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2024.07.07

「江戸時代の思い出」を見る

結成30周年記念公演 第二弾 ナイロン100℃ 49th SESSION 「江戸時代の思い出」
作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演 三宅弘城/みのすけ/犬山イヌコ/峯村リエ
    大倉孝二/松永玲子/安澤千草/藤田秀世
    喜安浩平/眼鏡太郎/猪俣三四郎/水野小論
    伊与勢我無/木乃江祐希/池田成志/坂井真紀/山西惇
観劇日 2024年7月6日(土曜日)午後6時30分開演
劇場 本多劇場
上演時間 3時間20分(15分間の休憩あり)
料金 7600円

 ロビーではパンフレットやTシャツ等が販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 ナイロン100℃の公式Webサイト内、「江戸時代の思い出」のページはこちら。

 「ネタバレあり」と書いたものの、割と久々に不条理っぽいというかナンセンスコメディっぽいというか、そういう感じの舞台だったと思う。
 「理解しようとするんじゃなくて、そこで展開されていることを楽しめ!」的な感じと言えばいいんだろうか。
 タイトルのとおり、最初のシーンの舞台は江戸時代っぽい。「江戸時代にあった3大飢饉の一つ」という台詞があったり、「参勤交代の大名行列」なんていう台詞があったりしたから、江戸時代だろうことは分かる。

 ただ、そのうち、江戸時代の町人である武士道武士之介が、桂川人良という侍に「自分の思い出」を語り始めるのだけれど、何故か彼の思い出は「現代だな。少なくとも昭和以降だな」という時代のものとして語られる。
 ちなみに「少なくとも平成以降」と思ったのは、スマホが普及しているっぽかったのと、「タイムカプセル」なんてものが流行ったのは昭和後期以降じゃないかと思ったためだ。
 おかしい。

 かつ、この「武士之介」の思い出は、思い出である筈なのに何故かその場に武士之介と人良が登場したりできるようになっている。
 なっているというか、ふいっと「思い出」の場面の登場人物と話してみたりする。
 人良が台詞として言っていたけれど、時系列くらいちゃんとして欲しい。

 ただ、この辺りも計算のうちというか狙いのうちで、客席から観客の振りで役者が登場し、通路で芝居をする場面があったりする。
 久しぶりに見た。
 この客席から登場して「ロンドンではつまらない芝居のときは観客は堂々と席を立つ」的な台詞を言って帰ろうとする客に対し、「劇場の者」を自称して「上演中はロビーには出られません。ここはロンドンじゃないんだから」と押し返す人が、どう見ても死んじゃってる落ち武者なところがまたシュールだ。

 ここまで書いてやっと思い当たったけれど、シュールという言葉が一番合っている気がする。
 武士之介と人良と「おにく・おさかな・おやさい」という巫山戯た名前の三姉妹が切り盛りする茶屋と、武士之介の夢に出てきてはかき回すらしい「悪玉菌之介」というこちらも巫山戯た名前の男と、「けつ侍」と呼ばれる顔がお尻でかつ尺八を吹くという武士だったり、江戸時代の登場人物たちもリアルと「思い出」を行ったり来たりする。

 江戸時代の男が思い出している筈の「現代」の人間たちも、江戸時代の人間であるらしい悪玉に斬られたり、江戸時代からあったらしい井戸に落ちたり、悪玉が何故か彼らの同級生の夫という設定で武士の格好をして登場したり、やっぱり時と場所と次元をワープしまくる。
 訳が分からない。

 訳が分からないなーと思っていると、観客の一人にスポットライトを当て、ココロの声として「訳が分からないわ」とか「伏線が回収されるところを見に来たのに全く回収されない!」と言った「声」が流れたりする。
 可笑しい。
 そして、ベタである。ここまでベタなネタを使いまくっていいものか。
 オマージュなのか、強烈な皮肉なのか、「ネタ」なのか、迷う。

 特にオチが付いたという感じもなく暗転して「第一話 完」と映し出されたり(第三話+エピローグまであった)、タイムカプセルを掘り出そうとしていた小山辺りからどうしてここにいるのか分からない救世主が登場したり、カーテンコールが始まったか? と思ったら登場人物が「カーテンコールの音楽が聞こえて来たから」と井戸の中から登場したり、その井戸から繋がっている地下都市はけつ侍が反映させたものということになっていたり、しっちゃかめっちゃかである。
 メタでベタだ。

 「これでもか!」という感じで、ラストシーンは、幕開けのシーンに戻る。
 武士之介が人良に「自分の思い出話を聞いてくれ」と言うために声をかける。そして、ストップモーション、暗転で幕である。
 これも入れ子というのか? 繰り返しなのか? 無限ループし続けるのか?

 ミュージカル女優と、疫病に罹患した江戸時代のおえきという女と、顔が臀部の侍の姉(と配役表に書いてある)の三役を演じた坂井真紀に全く気がつかずに驚いた。おえきを演じているときは「坂井真紀だ」と分かったけれど、ミュージカル女優と侍の姉を演じているときは全く気がつかなくて、カーテンコールで目の前にミュージカル女優の紛争をした坂井真紀がいたのに「どうして坂井真紀がいないのかしら?」と思ったくらいだ。
 私の目とか注意力とかの問題かも知れないけれど、やっぱり凄かったと思う。

 江戸時代っぽい衣装とかちょんまげとか着物とか、そういうものに目を奪われているうちに、シュールすぎる世界にあっさり引きずり込まれてしまった、という感じだ。
 目くらましに負けた感じというか。
 意外すぎて面白かった。

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コメント

 みずえ様、コメントありがとうございます。

 みずえさんもご覧になったのですね!
 おっしゃるとおり、プロジェクションマッピングがなかったですね。ということは役者紹介もなかった??? だから坂井真紀さんに気がつけなかったに違いない!
 と思うことにしました(笑)。

 ストーリーというか、目の前でしゃべっている役者さん達にツッコミを入れたかったですよね!
 あと、もし目の前にいらしたらケラさんにも!
 でも、ここは「そういうもの」として心広く流しかつ齧りつく、が正解かと思いました。

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2024.07.09 22:49

姫林檎様

私も観ました!
ケラさんにしては、プロジェクションマッピングがありませんでしたね。そこは意外でした。
でも台詞のおかしみとか、不条理な感じとかは、彼らしさ全開だった気がします。
私はとにかく、犬山イヌコさんの台詞の言い回しや間が大好きです。

これはパラレルワールドなんでしょうか……?
ストーリーに突っ込みたいところはいっぱいありましたが、気にしちゃダメなんでしょうね。
私も坂井真紀さんはわからなかったです!

投稿: みずえ | 2024.07.08 13:30

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