« 1520000アクセス達成! | トップページ | 「こんばんは、父さん」のチケットを予約する »

2024.09.16

「夫婦パラダイス~街の灯はそこに~」を見る

シス・カンパニー公演 日本文学シアターVol.7 【織田作之助】「夫婦パラダイス~街の灯はそこに~」
作 北村 想
演出 寺十 吾
出演 尾上松也/瀧内公美/鈴木浩介
    福地桃子/高田聖子/段田安則
観劇日 2024年9月15日(日曜日)午後2時開演
劇場 紀伊國屋ホール
上演時間 1時間40分
料金 8000円

 ロビーでは、パンフレットと戯曲本が販売されていた。
 ネタバレありの感想は以下に。

 シス・カンパニーの公式Webサイト内、「夫婦パラダイス~街の灯はそこに~」のページはこちら。

 最前列だったので、目の前に橋の欄干がセットされ、そこに瀧内公美演じる蝶子と尾上松也演じる柳吉が並んだときには、その余りの近さに思わず仰け反ってしまった。
 本当に近い。
 そして、二人とも肌が綺麗だ。
 我ながら何を見ているんだと思う。

 結局、この舞台の時代がいつなのか、最後まで分からなかった。
 いつだったんだろう。
 IRとセットに書いてあって国公認のカジノがあることになっていたし、「AIが」なんていうセリフもあったし、登場人物は携帯電話を使っている。
 この辺りは現代風というか、現在進行形という感じだ。

 しかし、スナックだという店内は昭和の食堂風だし、扇風機はいかにも「昭和」の雰囲気を醸し出し、登場人物たちが着ている服も少なくとも令和っぽくない。
 高田章子演じる蝶子の姉信子の夫である、鈴木浩介演じる藤吉は、何故かカッパになっている。
 カッパには遠野物語が似合っていて、IRやAIとは共存できない感じがする。
 そんな感じで、最初の頃にあった説明を聞き逃したのかと思いつつ、見ている間ずっと「今はいつ?」と思っていた。

 腹違いの姉妹で、妹は駆け落ちまがいのことをしてきて姉を頼り、姉は数年前に「タバコを買いに行ってくる」と言って出て行ったきり戻ってこない夫を待っている、というお話である。と思う。
 そこに、段田安則演じる建設会社っぽい会社の社長が何故か蘆屋道満を名乗ったり、福地桃子演じる近所の蕎麦屋の出前持ち静子が藤吉を殺したことになっていたり、対岸にはカッパを祀った神社があったり、神棚にお供えした胡瓜を狙う手があったり、何だかもうしっちゃかめっちゃかな感じだ。
 時も場所も順不同で切り替わって行く。
 ついでに時空も超えている。

 多分、柳吉は「浄瑠璃パンク」をやるのだと息巻いていて、謡ったり見得を切ったり、尾上松也が歌舞伎役者の面目躍如という感じで大活躍する。
 蘆屋道満の残した(だったか)書物を読み解いて、カッパになっていた藤吉を人間に戻すのも柳吉である。
 「夫婦善哉」がモチーフだとあったけれど、「夫婦善哉」にカッパは出てこないんじゃないかしらと観劇後に検索したら、夫婦善哉の夫婦は柳吉と蝶子のことだったらしい。いや、この芝居の肝はカッパだったよ! と思ったりした。

 と思ったものの、ラストシーンではまた橋の欄干が登場した。
 幕開けは蝶子が柳吉を待っていて、ラストでは柳吉が蝶子を待っている。
 その柳吉は「ネタ帳」に何やら書き込んでおり、戻って来た蝶子に「おまえ、この辺りに姉がいたりしないか」と聞く。蝶子の答えはもちろん「否」である。
 カッパや陰陽師や蝶子の腹違いの姉や出前持ちの少女の「情状酌量〜」という叫びは、すべて柳吉の頭の中で展開されていた浄瑠璃の筋書きだった、といういわば夢落ちである。

 だから荒唐無稽だったのか! と心の中で膝を打つ。
 訳分からないけどみんな楽しそうだと思って見ていたのは正しかったのだわ、と思った。

|

« 1520000アクセス達成! | トップページ | 「こんばんは、父さん」のチケットを予約する »

*芝居」カテゴリの記事

*感想」カテゴリの記事

コメント

 みずえ様、コメントありがとうございます。
 お返事が遅くなりましてすみません。
 みずえさんも最前列でご覧になったのですね! 見上げる感じがなかなか新鮮でしたよね。
 河童も出てくるし、陰陽師も出てくるし、でもAIも使っていそうだし、携帯電話は普及しているみたいだし、よく分からない空間でしたよね。
 変なの(笑)。
 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2024.09.22 08:16

姫林檎様

私も観ました。
やはり最前列で。サイドゾーンでしたけど。
瀧内さんはお綺麗でしたね。
松也さんは、いかにも歌舞伎の人という感じ。
登場人物みんな怪しかったですねー。
途中で高田さんがガラケーを出したところから、「ん?」と思っていたのですが、AIだのNISAだの、何でもあり。
ファンタジックな世界でしたが、夢落ちでしかも二段落ちとはビックリでした。

投稿: みずえ | 2024.09.18 09:25

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 1520000アクセス達成! | トップページ | 「こんばんは、父さん」のチケットを予約する »