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2025.12.07

「泣き虫なまいき石川啄木」を見る

こまつ座「泣き虫なまいき石川啄木」
作 井上ひさし
演出 鵜山仁
出演 西川大貴/北川理恵/山西惇
    那須佐代子/深沢樹/眞島秀和
観劇日 2025年12月6日(土曜日)午後1時開演
劇場 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
上演時間 2時間55分(15分間の休憩あり)
料金 9200円

 ロビーでは、パンフレット等が販売されていた。
 また、リピーターチケットや、国語事件殺人辞典のチケットも販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 こまつ座の公式Webサイトはこちら。

 幕開けは、海辺のシーンだ。
 家の外壁に海の景色が描かれていて、一部だけ開いた雨戸から家の中を覗くことができ、縁側もある。
 外壁の海の景色はイメージなんだろうと思う。
 そこに、宣教師(と思われる)とシスターが現れ、着物を着た若い女性がやってくる。
 彼女は亡くなった石川啄木の妻で、女の子を連れ、お腹に赤ちゃんがいる。宣教師たちの援助を得てこの地にやってきて、石川啄木の作品を整理しようとしているようだ。

 夫の作品の整理のため、夫の日記を読み始める。
 そこで、舞台は石川啄木が亡くなる3年前、東京で暮らしていた家に変わる。
 そこは2階で、窓の下には店が見え、喧騒が伝わってくる。
 石川啄木夫婦はかなり困窮しているようで、友人の金田一京助に無心し金田一京助も自ら自分の持ち物を質入れして得た金を渡している。

 その家には啄木の母も一緒に暮らしていて、何かと嫁いびりをしている。
 啄木の妹のミツが折に触れやってきて嫁姑の間に入ろうとするけれど、全く非力だ。
 そして妹以上に役立たずなのが啄木で、嫁の見方も母の見方もしようとはしない。ある意味で賢い処世なのかもしれないけれど、全く以て腹立たしい限りである。

 実は、舞台上の石川啄木を見て最初に思ったのが「無駄に美形だな」ということだった。申し訳ない。
 観劇後にネットで検索した石川啄木は割と童顔の可愛い顔をしていて、史実に近い感じだったらしいと思ったけれど、妻の節子を演じた北川理恵も美人だし、本当に申し訳ないけど、無駄に美形の夫婦だなとも思った。
 何でそんなことを思ったのかは自分でもよく分からないけれど、「美形ではなく」て、もの凄く困窮して荒んでいると思い込んでいたのかもしれない。

 美形に惑わされたけれど、この舞台の石川啄木はよくよく考えるととんでもないというか、嫌な奴というか、調子のいい奴というか、そんなしょっちゅう親しい、それも自分に親切にしてくれる人と断絶ばかりしてどうするんだよ、という感じだ。
 嫁いびりをする母親にもの申すでもなく、そのうち転がり込んできて酒ばかり飲んでいる父親を叩き出すでもなく、1時出勤らしい会社に「2時までに行けばいいんだ」と嘯き、「病気だから出社しなくてもクビにはならない」と胸を張るけど給料は入らないのでは? とツッコミたくなる。

 この舞台の石川啄木は、泣き虫でのナマイキでもないけど、ずっと机にかじりついて稼がない奴、である。
 凄く嫌な奴だと思うのに、舞台上だと嫌な奴っぽくないところに違和感がある。何故だ。見ているときの答えは「無駄に美形だから」だったけれど、正解ではないような気もする。

 金田一京助だって、石川啄木に親切にしているからこの舞台ではいい人っぽく見えているものの、石川啄木を応援する立場を離れてその辺の人とか奥さんとかから見れば、ダメ人間の石川啄木に際限なく貢ぎまくって己の生活も立ちゆかなくさせる困った人間である。
 自分が石川啄木だったら友達になりたいけど、石川啄木以外の人間としては友達としてどうかと思う。
 節子さんにしろ金田一妻にしろ、自分をないがしろにせず親切にしてくれる人にちょっと好意を持ったって、アンタ達に責める権利がある? と言ってやりたい。

 生活が立ちゆかなくなって、啄木父は口減らしのつもりで出奔し、啄木・啄木母・啄木妻の3人はそれぞれ咳き込んで具合が悪く、何故か別々の病院にかかり、それぞれがぐるっと回す感じで家族の病状を聞きに行き、全員が「もう危ない」という診断を聞いて帰って来る。
 そうしたら、啄木はあんまり変わらない感じだけれど、嫁と姑は何だかやけに互いに親切になる。何というか気持ち悪い。何故そうなる? と聞きたい。

 回想されるのはここまでで、物語はまたどこかの海辺の家に戻る。
 節子は夫の日記を読み直し、著作の整理も完了したようだ。
 それを聞いて「では遺言通り燃やしましょう」と言われ、節子は急に「燃やしてはダメだ」と言って日記を抱え込む。この日記の中には啄木も啄木母も啄木父もいる、燃やしたら3人ともいなくなってしまう、だからダメだ、と主張する。
 そして、実際に燃やされることはなかったらしい。

 井上ひさしの評伝劇は腑に落ちて終わることが多いけれど、今回は相性が悪かったらしく、もやもやしたものが残った。
 とか何とか言いつつ、芝居はもの凄く集中して見ていた気がする。
 そういう舞台だった。

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