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2024.06.30

「ウーマン・イン・ブラック」を見る

パルコ・プロデュース2024「ウーマン・イン・ブラック」
原案・原作 スーザン・ヒル
劇作・脚本 スティーブン・マラトレット
演出 ロビン・ハーフォード/アントニー・イーデン
翻訳 小田島恒志
出演 向井理/勝村政信
観劇日 2024年6月29日(土曜日)午後1時開演
劇場 パルコ劇場
上演時間 2時間15分(20分間の休憩あり)
料金 11000円

 ロビーではパンフレットやトートバッグが販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 パルコ劇場の公式Webサイト内、「ウーマン・イン・ブラック」のページはこちら。

 「ウーマン・イン・ブラック」はとにかくゾっとしたことと、二人芝居と銘打ちつつ「3人目の出演者」である黒衣の女が舞台に登場すること、斎藤晴彦と上川隆也出演の舞台を見ていたことくらいしか覚えていなかった。
 舞台の始まりが「舞台の稽古」であったことも忘れていて、最初、登場した二人がどんな関係なのかも思い出せず、???と思っていた。
 我ながらダメダメな記憶力である。

 そのうち、勝村政信演じる弁護士が、向井理演じる俳優に、自分が体験したことを家族に伝えるための朗読(あるいは芝居)のコーチを頼んだのだということが分かってくる。
 そういえば、向井理が演じていた「俳優」に名前があっただろうか。思い出せない。
 そして俳優は、自身がキップス弁護士を演じ、キップスにキップスに関わった他の全ての人を演じることを提案して稽古を進めて行く。

 「通しで最後まで演じてみる」中で、そこは「稽古」ではなく、「若い頃のキップスが体験したことの再現」になって行く。
 二人芝居でこの設定はかなり辛いよなぁと思う。どちらにも辛い。
 若手の俳優は「素人に演技を教える役者」を演じなくてはならないし、相手役の俳優は「最初は演技ド素人のキップス弁護士」とキップス弁護士に関わった他の全ての役を演じなくてはならない。
 何てハードルの高い設定だろうと思う。

 勝村政信と向井理のコンビは、何というか、爽やかさと愛嬌が持ち味だと思う。
 二人の俳優のキャラクターによって、色々なコンビが生まれるし、様々な味の舞台が生み出されるのだろう。特に、勝村政信の演じる堅物のキップスや、偏屈者のおじさん達にはみなどことなく愛嬌がある。
 今回の演出の二人はオリジナル版の演出家だそうだ。開演前のアナウンスを彼らが英語で(「アリガトウゴザイマス」などは日本語で)行っていたり、茶目っ気のある感じがした。そこも含めて「演出」なんだろうなと思う。

 潮が引いているときにしか行けない屋敷の87歳の女主人が亡くなり、そこに若い頃のキップスが顧問弁護士として派遣される。
 書類整理等々を行うことになるが、その屋敷は「曰く付き」で様々な噂があり、近くの街の人々から恐れられている。
 果敢に乗り込んだ若かりし頃のキップスは、その亡くなった女主人の葬儀や墓地で「黒衣の女」をたびたび目撃し、屋敷に行けば様々な「怪奇現象」に悩まされ、目撃したら悲劇が起こるという噂どおり、家族を喪ってしまう。

 その「悲劇」を今のキップスは家族に伝えたいと思ってこの稽古を始め、そして、稽古は無事に終わる。
 俳優は「稽古に参加していたあの女優は誰です?」と最後にキップスに尋ね、キップスは「女優など連れてきていない」と答える。
 稽古中に俳優が見かけた「黒衣の女」は「黒衣の女を演じる女優」などではなく、「本物の黒衣の女」で、その黒衣の女を目撃した俳優には妻と4歳になる娘がいる・・・。
 そこで幕である。

 稽古の間、俳優が「効果音ですよ!」とたびたびキップスに向けて説明していることも、稽古の場面に登場する「黒衣の女」が「本物」ではなく「稽古のために依頼した女優」であるかのような錯覚を起こさせることに一役買っていると思う。
 あの黒衣の女を演じていた女優さんは誰なんだろう? 声は流れたけれど、顔は白く塗られていたし、誰が演じているかは全く分からなかった。分からないことで恐怖感がさらに高められているような気もする。

 「キップス弁護士が若い頃の体験を芝居で上演するための通し稽古」という枠を作ることで、様々な仕掛けを施すことが可能となり、ぞっとする感覚を上手に技巧を凝らして作りだしている舞台だと思う。
 (ほとんど忘れていたとはいえ)初見のときのインパクトには敵わないけれど、それでもやはりぞっとした。

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コメント

 みずえ様、お返事が遅くなりまして申し訳ありません。
 そして、コメントありがとうございます。

 みずえさんは8年前の公演をご覧になったのですね。
 この舞台、本当に怖いですよね。
 今回は、2回目ということもあり初回ほどの震えはなかったですが、それでもやはり怖かったです。

 上川さんと斎藤さんのコンビも、向井さんと勝村さんのコンビも、どちらも魅力的でした。
 ずっと同じ配役で見続けたい気もしますし、色々な俳優さんたちに演じていただきたい気もしますし、複雑です(笑)。

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2024.07.06 11:15

姫林檎様

私はこの舞台は、2015年の勝村政信&岡田将生版を観ました。
岡田さんは、映像のイメージが強かったのですが、この難易度の高い舞台をかなり頑張って演じてらして、素敵でした。
ただ、怖かったです……。
効果音にも震えてました。
それでも役者二人の力量をこれでもかと見せる舞台ですし、今回もきっと見ごたえあったのでしょうね。
向井さんは、結構舞台やりますよね。
今後も楽しみな俳優さんだと思います。

投稿: みずえ | 2024.07.01 11:01

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