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「明日を落としても」
作 ピンク地底人3号
演出 栗山民也
出演 佐藤隆太/牧島輝/川島海荷/酒向芳
尾上寛之/春海四方/田畑智子/富田靖子
観劇日 2025年10月25日(土曜日)午後0時30分開演
劇場 EX THEATER ROPPONGI
上演時間 2時間40分(15分の休憩あり)
料金 10000円
ロビーではパンフレットが販売されていたと思う。
ネタバレありの簡単な感想は以下に。
舞台は、神戸に近い(有馬温泉という言葉も出ていたかも知れない)旅館である。何故かサンドバックが揺れている。
佐藤隆太演じる雄介と、牧島輝演じるひかるの二人で語るシーンで幕開けだ。
ここでいきなり、ひかるがすでに死んでいて、毎年、阪神大震災が起きた日に旅館の雄介の元にやってきていることが明かされる。早い。
そして、舞台は現代と、阪神大震災の年と、その二つを行き来しながら進んで行く。
仕掛けは割とよくある定型という感じで、見ている間、その定型を研究し尽くして最大限に活用し、かつ緻密に練り上げた台本、という感じがずっとしていた。
作家のピンク地底人3号を全く知らなくて、「誰だろう」と気になっていたから「台本」とか「仕掛け」とかが気になったのかも知れない。
それにしても作り込まれたよくできた台本だったと思う。
雄介が旅館の主人であることをなかなか明かさないのは、若い頃の雄介が本当にダメダメで、そのダメダメなまま旅館に居候し続けているのか、と思わせるためだったんじゃないかと思う。
更生したことが分かりきっていたら、25歳の頃のぐうたらな雄介が全く活きない。
逆に、弟を更生させようと冒頭登場する「ひかる」という少年の教育係を命じた、当時旅館の専務だった健人が「今」どうしているかも割となかなか知らされない。
川島海荷演じる健人の娘である遥が登場して、父の入院先に行って来た話をするまで、現代パートに健人は登場しない。
というか、健人は生きているうちは現代パートには登場してこない。
さらに、阪神大震災で妻を亡くした健人が酒浸りになり、否応なく雄介が旅館と遙かの育ての親になったこともなかなか明かされない。
全体の構成としては定型を踏んだ割と見かける形を取っていると思う。田畑智子演じる健人の妻京子が元ツッパリだったり、富田靖子演じる京子の友人の真美がシングルマザーかつ息子に依存しまくっていたり、一見してキレやすい最近の若者っぽい真美の息子のひかるが実は母親思いだったり、本歌が何かはともかく上手く本歌取りしている感じがある。
そこにかつこれでもか! というくらいに伏線を張りせっせと回収する。
せっかく昔と今を行ったり来たりして話を進めて行くんだし、幽霊が登場するし、その設定を活用せずに何とする、みたいな、それを楽しんでいるような感じが伝わってくる台本である。
何だろう、方程式をきちんと守っている感もある。
上手く言えない。
阪神大震災で旅館が炊き出しをした際に手伝いに来たという男性の登場の意味が、けっこう大切だろうに「何故登場させた?」と思ってしまった自分が情けないかぎりだけれど、健人が亡くなる日には第三者が必要だったのかなという気もする。それは芝居的にというよりも、登場人物たちへの作者の思いやりのようにも思う。
そういえば、「明日を落としても」というタイトルはどこに落ちていたのだろう。
登場人物勢揃いだった中で、真美だけが現れなかったのはどうしてだろう。
作り込まれている一方で色々と謎を残している、不思議な舞台だった。
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