。
本当にしゃべらない。
ほぼ舞台に出ずっぱりなのに、全くしゃべらない。
話しかけられて反応はしているけれど声を出すことはない。
声封印かよ! 贅沢すぎるだろう! 劇団だからこそできる演出だよ! と思う。
そして、声を封印された玉置玲央の身体能力の高さが強調される。
運動神経という意味でもそうだし、しゃべることなく感情を伝えるという意味でも凄い。
これは圧巻だった。
最後、「殺し文句」とタイトルを呟いた声が本人の声だったのか、肉声だったのか、他の人の声の録音だったのか、気になる。「本人の声を録音」だったと予想する。
聞き取れていなかった台詞も多分この後じわじわと効いてくるのだと思う。
そういう舞台だった。
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