「オーランド」を見る
PARCO PRODUCE 2024「オーランド」
原作 ヴァージニア・ウルフ
翻案 岩切正一郎
演出 栗山民也
出演 宮沢りえ/ウエンツ瑛士/河内大和/谷田歩/山崎一
観劇日 2024年7月20日(土曜日)午後1時開演
劇場 パルコ劇場
上演時間 2時間30分(20分間の休憩あり)
料金 11000円
ロビーではパンフレットやTシャツが販売されていた。
また、パルコ劇場のカフェでは、恒例の「演目をイメージしたオリジナル」のカクテルとモクテルも提供されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
ヴァージニア・ウルフの名前は聞いたことがあっても、名前しか聞いたことがない、という感じで見に行った。
どこかのホームページで「オーランド」はヴァージニア・ウルフの作品の中では分かりやすい、的なことを書いてあったのを読んだ気がするけれど、見ているときの感想は「全然分かりやすくなんかない」だった。
宮沢りえ演じるオーランドは、最初に登場したときは、青年ではなく少年だったと思う。
死語かも知れないけれど、「ちょっとスカした」という感じの少年で、生硬とも言うべき言葉使いが違和感ありまくりだ。多分、この違和感はわざと感じさせるようにしていた違和感だと思う。
オーランド少年はエリザベス1世の小姓として召し出され、気に入られて、これまたこういう使い方は死語のような気がするけれど、「女王のペット」な感じで可愛がられる。
このときのエリザベス女王を演じている河内大和が何とも気持ち悪く、そしてもの凄くエリザベス1世っぽかった。
エリザベス1世のことなんてほぼほぼ知らないけれど、歴史の教科書に載っている肖像画そのものという雰囲気になっていたのが怖い。
あのエリザベス1世に迫られたらほとんど蛇に睨まれた蛙だよ、と思う。
実際、オーランドはかわいそうなくらいに「蛙」だった。
その後、オーランドは外交官となってトルコに行き、そこで何があったのか思い出せないけれど、かつ、時の流れが今ひとつも二つも分からない中、突然「女性」になってしまう。
この「女性になる」というのが唐突すぎてよく分からない。
オーランドが女性不信になる要素はかなりあったと思うけれど、自分の意思とは全く関係なく突然男から女になってしまうきっかけがあるようには見えなかった。
そもそも、ヴァージニア・ウルフは、オーランドを300年以上も生きながらえさせ、そして人生の途中で男性から女性に変えてしまっているけれど、彼女に取ってより重要な要素はどっちだったのだろうと思う。
「300年以上も生きたオーランドの話」と「男性から女性になったオーランドの話」と、どちらかの要素に絞らずに同時にオーランドに負わせた理由がどこかにあるんだろうと思う。
この「オーランド」という舞台は、宮沢りえは一貫してオーランドを演じ、ウエンツ瑛士、河内大和、谷田歩、山崎一は、いくつもの役を演じる。
男性陣はメインになる役柄をそれぞれが持ちつつ、名前を持たない役もいくつもいくつも演じる。名前を呼ばれることがないからもしかして同じ人物だったのかも知れないけれど、何しろオーランド以外の人物には時は無情に流れているのだから、やはり違う人物の役を演じていたのだと思う。
そういえば、山崎一演じるニック(という名前だった、ような気がする)だけは、オーランドと同じ時を生きているようだった。そういう存在がいて、双方にとって幸いだったのかどうかは微妙だ。
「オーランド」という舞台は、だからという訳ではないと思うけれど、没入して見るというタイプの舞台ではなかったと思う。
役者さん5人で上演している中、何となく6人目の登場人物として作者のヴァージニア・ウルフがいて、舞台上には登場しないけれども、常に彼女の視点というか、神のように舞台上で展開されている世界やオーランドの人生を眺めたりいじったりしている様子を感じていたように思う。
オーランドは、300年かけて綴ってきた詩が出版されることになったのを待っていたかのように世を去る。
去ったのだと思う。
最後に色々と「いいこと」を語っていたと思うのだけれど、すでにして思い出せないのが情けない。絶対にいいことを言っていたし、人生の指針的なことを語っていたと思うのに、残念至極である。
そして、その台詞達にも、「オーランド」ではなく「ヴァージニア・ウルフ」という人を感じるのが、この舞台・戯曲・作品における特記事項だと思う。
不思議な作品だった。
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