「モネ 睡蓮のとき」に行く
2024年10月、国立西洋美術館で2024年10月5日から2025年2月11日まで開催されている「モネ 睡蓮のとき」に行って来た。
時間指定制ではなかったものの、夜間開館日の18時半くらいに行ったところ、並ばずに入場することができた。実は外から見たときに庭に行列ができていて「まさか!」と思ったけれど、その待ち行列は企画展限定のミュージアムショップへ入店するためのものだった。外から見ただけで引き返さずに良かったと思う。
今年は美術展にあまり足を運んでおらず、3月以来、半年振りである。
もう少し頻繁に足を運びたいと思う。
昨年の同じくらいの時期に上野の森美術館で開催されていた「モネ 連作の情景」展は「100% モネ」がキャッチフレーズになっていたと思う。
今回の「モネ 睡蓮のとき」も、モネの作品のみ展示されている。
流行なのか。モネ人気が常にも増して高まっているのか。あるいは画家ひとりをクローズアップした美術展が常態化してきているのか。あまり美術展に行かない私にはよく分からなかった。
でも嬉しい。
今回もモネの晩年、つまりは「連作」にスポットが当てられていたように思う。
スポットを当てつつ、今回の美術展では、モネの描く絵の変遷を追うように構成されていた。
また、同じ主題の絵を何枚かずつ集めていたのが楽しかった。
「1 セーヌ川から睡蓮の池へ」では、章のタイトルにもしてあるセーヌ川や、ロンドンのチャーリング・クロス橋など、モネが旅していた時分の絵が多い。ジヴェルニーにたどり着く前の絵達である。
チャーリング・クロス橋の何枚かの絵の中に、単色で比較的鮮明に描かれた絵があり、何だか格好良かった。
最終的には煙だけでその存在が描かれる機関車の姿が比較的鮮明に描かれている。
この章では、連作ではない(と言っていいと思う)の睡蓮も展示されていた。
ジヴェルニーの庭で睡蓮が描かれ始めた初期には、睡蓮の絵にも画面の上部の端とはいえ池の縁が描かれ、睡蓮の池は風景っぽく描かれている。その池が、次第に画面の全てを占めるようになり、周りの景色は水面に映り込むだけになり、平面的装飾的になって行く。
睡蓮の池に夕日が映り込んだ(のだと思う)1枚があり、近くで見ているときには分からなかったけれど、かなり引いて見るとその太陽の光の赤さがより引き立って見えて良かった。
「2 水と花々の装飾」では、睡蓮以外の花の絵がメインになっている。
中には「元々のアイデアでは他の花も描かれていたけれど、最終的に睡蓮だけになった絵」も含まれていて、何というか、モネの意識が「睡蓮を描くなら睡蓮に集中!」みたいになって行く過程が面白いと思う。
壁一面を睡蓮の絵で埋め尽くした連作も、当初の案では上部に藤の花の絵をぐるっと配置する予定だったという。
その藤の花に紫っぽさがなくて、でも藤の花で、良かった。
「3 大装飾画への道」のお部屋だけは、写真撮影可になっていて、シャッター音が鳴り響いていた。
モネは生前に大装飾画関連の絵を売ることはせずにほとんど手元に置いていたそうですが、唯一、松方幸次郎氏に売ったそうです。その絵が(多分)行方不明になり、半分以上が滑落した状態で見つかり、出典されていました。
何とも痛々しい状態だった、
睡蓮の絵の中でも、大きめ(2m四方くらい?)の絵が3枚、曲線を描いた壁に並べて掛けられている面が爽快だった。
「睡蓮に囲まれたような」「その場に立ったような」という雰囲気が少しだけ味わえる。
オランジュリー美術館にぜひ行ってみたいと思ってしまう。
絵の雰囲気は3枚でかなり違っていても、睡蓮が描かれた大きな絵が真っ白い壁に同じ高さ、同じ重さで飾られているというのは、何とも贅沢な光景だったと思う。
「4 交響する色彩」という章では、モネの庭の太鼓橋のような橋や、しだれ柳、ばらの小道やばらの庭から見た家が数枚ずつ展示されていた。
モネは厳密に同じ場所、同じ角度から、日を変え時間を変え、つまりは光の状態を変えながら何枚も絵を描いていたそうだ。
中には、白内障を患って色彩が混濁していたときに描いた絵も含まれている。
何と言うか、この章の絵の印象を一言で言うと「赤」である」
その赤さが凄かった。
大装飾画の習作も含まれていたためか、今回、出典された絵は余白が目立っていたような気がする。
本当に少ない色の絵の具、少ない筆の運びで描かれている絵はもちろん、わざとなのかどうなのか、絵の橋に白い余白がある絵が結構目立っていたような気がする。
どうしてだろう。不思議だ。
混雑していたけれど、それでも絵と自分との間に誰もおらず、絵と人が重なることなく見ることができる瞬間はどの絵にも必ずあったと思う。
楽しかった。
行って良かった。
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