「朧の森に棲む鬼」を見る
歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」
作 中島かずき
演出 いのうえひでのり
出演 松本幸四郎/尾上松也/中村時蔵/坂東新悟
尾上右近/市川染五郎/澤村宗之助/大谷廣太郎
市川猿弥/片岡亀蔵/坂東彌十郎
観劇日 2024年12月14日(土曜日)午前11時30分開演
劇場 新橋演舞場
料金 16500円
上演時間 3時間55分(30分間の休憩あり)
新橋演舞場に行ったのはいつ以来だろう。
「朧の森に棲む鬼」の初演は見ているけれど、いつ見たのかすら忘れていたり、あらすじも綺麗さっぱり忘れていた。
こんなマクベスみたいな筋書きだったっけ? と思っていた。
ネタバレありの感想は以下に。
新橋演舞場の入口で「朧の森に棲む鬼」のポスターを見つつ、「初演のときも歌舞伎だったっけ?」と思っていた。正確に言うと、「こんなに歌舞伎役者さんばっかりの座組だったっけ?」と思っていた。
つまり、それほど記憶がない。
聞いてみれば、初演のときは「新感線に、市川染五郎(当時)がゲストとして登場した」という芝居だったらしい。
芝居が休憩に入り、今度は「今回の「朧の森に棲む鬼」にはJACの役者さんは出演されているのだろうか? と思った。いらっしゃるような、いらっしゃらないような、要するに殺陣のシーンを見ていても区別が付かない。我ながら酷い。
こちらも聞いてみれば、JACからは川原正嗣が参加しているという話だった。
やっぱり新感線である。
覚えていないことは色々とあって、というよりも、覚えていたことがごく僅かだった。
主人公がライ(嘘)という名前であること、初演も市川染五郎(当時)が演じていたこと、くらいだ。我ながら酷い。
さらに言うと、市川染五郎(現)がまだ本当に子供の頃に舞台を拝見したことがあるらしいのだけれど全く覚えておらず、「大きくなったよね〜」と言われて、「私、見たことありましたっけ?」と返して呆れられてしまった。
本当に様々申し訳ない。
そんな訳で、飄々としたというか軽い感じで尾上右近演じるキンタとともに登場した松本幸四郎(現)演じるライが、朧の森に入り込み、3人の「鬼」に会い、「この顔の人間に会うたびに運命が変わる」と予言され、「おまえがおまえを殺すときまで、この国の玉座を与える」と誘惑され、「自分が自殺なんかする筈がない」とその提案を承諾する。
その始まりすら記憶にない。
さらに言うと、視力は悪くない筈なのにちゃんと見られていない私は、3人の鬼のうち一人を尾上松也が演じていると思い込んでいた。
実際は違った、らしい。
多分、この芝居に登場する女たちの顔をしていたと思うのだけれど、白塗りされてしまえば同じように見えてしまう。そうなると、この芝居の結構重要な「仕込み」を分からないまま見てしまうことになり、もう本当に申し訳ない。
そんな感じで、「きちんと」楽しめていなかったかも知れないという不安はあるものの、それでもこの舞台は面白かったし、素晴らしかったと思う。
松本幸四郎は、ライがどんどんと悪行を重ね、悪を悪とも思わず躊躇いなく悪を重ねて行くにつれて、どんどん輝きを増していったように思う。
軽みのある適当そうなあんちゃんよりも、断然「色悪」が似合うし格好いい。
それはそれとして、登場したときのライの若々しさは特筆ものだったと思うし、宙乗りもまるで透明な階段を上っているかのようだった。
尾上右近のお莫迦っぽいのに本質をきちんとみて捉えているキンタも良かったし、坂東彌十郎のずーっと無能かつ気弱かつ適当そうでいて、最後の最後に妻に「自分が毒を飲んであげるから、あの男(ライ)は止めておけ」と言って死ぬシーンの格好良さと言ったらなかった。
いや、格好いい。格好良すぎて痺れる。
歌舞伎として上演されることで、三味線と謡の方がいらっしゃったり、鳴り物の方がいらっしゃったりしたのも、しっくり合っていた。
ロックと見事に融合させてしまうのだから、いのうえひでのりの力業とテクニック両方の見せどころという感じがする。
そしてまた、そもそも「いのうえ歌舞伎」として上演していた舞台だし、歌舞伎との相性が良すぎである。
尾上松也と松本幸四郎のW主演なのは、出ずっぱりのしゃべりっぱなし、戦い続ける「ライ」を演じる役者さんの負担が大きいということも理由のひとつだと思う。
初演のときは市川染五郎(当時)がずっとライを演じ続けていた訳だけれど、それから何年経っているのだという話だ。
ライと、市川染五郎(現)の戦いのシーンがある分、ここを親子で演じているところが見られて、ライを松本幸四郎が演じる回を見られて得をしたなと思う。
とにかく、楽しかった。
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