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「片付けたい女たち」
作 永井愛
演出 保坂萌
出演 松永玲子/佐藤真弓/有森也実
観劇日 2024年10月19日(土曜日)午後1時開演
劇場 新宿シアタートップス
上演時間 1時間50分
料金 6800円
再開後のシアタートップスに行ったのは初めてである。
壁のアルファベットの表示が懐かしかった。
ネタバレありの感想は以下に。
「片付けたい女たち」は、永井愛演出でグループる・ばる(岡本麗・松金よね子・田岡美也子)が上演した際に見ている。
と思っていたら、ここに「チケットを取った」ことは書いてある一方で、感想を書いていない。でもやっぱり見た記憶があるので、感想を書き忘れたのだと思う。
とはいえ、バツミを演じていたのが田岡美也子だったこと以外は覚えていなくて、ツンコとおチョビの配役はどちらだったかなと思いながら見ていた。
有森也実演じるバツミは初美さん、松永玲子演じるツンコは恒子さんとして、佐藤真弓演じるおチョビの名前は何だろう。
舞台上で彼女たちは本名を呼んだり呼ばれたりすることは一度もない。高校時代のバスケ部の同期で30年以上の付き合いとなれば、あだ名で呼ぶのが普通なのかも知れない。そういえば、私も高校時代の同級生をあだ名で呼んでいる。
しかし、私よりも彼女たちの方がずっと「同期の絆」は強くて、途中、同級生が何人亡くなっているかという話をしていた。50代で十数人亡くなっているという話だった。母数が分からないけれど、「知っている」ことが凄いと思う。
バツミとおチョビは、電話も通じなくなったツンコを心配して彼女が一人暮らしをしているマンションにやってくる。
ここで驚いてもらうために、無理矢理シアタートップスに幕を設置したのだなと思う。開場時からこの散らかりまくりの部屋が見えていたら興ざめである。
ここはインパクト勝負だ。
という訳で、幕が開くとマンションの一室、リビングの入口に女二人が立ち尽くしている。
ツンコが別れたばかりの彼氏から預かった合鍵で部屋に入ってみれば、いわゆる「汚部屋」状態で、呼べどもツンコは姿を現さない。「お風呂場をトイレを確認」などと言い合いが始まる。
どう見ても事件性はなさそうで、しかし二人が驚愕しているということは、ツンコの常態という訳ではなさそうである。
「部屋の乱れは心の乱れ」という感じで、奥の寝室に隠れていたツンコが現れて言うには、「片付けようとしてこうなった」らしい。
3人の中で一番安定しかつ常識的なのはおチョビのようである。
彼女が「とりあえず動線を確保できるくらいは片付けよう」「片付け終わったら新年会に行こう」と言い出し、抵抗するツンコはとりあえず置いておいて二人は部屋の片付けを始める。
燃えるゴミとプラスチックごみ、書類、ペットボトルに缶、牛乳パックは何故か開いて綺麗に洗ってあるのが可笑しい。そういうところに性格って出るものだ。
そうやって片付けをしながらも、女3人が集まればおしゃべりが始まるに決まっている。
時に辛辣に、時にうっかり地雷を踏み、かなり脱線し、時に笑い合い慰め合いながら、3人の片付けとおしゃべりは続く。
50代という年齢から、何となく「集大成」「人生の振り返り」的な話題も増えてきつつ、いやまだ早いよねという風にも思う。
バツミは美を追究してかなり年上かつ金持ちの夫がいるようだし、ツンコはいわゆるキャリアウーマン、おチョビは食堂の女将として嫁を鍛え泡よくば息子を跡取りにしようと奮闘している。
上手い感じに、誰かに感情移入できるように3人がばらけているところが流石である。
何となく片付けが進行し、決裂寸前にまで行きつつも、そこは長年の付き合いに女友達である。
そこそこ心情と現状を吐露し、そこそこ「隣の芝生は青い」を体現し、そこそこ部屋の片付けも進み、「新年会はまた今度」と二人は帰って行く。
そして、一人で片付けを再開したツンコの姿が暗くなる照明でフェイドアウトし、幕である。
とにかく痛かった。痛すぎる。
3人の中でおチョビの安定感は抜群で、いや、彼女のようになりたかったよ、と思う。
新しい女優陣での「片付けたい女たち」は、(多分見たはずの)る。ばるのお三方とは別の「リアル」があったと思う。演じる女優さんにより、演じられている時代により、多分「リアル」は少しずつ変わって行く筈だ。
色々な女優3人での「片付けたい女たち」を見てみたい。その際には、ぜひぜひ「リアル50代」の女優さんに演じてもらえるといいなぁと思う。
面白かった。
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